中国:五輪金メダリスト 世界の指導者に示した模範

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2022年3月 9日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:中国
トピック:

北京五輪スピードスケート1万メートルの金メダリスト、スウェーデンのニルス・ファンデルプールさんは、中国の人権侵害への抗議として、不当に投獄されている人物に金メダルを譲り、世界の首脳に模範を示した。

ファンデルプールさんは、根拠のないスパイ罪で収監されている香港の書店経営者、桂民海さんの娘、アンジェラ・ギーさんに金メダルを託した。

オリンピックの金メダリストが、人権の金メダリストになった。中国の表現の自由への弾圧に立ち向かう勇気ある決断だ。各国政府は、桂さんが直面する深刻な問題に対し行動を起こすべきだ。

中国は、世界での中国のイメージをよくするために五輪を利用したが、国内では、数百万人が国家による人権侵害に苦しんでいる。ウイグルの人たちが施設に強制収容され、声をあげる性的虐待の被害者が当局から睨まれ、桂さんのように、政府が好まない見解を主張しただけで、収監されている。

桂さんは政府に批判的な書籍を出版し、2015年末に4人の出版者や書店主とともに拘束され、行方がわからなくなった。その後、非公開で不公正な裁判で、実刑10年の判決を言い渡された。

桂民海さんだけではない。長年、いかなる批判も封じようとする政府は、多数の作家、弁護士、活動家、学者らを取り締まってきた。

ファンデルプールさんは、オリンピック閉会式の5日後、3月3日に始まるパラリンピックを前に、獲得した2つの金メダルの一つを桂さんに提供した。

「私はオリンピック選手全員の声を代表しているわけではない。私や仲間は、スポーツという世界で卓越した結果を残すことを目指し、これまでの人生をささげてきた。だが、中国政府は私たちの夢を、政権を正当化するために利用するという選択をした」と、ファンデルプールさんはアムネスティに語った。

「中国の人権問題が改善し、桂民海さんが釈放されることを願っている。難しいことだが、もっともな要求だ」

桂民海さんは1989年の天安門事件後、中国を離れ北欧に渡り、後にスウェーデン国籍を取得している。娘のアンジェラ・ギーさんはスウェーデンで生まれた。

アンジェラさんは、父親の釈放を求める活動に懸命に取り組んでいたとき、彼女を黙らせたい中国当局から脅しを受けたという。

「もちろん、そもそもこんなことをしなくてすむ状況だったらな、と思う。だけど、このメダルは、父や北京(政府)による人権侵害の犠牲になった数多くの政治囚との連帯を示している。それが大切だと思う」とアムネスティに語った。

なぜ桂民海さんは収監されているのか

桂さんが経営する銅鑼湾書店は、中国の政治家とそのゴシップを描いた本で知られていた。それらの本は中国本土では発禁扱いだったため、香港を訪れる本土からの旅行者に人気があった。

桂さんは2015年にタイで行方不明になり、翌年、中国国営メディアの番組に顔を出し、何年か前に引き起こしたひき逃げ事件のことを告白した。強要されて告白であることは明らかだった。

2017年に釈放されたが、警察の厳重な監視下に置かれ、移動の自由が奪われた2018年、スウェーデン外交官とともに、治療目的で上海から北京へ移動中に拘束された。

2020年2月、「外国機関に違法に情報を提供した」というでっち上げの罪で実刑10年を言い渡された。

当局による検閲と処罰の体制を敷く中国では、五輪期間中、人権に関する議論が封じ込まれたかもしれないが、今回のファンデルプールさんの強力な意思表示は、政府批判の弾圧は決して許されない、という重要なメッセージになった。

ファンデルプールさんにならい、各国政府は、桂さんの不当な起訴に留まらず、権利を行使しただけで収監されている多数の人たちの扱いについても、中国政府の責任を問うべきだ。

背景情報

中国では、政府に批判的な作家、学者、ジャーナリストらが、当局から嫌がらせや拘束、投獄などを受けている。その中には、アムネスティが、北京五輪に合わせて実施したキャンペーンで取り上げた、次の5人も入っている。

著名な人権弁護士の高智晟さんは、2009年から2014年まで投獄され、投獄中の拷問などの暴力を受けた経験を書いた回顧録を出版したが、その後、2017年に再び行方不明になった。

元弁護士のジャーナリスト、張展さんは、新型コロナウイルス感染症が始まった武漢に出向き、感染のことを記事にしたが、その後拘束され、騒乱挑発罪で有罪になり、現在も収監されている。

チベットの僧侶、リンチェン・ツルトゥリムさんは、中国の政策を批判して、実刑4年半を宣告された。

ウイグル人学者イルハム・トフティさんは、中国で不平等な扱いを受ける少数民族の問題に対し、建設的な打開策を提言して、終身刑を言い渡された。

フェミニストの活動家、李翘楚さんは、当局から拷問を受けたことを公表して拘束された。

アムネスティ国際ニュース
2022年2月25日

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