米国:ハイチ難民を暴力的に排除 根強い黒人差別

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2022年9月27日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:米国
トピック:難民と移民

米国当局はハイチ難民を恣意的に拘束し、人種に基づく差別的で屈辱的な虐待を加えている。

アムネスティはこの状況を調査し、提言とともに報告書にまとめた。

米国は長年、庇護を求めるハイチ人の拘束や排除、入国を思いとどまらせる措置などを取ってきたが、最近の人権侵害もタイトル42(公衆衛生法の「伝染病の流入を阻止する緊急措置」条項)に基づく大規模な押し戻しも、ハイチ人を排除してきた歴史の延長線上にある。

1年前、テキサス州デル・リオで国境パトロール隊がハイチ難民を暴力的に押し戻し、バイデン政権がこの対応を非難したにもかかわらず、当局はハイチ人の庇護を求める権利を制限し続けてきた。

また当局は、空路で国外追放する際の機中でハイチ人に足枷と手錠をかけて奴隷扱いし、さらなる心身の苦痛を与えている。

アムネスティの調査によれば、米国政府は1970年代からさまざまな政策を適用し、近年ではタイトル42を根拠に庇護を求めるハイチ人の気をくじく対応を取ってきた。

ハイチ人への対応の告発で最前線に立つ団体ハイチ・ブリッジ・アライアンスのニコル・フィリップス法務責任者は、「去年9月、馬に乗ったパトロール隊員が難民を手綱で叩き、その様子を撮った写真が世界に拡散し衝撃が走ったが、この行為は、何十年にわたり行われてきた不当な扱いの一つに過ぎない」と話す。

アムネスティは、今回の提言をきっかけに、ハイチ人をはじめとする黒人系移民が米国でしばしば直面する人種的差別や暴力行為の排除に向けて、米国当局間の対話が始まることを望む。

アムネスティがハイチで聞き取りをした24人全員が、昨年9月から今年1月までの5カ月間にタイトル42のもとで国外退去させられたとみられる。

そのいずれもが、個別の難民審査を受ける機会を与えられなかった。新生児が拘束されたり、親から引き離されたりすることもあった。また、通訳者や法的代理人が付かなかったり、拘束施設の場所や拘束理由を告げられなかったりしたという。なぜ拘束するのかその説明がなければ恣意的拘束にあたる。

また聞き取りをしたハイチ人はいずれも、新型コロナウイルス感染症の検査を受ける機会は一度もなかったという。また多くの人がマスクを提供されず、人との適切な距離を取らせてもらえず、感染拡大防止というタイトル42目的とは裏腹な対応だった。

これまで母国でさまざまな人権侵害を受けてきたハイチ人にとって、米国の拘束施設での虐待はさらなる追いうちでしかない。24人全員が、奴隷や犯罪者であるかのように手錠と足枷をはめられてハイチに送還され、大変な心理的苦痛を受けた。

国際人権法は、民族や国籍に関係なく被拘束者へのいかなる拷問や虐待も禁止しているが、米国の対応は国際人権法の人種や移住資格に基づく拷問にあたると言える。

黒人への人種差別の歴史

当局のハイチ人対応の背景には、アフリカ系の人びとを奴隷にしてきた歴史と今も続く黒人への人種差別がある。

今回の聞き取り調査から、ハイチ人への虐待が日常化し、さまざまな場所と時間に発生してきたことが明らかになった。この事態は、ハイチ人の処罰と排除を目指す移民制度に組み込まれた長期的、制度的な人種差別を浮き彫りにしている。

アムネスティはすべての国に対し、人種差別が植民地主義や奴隷制度で生まれた構造や慣習に深く根ざしていることを認識し、人種差別を生む体制や制度を解体するよう求める。

米国は、人種や国籍に基づく間違った固定観念を助長する制度、法律、政策、慣行の改革に向けた措置を講じなければならない。その改革対象の一つがタイトル42だ。

アムネスティは、米国の移民制度の中で黒人への人種差別が深く根付いていることを示す有力な証拠や証言を検証してきたが、米国は、積極的に人種的偏見や差別に関わる情報を収集しているようにはみえない。

今年2月、連邦議会議員100人がバイデン政権に求めたように、米国は、反黒人政策を転換し、庇護を求める黒人に対する不公正な取り扱いを全面的に見直すべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2022年9月22日

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