イラン:逮捕女性の死への抗議を力で弾圧 国際社会はいますぐ行動を

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2022年10月 4日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イラン
トピック:

イランでは、当局の暴力的対応に抗議する人たちへの暴行で多数の死傷者を出す事態が各地で起きている。国連総会の各国首脳は、イランでまん延する不処罰を捜査し、責任を追及するための独立した機関の設置の呼びかけを支持しなければならない。

早急な対応が必要なことを示す事件が最近あった。

マフサ・アミニさん(22歳)は、公共の場で着用を義務付けられているヒジャブ(頭髪を覆う布)を不適切に着用していたとして「道徳警察」に逮捕され、暴力を受け、数日後の9月16日に死亡した。アミニさんの死亡に端を発した抗議デモが起こり、出動した治安部隊の発砲で、少なくとも8人が死亡し、数百人が負傷する事態になった。

治安部隊は抗議する人たちを解散させるために、散弾銃やその他の金属弾、催涙弾、放水砲、警棒などを使用したが、アムネスティは、こうした不当な対応を示す証言や証拠を集めた。

アミニさんの死亡に対し世界中から共感と怒りの声が寄せられる中、拷問や超法規的処刑などの不当な殺害が許されるイランの不処罰体質に立ち向かう必要があり、国際社会には具体的な対応が求められている。

イランで抗議活動が弾圧を受けている最中、国連では同国のライシ大統領が演説していた。大統領の人道に対する罪への関与には信頼できる証拠があるにもかかわらず、国連は演説の機会を与えた。イランで深刻化する不処罰問題にこれまで国連加盟国が無策だったことが、このような重大な事態を引き起こしているのだ。

アムネスティの調べで、9月19日と20日のデモで男性6人、女性1人、子ども1人が死亡したことがわかっている。州別では、クルディスタン州で4人、ケルマンシャー州で2人、西アゼルバイジャン州で2人だった。8人中少なくとも4人は至近距離から撃たれ、その後死亡した。

片目または両目の視力を失った人が2人いた。子どもを含む数百人が、散弾銃などの発砲を受けて負傷した。

殺傷目的の銃撃

アムネスティは目撃者の証言、抗議デモを撮った画像などを分析したが、その結果、治安部隊は、常にデモ参加者を狙って至近距離から発砲していることが判明した。

9月19日と20日、3つの州の3都市で少なくとも男性3人と女性1人が銃弾を受けて亡くなった。他にも2州の3都市で少年を含む4人が殺害された。

当局によると、9月19日にクルド州で3人、9月20日にケルマンシャー州で2人の死亡が確認された。しかし、否定と隠蔽を得意とする当局は、5人の死亡の責任は「イランの敵」にあるとした。

もっとも、目撃者の証言やビデオ映像から市民の殺傷に使用された武器は、治安部隊が所有するものであることに疑いの余地はなかった。いかなる状況でも禁じられている実弾の使用は、いかなる場合も正当化できない。

また、一部のデモ参加者が投石し警察車両を破損させることがあったが、ビデオ映像からは、ほとんどのデモ参加者は非暴力だったことは明らかだった。

目を背けたくなる傷

入手した証言や情報によると9月16日、クルディスタン州サケズでは、18歳の少年が10メートルほどの距離から散弾を受け、右目の視力を失った。散弾を受けたもう1人の若者は、両目を失明した。

9月19日、大規模な抗議デモはサケズから、クルド人少数民族が多い都市へと広がった。19日だけで子どもを含む数百人が負傷した。

デモに参加した男性は、「『女性、命、自由』『独裁者に死を』などと唱える人たちが、2、30メートルの距離から当局の発砲を受けていた。特に頭を狙われていた」と証言した。目撃証言や画像から、足、胸、腹部をひどく損傷させる銃器が使われることもわかっている。

負傷した人たちのほとんどは、拘束を恐れて病院にはいかなかったため、感染症や合併症が懸念されている。

治安部隊は、子どもを含む数百人のデモ参加者を暴力的に逮捕し、夜間には参加者の自宅の強制捜索に入った。また、目撃者によると、逮捕されたデモ参加者の多くは、頭部、鼻、腕などを骨折し、血まみれだったという。

事態の責任を問われなければ、治安部隊は図に乗って今後もデモ参加者やアミニさんのような被拘束者の殺傷を続けるだろう。

イラン国内では責任を追及する道が閉ざされているだけに、国連人権理事会には、イラン当局に「国際法に違反すればその罪は必ず罰せられる」という強力なメッセージを送る責任がある。

背景情報

複数の目撃証言から、ヒジャブ着用を問題視されて逮捕されたマフサ・アミニさんはテヘランの拘置所への移送中に激しい暴行を受けたことがわかっている。移送されて数時間後昏睡状態に陥って病院に搬送され、3日後に亡くなった。

イラン当局は、アミニさんの死亡について調査を約束する一方で、アミニさんの扱いに違法行為は一切なかったと否定している。また、当局が約束した調査は内務省が手掛けることになっているが、これでは独立性のある調査は望めない。

アムネスティ国際ニュース
2022年9月21日

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