- 2022年12月 8日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イラン
- トピック:表現の自由
国連人権理事会が11月24日、9月16日にイランで始まった抗議デモに対する当局の人権侵害、特に女性と子どもの権利侵害を調べる事実調査団を設置する決議を採択した。待望の事実調査団の設置の決議は、正義を求めるイラン市民の訴えが届いた結果と言える。
イランでは構造的な不処罰がまん延しており、それが国際法違反の犯罪をはじめとする人権侵害を長い間助長してきた。この問題への国際社会の対応が、今回の決議で大きく変わることが期待される。
決議は、イランの悲惨な状況に対する国際的監視の強化につながるだけでなく、今後の訴追に向けた証拠の収集と保存に関する手続きの整備にもつながる。
アムネスティは長年、イラン当局による人権侵害に対する調査と責任追求の体制確立を求めて活動してきた。事実調査団の派遣は遅きに失するとはいえ、今回の決議は、イラン当局に対し、国際法の下での犯罪を犯せば罪を問われることになるという警告になる。
今、各国には、事実調査団の権限の十分な活用と遅滞ない人的、物的資源の調達が求められている。また、イランに対し、調査団に全面的に協力し、活動を制限をしないよう要請することも必要だ。
イラン当局は、今回の国連決議をデモ参加者への武力弾圧の即時停止への要請だと受け取らなければならない。
背景情報
ジュネーブでの決議案審議中、イランは国連の専門家や人権団体の調査結果の受け入れを拒否し続けた。一方で、国内では市民の違法な殺傷を繰り返し、またデモ参加者に死刑を求刑している。
事実調査団の任務は、イランでの人権侵害に関わる証拠の収集、集約、分析と、法的手続きにおける証拠の保全だ。
ヒジャブ(頭髪を覆う布)を不適切に着用していたとして逮捕されたマフサ・アミニさんが9月16日に死亡したことに端を発した抗議デモは、当局の容赦ない弾圧を受けてきた。2017年12月から翌年1月にかけて市民の不満が爆発するデモがあったとき、当局は激しい弾圧で応じたが、今回のデモで当局の目に余る横暴を再び目にすることになった。
アムネスティは、市民デモに対する当局の暴力と殺害、恣意的な逮捕・拘束、強制失踪、拷問その他の虐待、長期の実刑判決など、当局による国際法上の犯罪やその他の深刻な人権侵害を調査し記録してきた。
国際社会はイラン政府に当局の犯罪行為の捜査を何度も求めてきたが、イランはこれらの要請を無視してきた。それどころか、真実・正義・補償を求める被害者や犠牲者遺族を迫害し、犯罪の証拠の隠滅を図ってきた。
アムネスティ国際ニュース
2022年11月24日
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