- 2022年10月13日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イラン
- トピック:
「ヒジャブ」(頭を覆う布)の着用が不適切だとして逮捕された女性の拘束中の死に抗議の声が上がる中、軍上層部が全州の軍司令官に、デモ隊には「容赦ない対応を取れ」と指示していることがわかった。アムネスティが入手した内部文書には、抗議する市民の排除に手段を選ぶなという方針が記されていた。
内部文書を詳細に分析したところ、イラン当局は革命防衛隊、民兵組織バシジ、法執行司令部、機動隊、私服警官などを投入して抗議デモの徹底鎮圧を図っていることが明らかになった。また、治安部隊がデモ参加者を殺傷する意図を持って殺傷力の高い武器や実弾を各地で使っていたこともわかっている。
こうした弾圧により、9月25日時点で少なくとも52人が死亡し、数百人が負傷している。
当局による違法な殺害が罪に問われない事態が続く中、暴力的鎮圧で子どもを含む男女多数が当局の犠牲になった。いずれの犠牲者も治安部隊の脅威になるような行動を取っていなかったことは、アムネティが入手した証言や画像から明らかだった。
国際社会は、イラン当局を非難する声明を出すだけでなく、断固とした協調行動を取る必要がある。さもなければ、声を上げる市民への暴行や拷問、投獄、殺害が、さらに増えることになる。
軍がデモ鎮圧に手段を選ばない方針を出している中、国際機関が独立した立場でイラン当局による暴力を調査し、責任を追及する体制が必要であることが浮き彫りになった。
国による隠蔽工作
入手した文書によると、軍総司令部が全州の司令官に、「問題を起こす連中や反革命市民には、容赦ない対応を取れ」と命じたのは9月21日だった。同日夜、各地で抗議する市民に殺傷力の高い武器が使用され、子どもを含む男女多数が犠牲になった。
アムネスティは、9月19日から9月25日までの1週間に殺害された少なくとも子ども5人、女性5人を含む52人の名前を確認した。実際にはこれらの人数よりはるかに多いとみられ、アムネスティは犠牲者の特定を続けていくつもりだ。
アムネスティが確認した写真や動画から、ほとんどの犠牲者は治安部隊の銃弾に倒れたことがわかる。
イラン当局は、責任を逃れるために犠牲者は「暴力的な人物」だと説明したり、「暴徒に殺された」と主張したりするなど虚偽の説明を繰り返した。また、犠牲者の家族を脅したり、金銭的補償を約束したりして、最愛の身内の死の責任はイランの「敵」のために働く「暴徒」にあるなどと説明する動画を録画するよう、強要している。
デモ参加者への拷問
デモ参加者やデモの見物人らが、治安部隊から暴行や不当な扱いを受けていることもアムネスティの調べでわかっている。また、抗議の意思を示すためにヒジャブを脱いだ女性たちが、治安隊員に胸を掴まれたり、髪の毛を引っ張られたりするなど、ジェンダーに基づく暴力を受けている事態も確認されている。
9月28日、デモ参加者の一人はアムネスティにこう話した。
「デモに参加して殴られている人たちがいた。友人の話では、女性が髪を掴まれて地面を引きずられた。服ははだけていた。2日前には、数人の友人が警官に罵られながら警棒で殴られ、また脚にあざが残るほどの暴力を受けた女友だちが、脚を撃たれそうになったときに別の警官の制止で難を逃れるということがあった」
映像や記事から一部のデモに暴力行為があったことは事実だが、かといって当局による殺傷武器の使用が正当化されるわけではない。
国際人権法・基準は、一部の抗議者が暴力に及んだとしても法執行機関は、抗議する人たちが、治安部隊による不当な妨害や脅迫を受けないようにしなければならないと定めている。
限定的暴力に対する武器の使用は、国際法が定める合法性、必要性、相応性の原則に例外なく従わなければならない。治安当局に銃器の使用が許されるのは、差し迫った身の危険から自身や他人を守る場合で、殺傷力に欠ける武器では身の安全を確保できない場合のみに限定される。
アムネスティ国際ニュース
2022年9月30日
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