- 2022年12月 4日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イラン
- トピック:死刑廃止
イラン当局は、見せかけの裁判で少なくとも21人を死刑にしようとしている。9月以来イラン全土を揺るがしてきた抗議デモの参加者に脅しをかけ、デモへの新たな参加の動きを封じるのが狙いだ。
当局の発表によるとテヘランの革命裁判所は11月13日から16日までに、「神への敵意」と「地上における堕落」の罪で5人に死刑判決を言い渡した。5人は、テヘラン州での抗議活動で、放火、資産の破壊、治安要員への致命的な暴行などの犯行に及んだとされる。
国営メディアは10月29日以降、抗議行動関連の容疑で9人が裁判にかけられたと報じているが、9人の中に死刑判決を受けた5人が含まれているかどうかは不明だ。ほかにも少なくとも12人が、抗議活動との関連で極刑を受けるおそれがある。
当局は、抗議に参加して逮捕された人たちへの死刑判決を取り下げ、その容疑を棄却すべきだ。死刑は何よりも残酷で非人道的刑罰であり、透明性と中立性を欠いた根本的欠陥がある同国の裁判では、死刑につきまとう忌まわしさが一層際立つことになる。
2019年11月の抗議行動から3年、民衆蜂起から2カ月が経つが、その責任を問われない当局は、市民を違法に殺害し続けるばかりか、政治的弾圧の手段として死刑の適用を加速させている。
国連人権委員会は、イランに関する特別会議を近く開催する予定だが、加盟国は生存権をはじめとする人権をはなはだしく蹂躙するイランの暴挙を調査し責任を問う仕組みを早急に確立しなければならない。
数千人が逮捕され、次々と訴追されている中、さらに多くの人たちに死刑が適用されるおそれがある。イランに大使館を置くすべての国には、死刑判決を下される可能性がある現在審理中の裁判に、直ちに高官のオブサーバーを送り込むことが求められる。当局は「これらの裁判は公開される」と語っている。
抗議して死刑のおそれがある人たち
死刑判決を受ける可能性がある21人の裁判は、それぞれ異なる段階にあり、別べつの裁判所で行われている。被告人は死刑判決を受けても控訴できる。
当局は、すでに死刑判決を公表した5人の身元を明らかにしていないが、公開された情報から5人の名前は判明している。ほかに11人が、「地上における堕落」の罪でテヘラン州以外の革命裁判所で審理を受けている。
さらにもう1人、クルド系少数民族の26歳の男性は、抗議行動に関連して「神への敵意」の罪で起訴された。家族によると、男性は仕事からの帰りに抗議デモを見ていて逮捕されたのだという。
すくなくとも3人は、拷問や虐待で引き出された自白が裁判で被告人に不利になるよう使われたことは明らかになっている。
公正な裁判を受ける権利の否定
21人は、逮捕時から捜査、公判手続き全体にわたって弁護人との接見の権利、推定無罪の権利、黙秘権、不利な証言や自白を強要されない権利などの公正な裁判を受ける権利を否定されている。また、拷問や虐待から保護される権利、関連の証拠を知り得る権利、中立で公正な公開審理を受ける権利の否定も常態化している。
国際法の下では、不公正な裁判で死刑を科すことは、生存権を踏みにじるものであり拷問・虐待の絶対的禁止に違反する。
迅速な裁判と公開処刑を求める政府高官
議会は声明の中で司法当局に対して、「デモ参加者に対する寛大な姿勢は一切無用だ」として、市民への教訓とするために早急な審理と死刑を含む有罪判決を出すよう求めている。
アムネスティがあたった公文書によると、イランの検事総長は10月9日、検察当局に被告人1人の審理を早めるよう指示したという。また、9月29日付の文書には、「警察幹部が審理をできるだけ短期間で終え、治安要員への思いやりの姿勢として公開処刑にするよう要請した」とあった。
アムネスティ国際ニュース
2022年11月16日
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