アルジェリア:不当な裁判で54人に死刑判決

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2023年1月16日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:アルジェリア
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アルジェリア北東部カビリー地方で2021年8月に起きたリンチ事件などをめぐり、54人が死刑判決を受けた。しかし、54人の中には事件当時在外在住だったり、明らかに事件と無関係とみられたりする人物が多数含まれている。起訴から判決まで当局の不当な対応が際立つ裁判になった。

多数の被告人を一斉に裁く今回の裁判では、被告54人のうち5人は、出廷しないまま裁かれた。所属する政党を理由に起訴された人たちもいる。さらに5人は取り調べで拷問を受けたと訴えていた。

首都アルジェの裁判所によると、少なくとも6人はテロリスト組織に指定されているカビリア自己決定運動(MAK)に関わった容疑で起訴されていた。

不当な裁判で多数の被告人が死刑判決を受けたことは、人命を無視する当局の姿勢を示すものであり、正義の実現に関する同国の厳しい実情を浮き彫りにしている。

死刑は、対象とする犯罪の種類や内容にかかわらず決して正当化されるものではない。

今回の死刑判決は即刻、破棄されなければならない。拷問や虐待を受けたという申し立てを調査し、また、事件当時国内にいなかったにも関わらず、あるいは支持政党を理由に起訴され死刑判決を受けた人たち全員を対象に改めて審理すべきだ。

日常化する不公正な裁判

2021年8月、北東部の森林地帯で大規模な火災が起き、90人以上が犠牲になった。放火の容疑をかけられた活動家が、リンチで死亡した。死刑判決を受けた54人は、このリンチ事件や森林火災をめぐり、あるいはMAKのメンバーであることで、殺人、テロ、放火などに問われた。拷問やその扇動、治安隊員への暴行、ヘイトスピーチや差別の拡散の罪などにも問われていた。

54人以外に62人が同様の容疑で起訴され、被告人総数は116人にのぼった。昨年11月の裁判では17人が無罪だったが、28人は2年から10年の実刑判決を受け上訴した。

今回の54人のうち少なくとも2人の被告人は、起訴内容や裁判の日時や場所を知らされず、公正な裁判を受ける権利を侵害された。また、9人の証人と事件の被害者家族が、出廷や傍聴を認められなかった。

電気ショックや強かんの脅し

弁護人によると、有罪判決を受けた被告のうちの少なくとも5人は、「無理やり供述させられた」と裁判官に訴えていた。被告の1人は、「取り調べ時に電気ショックを与えられ、水責めや強かんの脅しを受けた」と証言した。これに対して裁判官は、「検察側を提訴するのは被告人の責任だ」と応じた。

2人の弁護人によると、出廷しないまま死刑宣告を受けた4人は、事件当時、国内にいなかった。パリ在住のMAK最高責任者アクセル・ベラバチさんは、「2019年8月以来アルジェリアに戻ったことがない」と話した。取り調べで複数の被疑者が、「ベラバチさんが団体の窓口だった」と検察側に説明していたものの、検察側はベラバチさんのリンチ事件との関わりを示す証拠をつかむことはできなかった。

以前北米MAKのコーディネーターで、今はカナダでインターネットテレビの幹部を務めるムラド・イティムさんは、「2016年以降、アルジェリアを訪れていない」と話した。イティムさんは、2021年8月の事件を報道したために起訴されたのではないかと考えている。

アルジェリア当局は、リンチ事件を利用して国の批判者やMAK政治グループ関係者を起訴したが、その対応はあまりにも強引で見苦しいとしか言いようがない。今回の弾圧は、表現と結社の自由の権利ばかりか、生存権をも大きく侵害している。

背景情報

アルジェリア当局は2021年4月以降、刑法を広範囲に適用して活動家や人権擁護者、ジャーナリストらをテロ関連の容疑で起訴してきた。

同国では1993年以降、死刑の執行はない。一方で死刑制度は維持され、市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の第二選択議定書(死刑廃止条約)も批准もしていない。

アムネスティ国際ニュース
2023年1月9日

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