- 2023年3月 7日
- [NGO共同声明]
- 国・地域:日本
- トピック:日本の難民・移民
2021年の通常国会で廃案になった入管法改定案とほぼ同じ内容の法案を、今通常国会に提出することが、3月7日閣議決定されました。私たちは、この閣議決定に抗議し、入管法を改悪する今回の法案に反対します。
そして、一緒に反対の声を上げてくれるようみなさんに呼びかけます。
こんなに問題点が!
今回の法案は、次のように、難民を虐げ、在留資格のない人の命を危うくするものです。
- 国際基準に反する難民制度と低い難民認定率を改善しないまま、難民申請者を強制送還できる仕組みを設ける。
- 難民など帰国できない事情がある人に帰国を命じ、従わないと処罰する。
- 在留資格のない外国人に対する、司法審査を経ない無期限・長期収容の制度を維持する。
- 新設の監理措置制度で収容から解放された人に対して、就労を原則として処罰対象にして、監視を強める。在留資格のない人への在留特別許可による救済の可能性を、狭める。
収容所内のひどい実態を隠したままの法案をやめさせよう
2021年に国会に提出された法案は、名古屋入管で収容中亡くなったウィシュマさんへの非人道的な扱いなどが批判されて、廃案となりました。その事件の証拠動画等の開示を入管庁は拒み、未だに真相を隠そうとしています。ほかにも、2015年に収容所内で病苦の訴えを無視されながら死去したカメルーン人男性の遺族が起こした裁判の判決(一部勝訴)や、収容中に警備官から集団的暴力を受けたデニズさんの裁判などによって、入管の、人権が保障されない非人道的で過酷な収容制度の実情が次第に白日にさらされ始めています。
難民鎖国のままの申請者の送還や処罰をやめさせよう
また、入管庁による難民認定の運用は狭すぎて、ウクライナ難民さえ、入管庁は難民として受け入れているわけではなく、裁量による不安定な地位を与えているだけです。今回の法案にある「補完的保護制度」もウクライナ難民に適用されるという根拠は何もありません。まして、ほかの国籍の多くの難民申請者は、ミャンマーなど本国の惨状が報道される出身国の人も含めて、難民認定もされずに、放置されています。在留資格を失えば、彼らも入管庁にとっては「送還忌避者」となり、入管法改悪によって送還されたり、さらに刑罰すら科されかねません。
収容から解放された人たちを苦しめることをやめさせよう
仮放免という地位に置かれた人たちは、働くことを入管庁に禁じられ、また生活保護も健康保険も対象外とされ、中には重病を患い、治療を受けられずに苦しんでいる人たちもいます。彼らの生存権が認められないこうした状況に、国連から日本政府に対して改善勧告が出されています。 さらに、今回の法案にある「監理措置制度」という新たな制度では、働くと処罰までされるおそれがあり、監理人を通じての監視が強められます。
若者の将来を奪い、送還することをやめさせよう
幼いころに外国籍の両親とともに来日し、もしくは日本で生まれて、日本で成長した若者たちが大勢います。仮放免の地位におかれながら、それでも勉学に励み、大学や専門学校に進学しても、多くの人たちが入管庁から在留が許可されません。将来就職できるかどうかわからないどころか、いつか馴染みのない国籍国に送還されるかもしれない不安を抱いています。彼らも入管庁にとっては「送還忌避者」であり、入管法改悪によって在留許可の機会が狭められ、さらに刑罰すら科されかねません。
世論で入管法改悪をやめさせよう
迫害を受ける恐れがある人たちを送り返すことをやめさせましょう。本国に帰れない事情を抱える人たちに刑罰を科すことをやめさせましょう。
私たちは、閣議決定に抗議し、入管法改悪に反対します。
私たちは、この社会に生きる一人一人の生命と人権が保障され、本当に「誰一人取り残されない」社会を実現するための改革をこそ、求めます。
多くの人が、一緒に声を上げてくれるよう望みます。
2023年3月7日
公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク
全国難民弁護団連絡会議
日本カトリック難民移住移動者委員会
入管問題調査会
全件収容主義と闘う弁護士の会 ハマースミスの誓い
特定非営利活動法人 ヒューマンライツナウ
署名:難民を虐げ、在留資格のない人の命を危うくする、 入管法改悪に反対します!(change.org)
難民申請者を強制送還できる仕組みなど、難民を虐げ在留資格のない人の命を危険にさらす同法案の再提出・採択に反対の声を上げてください!
外国人の収容問題
日本に住む外国籍の人は、日本にいる資格(在留資格)を取得して、暮らしています。この資格を審査し、可否を判断しているのが、出入国在留管理庁(入管庁)です。入管庁はまた、オーバーステイ(在留許可期限を越えて滞在)などの理由で、在留資格がない非正規滞在の人たちを、行政権限で全国9カ所以上の施設で収容しています。
収容は人身の自由を奪う行為ですから、刑事手続きであれば裁判所の令状が必要ですが、入管の手続きでは不要とされています。いわば、警察官、検察官、裁判官、刑務官の役割を、入管という行政職員が行っているのです。チェック機能が働かない上に、入管職員に大きな裁量が与えられてしまっているのです。
関連ニュースリリース
- 2024年10月11日 [日本支部声明]
日本:袴田巖さん無罪確定 日本政府に死刑制度の廃止と刑事司法制度の改革を求める - 2024年9月26日 [日本支部声明]
日本:「袴田事件」静岡地裁が再審無罪の判決 検察は控訴するな - 2024年6月13日 [NGO共同声明]
日本:改定入管法施行後の世界において国際難民法・国際人権法に沿った対応を求める決意声明 - 2024年3月15日 [国際事務局発表ニュース]
日本:同性婚訴訟で画期的な判決 LGBTIにとって待ち望んだ勝利 - 2024年3月11日 [ブログ]
日本:難民・入管制度を改革し、繰り返される悲劇に終止符を