- 2023年6月 3日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:中国
- トピック:
1989年6月4日は、中国当局が平和的な抗議活動を情け容赦なく押し潰した日として歴史に刻まれている。
この日、中国軍は、政治改革を求めて北京の天安門広場とその周辺に繰り出した数百人、数千人の人びとを射殺した。本当の死者数は不明だ。この弾圧について口にすることは、今日まで厳しく検閲されているからだ。
34年経った今も、中国本土では平和的集会の自由が著しく制限されている。当局は以前から抗議行動や市民集会を「公の秩序を乱す行為」と位置づけていたが、習近平国家主席のもとで抑圧はさらに強化され、抗議行動で意見を表明することは、もはやめったにない。
しかし、逮捕される危険を冒してもなお、集まって声を上げる勇敢な人たちがいる。
2022年末には、中国全土で何千という市民が街に出て、新型コロナウイルス感染症対策の規制に対する怒りの声を上げた。北西部の都市ウルムチで起きた、高層住宅の火災が発端だった。火災で死者が出たのは封鎖のせいだと、ここ何年もの間で最大の抗議活動となった。
実のところ中国の活動家は、天安門事件以降の極めて抑圧的な環境の中でも、抗議し続けてきたのだ。
1999年 法輪功学習者の抗議
1990年代に中国で大きな支持を集めていた法輪功の学習者が、1999年4月に北京で1万人以上集まり、政府による嫌がらせに抗議した。これに対し政府は法輪功を非合法化し、「610オフィス」と呼ばれる法輪功弾圧の治安組織をつくり、脅迫と迫害を展開した。法輪功が禁止されて以来、何万人もの法輪功学習者が恣意的に拘束され、多くの人が拷問を受けた。
2011年:ジャスミン革命の影響
2010年末のチュニジアの「ジャスミン革命」に端を発した中東・北アフリカの「アラブの春」は、インターネット上の抗議行動を中国にもたらした。100人以上の活動家(その多くはツイッターやブログで活動していた)が拘束され、あるいは監視下に置かれたり、違法な軟禁状態に置かれたりした。いまだに行方不明になっている人もいる。
2012-2015年:フェミニスト運動
2012年に習近平主席が政権を握って以来、すでに限られていた表現の自由や平和的集会の自由は、さらに狭まっていった。インターネット検閲の強化や、「外国NGO法」などによるNGOへの統制強化により、活動家や団体が大規模な抗議行動を動員することは事実上不可能になってきている。
それでも、抗議活動は起きている。2012年に生まれた新しいフェミニズムは、その一例だ。大規模な動員でなくとも、街頭に出て、時にはたった一人で抗議行動をとる。このフェミニスト運動対して中国政府は組織的な弾圧を開始し、女性メンバーへの誹謗中傷や嫌がらせを行い、大学でのジェンダーグループを潰し、ジェンダーや女性の権利の問題をめぐるオンラインでの議論を検閲した。2015年には、著名なメンバー5人が逮捕・拘束された。
現在、中国のフェミニスト活動家は、オフラインの組織化や海外で活動を続けている。
2012-2020年:新公民運動
新公民運動は、政府の透明性向上をめざし、腐敗を暴く中国の活動家の緩やかなネットワークだ。2012年に法学者の許志永さんが立ち上げた。
2019年12月、許さんはじめ新公民運動に関わる弁護士や活動家数十人は、南東沿岸部のアモイ市で私的な会合を持ち、中国の市民社会の状況や時事問題について話し合った。同月下旬、全国の警察が会合の参加者を摘発し始めた。2023年4月、許さんと、新公民運動の主要メンバーである人権派弁護士の丁家喜さんは、それぞれ懲役14年と12年の実刑判決を言い渡された。
2018年:ジャシック労働運動
2018年7月、中国南部の都市・深圳にある溶接機器メーカー深圳佳士科技公司(JASIC)の労働者が、労働組合を設立しようとした。数日後、労働者のうち3人が逮捕された。
大学生や労働権の活動家などが、逮捕に対する抗議活動に参加したために、拘束されたり嫌がらせを受けたりした。この件で活発に動いていた大学のマルクス主義グループの多くは、最終的に解散させられたり、再編を余儀なくされたりした。
2022年:「白紙運動」
2022年11月、北京、広東、上海、武漢など中国各地の大学や都市で起きている抗議活動の動画が、ソーシャルメディアで拡散された。人びとはウルムチ火災の犠牲者を追悼し、封鎖措置の緩和を訴えていた。検閲の廃止を求める声も多く、習近平主席の退陣を迫る声もあった。参加者は「白紙であれば削除できない」と抗議の意味を込めて白い紙を掲げたため、「白紙運動」と呼ばれた。
その規模と勢いは、訴追の危険性が高くても進んで声を上げる人の多さ、中国の人びとの勇敢さを示す。その後、大勢のデモ参加者が逮捕された。
2023年6月4日:天安門事件から34年
中国では、天安門事件への言及はもちろん、公の場で追悼することも禁止されている。香港では毎年、天安門事件の犠牲者を追悼する集会が30年間続き、数十万人の市民が参加していたが、中国政府が導入した香港国家安全維持法(国案法)の施行で香港での弾圧が強まり、追悼集会も2020年から禁止されている。人権派弁護士の鄒幸彤(トニー・チョウ)さんなど、追悼集会の関係者の中には拘束されている人もいる。
しかし、香港、中国本土、そして世界中の人びとが、中国における集会の自由の権利を求めて闘い続けている。容赦ない弾圧だろうと、抗議の声を完全に沈黙させることはできない。
アムネスティ国際ニュース
2023年6月1日
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