- 2023年6月12日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:日本
- トピック:性的指向と性自認
6月8日、福岡地方裁判所は同性婚を認めようとしない日本政府を支持する判決を下したが、それでも、LGBTIの権利向上に向けて、変革の機運が高まっていることを示すものとなった。
今回の判決は残念ながら、日本のLGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、インターセックス)の人びとが望んでいたようなものではなかったが、それでも、LGBTIの権利向上に向けて、変革の機運が高まっていることを示すものとなった。福岡地裁は、同性婚が認められない差別的な現状を違憲とは言えないとしながら、同時に、日本の法制度を同性カップルの人権をより尊重する方向に変えていく必要があることも明らかにした。将来的には、同性カップルに異性カップルと同等の権利を認める法的枠組みが必要になってくるだろう。
日本のLGBTIの人びとに対する差別をなくすためには、今後さらなる法制度の充実が求められる。国家による法が整備されていなければ、地方の裁判所に同性婚を認める術はないからだ。今回の判決は、日本のLGBTIの人びとの権利について新しい道が示されることの兆しである。
背景情報
2023年6月8日の福岡地方裁判所での判決に先立ち、熊本と福岡の3組の同性カップルは、結婚を男女間のものと定義する現在の日本の民法の解釈は、「婚姻の自由」と「法の下の平等」という憲法上の権利を侵害すると主張していた。
福岡地方裁判所は、同性婚を認めないのは違憲ではないと判断し、3組のカップルが求めた損害賠償を棄却した。しかし、裁判所は、日本の立法府に対して、同性カップルの権利に配慮し、日本社会における意識変化を反映するような法制度の変更を行うよう勧告した。
本日の判決は、同性婚を認めないのは違憲ではないが、「憲法24条2項に違反する状態にある」とした、東京地裁による2022年11月の判決と類似するものだ。
結婚の自由を求める全国同時訴訟が辿ってきた経緯は次のようなものである。
2019年、13組の同性カップルが日本各地の地方裁判所において、同性婚の権利を求めて、国を相手取った訴訟を起こした。
2021年3月、札幌地方裁判所は、同性婚を認めないことを違憲とし、日本の裁判所で初めて同性婚の権利を擁護する判決を下した。
2022年6月、大阪地方裁判所は原告の主張を退けた。そのうえで、札幌地裁とは異なり、「法の下の平等」を定めた憲法14条などには違反していないと判断した。
2023年5月、名古屋地裁は札幌に次いで全国で2番目に、同性婚が法的に認められていないことを違憲とする判決を下した。
日本では、同性婚についての議論が肯定的な方向へと推移しており、世論調査では、同性婚の権利に対する理解と支持が高まっていることが示されている。2023年2月、岸田文雄首相は、荒井勝喜首相秘書官をLGBTIの人びとに対する蔑視発言を理由に解任した。
日本は、性的指向・性自認に基づく差別を撤廃するための国内法をまだ導入していない。2022年11月1日、東京都はパートナーシップ制度の運用を開始したが、相続権を含む完全な婚姻権には及ばない。
国会ではLGBTの人びとへの理解を促進することを目的とした法案が長きにわたって審議されてきたが、「LGBT理解増進法案」が6月9日、衆院内閣委員会で可決された。これは明確に差別を禁止する内容でないどころか、「多数派への配慮」を求めているともとれる事項を含み、当事者や支援団体は強い懸念を表明している。
アムネスティ・インターナショナルは、日本政府に対し、LGBTIの人びとの権利を尊重し、性的指向、性自認、性別を理由とする差別を明確に禁止する包括的な国内法の導入を引き続き求める。
アムネスティ国際ニュース
2023年6月8日
英語のニュースを読む
関連ニュースリリース
- 2024年10月11日 [日本支部声明]
日本:袴田巖さん無罪確定 日本政府に死刑制度の廃止と刑事司法制度の改革を求める - 2024年9月26日 [日本支部声明]
日本:「袴田事件」静岡地裁が再審無罪の判決 検察は控訴するな - 2024年6月13日 [NGO共同声明]
日本:改定入管法施行後の世界において国際難民法・国際人権法に沿った対応を求める決意声明 - 2024年3月15日 [国際事務局発表ニュース]
日本:同性婚訴訟で画期的な判決 LGBTIにとって待ち望んだ勝利 - 2024年3月11日 [ブログ]
日本:難民・入管制度を改革し、繰り返される悲劇に終止符を