イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:ICJ イスラエルに「ジェノサイド」阻止の暫定措置を命令

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:ICJ イスラエルに「ジェノサイド」阻止の暫定措置を命令
2024年2月 1日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争

国際司法裁判所(ICJ)は1月26日、イスラエルがガザ地区でジェノサイド(集団殺害)を行っているとして南アフリカが提訴した裁判で、複数の暫定措置を命じた。この判断はガザ地区のパレスチナ人をさらなる苦しみや回復不能な損害から守る上での重要な一歩である。

ICJはイスラエルに対し、6つの暫定措置を命じた。ジェノサイド条約(ジェノサイドの罪の防止及び処罰に関する条約)で定義されたジェノサイド行為の自制、ジェノサイドを直接的かつ公然と扇動する行為の防止と処罰、ガザの民間人への人道支援を確保するための即時かつ効果的な措置などだ。重要な点として、ジェノサイドの証拠を保全し、今回の命令に従ってとったすべての措置に関する報告書を1カ月以内にICJに提出するようにも命じている。

今回の判断は、ジェノサイドを防止し、残虐犯罪のすべての犠牲者を保護する上で、国際法が極めて重要な役割を担っていることを、あらためて示している。ガザ地区の住民を大勢殺害し、かつてない規模でパレスチナ人に死と恐怖と苦しみを与える無慈悲な軍事作戦をイスラエルが進める中、世界が傍観することはないという明確なメッセージでもある。

しかし、ICJの命令だけでは、ガザの人びとが目の当たりにしている残虐行為と破壊に終止符を打つことはできない。ガザでのジェノサイドの危険な兆候と、イスラエルが国際法を露骨に無視していることを考えると、パレスチナ人に対するイスラエルの猛攻を止めるためには、足並みを揃えた実効性ある圧力が欠かせない。ICJは即時停戦は命じなかったが、すべての当事者による即時停戦は不可欠であり、暫定措置を実施する上で、そして市民の苦しみを終わらせるために、最も効果的な施策である。

今回の措置命令は、ガザのパレスチナ人の生存が危機にあるとICJが判断したことに他ならない。イスラエル政府は、判決に直ちに従わなければならない。また、南アフリカによるジェノサイドをめぐる提訴に批判的、あるいは反対であったとしても、すべての国家は、これらの措置が確実な実施されるよう保障する明確な義務を負っている。

米国、英国、ドイツ、その他のEU(欧州連合)諸国の指導者たちは、法的拘束力のあるこの判断を尊重し、ジェノサイドを阻止する義務を果たすために全力を尽くす意思を示さなければならない。そうでなければ、国際法秩序の信頼性と信用が大きく損なわれることになる。

各国はまた、イスラエルとパレスチナの武装集団に対する包括的な武器禁輸措置など、現在進行中の国際犯罪を防止するための緊急措置を講じなければならない。

アムネスティは、ガザでジェノサイドが行われる恐れについて警告を発してきた。その背景には、パレスチナ人の死者数の衝撃的な多さ、執拗な攻撃による広範囲の破壊、違法な封鎖の一環としての人道支援の阻止など、イスラエルがガザの民間人に言語道断の苦しみを与えていることがある。また、ベンヤミン・ネタニヤフ首相をはじめとするイスラエル政府高官による、パレスチナ人を人間扱いしていない人種差別的な発言の増加や、アパルトヘイト制度のもとでパレスチナ人を抑圧し差別してきたイスラエルの歴史もジェノサイドの恐れを示唆している。深刻なジェノサイドが起きる可能性に直面した場合、すべての国家はジェノサイドの実行を阻止するために行動する国際法上の義務を負う。

イスラエルによるガザへの容赦ない砲撃で、26,000人以上のパレスチナ人が死亡し、1万人がいまだ瓦礫に埋もれているとされる。ほとんどが民間人だ。少なくとも180万人のパレスチナ人が国内避難民となり、適切な食料、水、避難所、衛生設備、医療支援を手にすることができずにいる。

アムネスティは、イスラエル、ハマス、その他のパレスチナ武装勢力に対し、ガザにおけるすべての軍事行動を直ちに停止するよう求める。イスラエルは、違法かつ非人道的な包囲を解除し、意図的に仕組まれた飢饉に苦しむパレスチナ人に対し、人道的援助を無条件かつ速やかに提供できるようにしなければならない。また、ハマスと他のパレスチナ武装勢力に対しては、残っているすべての民間人の人質を解放するよう求める。

背景情報

2023年12月29日、南アフリカは、ガザ地区でのパレスチナ人に対するイスラエスの行為はジェノサイドにあたるとして、ジェノサイド条約に基づきICJに対応を求めた。南アフリカの暫定措置要請に関する審理は、2024年1月11日と12日にオランダのハーグで開かれた。

国連の主要な司法機関であるICJは、個人の刑事責任を追及するのではなく、国家が国際司法裁判所に提起した法的紛争を国際法に従って解決する役割を担っている。ジェノサイド条約の解釈、適用、履行およびジェノサイドに対する国家の責任に関しても扱う。

国連憲章第94条は、ICJの判決は紛争当事国を拘束するものであり、もしその判決が履行されない場合には、安全保障理事会に訴えることができると定めている。安保理は勧告を出すか、判決履行に向けた措置を決定することができる。

アムネスティ国際ニュース
2024年1月26日

英語のニュースを読む