- 2024年9月26日
- [日本支部声明]
- 国・地域:日本
- トピック:死刑廃止
本日9月26日、静岡地方裁判所は、逮捕から58年を経て、ついに袴田巌さんに再審無罪の判決を言い渡した。アムネスティ・インターナショナル日本は、この決定を歓迎するとともに、静岡地方検察庁に対し、控訴を行わないよう強く求める。
逮捕から58年、死刑判決が確定してから44年、2023年10月の再審開始から15回の審理を経て出されたこの判決は、これまで一貫して無実を訴えて闘い続けてきた袴田巖さん(88歳)及び彼を支えた姉のひで子さんや弁護団など国内外のすべての支援者たちの勝利を決定づけるものとなった。
しかし、逮捕と死刑判決によって袴田さんが失った膨大な時間を取り戻すことはできず、拘置所で長年自由を奪われたことによって引き起こされた拘禁症とは今後も闘い続けることになる。
これで袴田さんは、死刑確定後に再審無罪判決を受けた5人目ともなったが、日本の司法の下で起きたこの残酷な過ちを二度と繰り返してはならない。
アムネスティ・インターナショナル日本は、静岡地方検察庁に対し、袴田さんの人権を第一に考え控訴しないよう求める。また、日本政府に対し、半世紀の人生を奪った取り返しのつかない人権侵害を引き起こした死刑制度の廃止を直ちに求める。同時に、廃止に至るまでの間、死刑執行の停止、精神障害や知的障害が懸念される死刑確定者の判決の見直し及び日本の刑事司法制度の改革を求める。
2024年9月26日
アムネスティ・インターナショナル日本
背景情報
元プロボクサーの袴田巖さんは、1968年に死刑判決を受けて2014年3月に釈放されるまで、47年間にわたり拘禁されていた。これは、死刑囚として世界で最も長い投獄である。袴田さんは1966年、働いていたみそ製造会社の専務一家4人を殺害した容疑で逮捕され、死刑判決を言い渡された。この事件では取り調べ過程における不公正な手続きや証拠の信憑性が問題となってきた。袴田さんは弁護士の立ち会いがないまま、20日間にわたる警察の過酷な取り調べを受け「自白」したが、公判では、暴行や脅迫を受けて強いられたものだったと、自白を撤回した。
2008年、2回目の再審請求後、裁判所の求めに応じ検察側は600以上の証拠を開示したが、その中にも、当初の証拠の信憑性に疑念を投げかけるものがあった。静岡地裁は2014年3月、証拠ねつ造の疑いを指摘し、無罪の可能性を示唆し、これ以上の拘置は「耐え難いほど正義に反する」として再審開始と釈放を決定した。しかし、これを不服とした静岡地方検察庁が即時抗告をした後の抗告審理で、2018年6月、東京高裁は地裁の再審開始決定を取り消した。この判決に対する弁護側の特別抗告を受けて抗告審理を担当した最高裁判所は、審理が尽くされていないとして2020年12月に高裁に審理を差し戻した。2023年3月13日、東京高裁は、2014年の静岡地裁の再審開始決定を支持し、検察官の即時抗告を棄却した。その後の検察官による特別抗告はなく再審開始が決定。
ついに2023年10月27日静岡地裁にて再審開始。計15回の審理を経て、検察は死刑を求刑、弁護団は無罪を主張して2024年5月22日に結審。この判決が本日の裁判で言い渡された。
アムネスティ・インターナショナルは、犯罪の種類や状況、犯罪の有無、個人の特質、死刑執行方法などを問わず、例外なく死刑に反対する。
最新の死刑統計(2024年5月29日更新)
アムネスティの調べで、死刑を執行した国の数はこれまでで最も少なかったが、執行の件数はこの10年近くで最も多いことが明らかになった。執行国数の減少は、死刑存置国の孤立がますます進んでいることを示している。
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