- 2025年12月11日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:EU
- トピック:難民と移民

12月8日、EUの司法・内務理事会会合で、EU加盟各国の法務大臣や内務大臣は、欧州委員会が2025年3月に提案したEUレベルでの送還・国外退去に関する新規則について、交渉における同理事会の立場に合意した。
担当大臣らは、国外退去決定を受けた者に対し、最大2年半の収容を標準とすることを提案している。さらに、国外退去対象者に対する義務や監視、制裁の拡大も提案している。例えば身分証明書や固定の住所を持たないなど、多くの人にとって満たすことが難しい条件も義務になっている。新たな措置により当局は対象者の自宅や「その他の関連施設」を家宅捜索し所持品を差し押さえることが可能となり、大規模な監視、差別的な警察活動、人種プロファイリングを招くことになるだろう。
提案はさらに、「公共政策」や「公共の安全」に対する脅威とみなされる者を刑事司法なしに無期限に拘束することを認め、国外退去命令への異議申し立てや国外退去手続きにおける独立した人権監視を制限する。一方で加盟国は、国内法でさらなる制裁や義務、拘束の根拠を設けられる余地を残すよう主張している。
EU大臣たちの送還規則に関する立場は、EUがいかなる代償を払ってでも、強制送還、強制捜査、監視、拘束を強化するという、凝り固まった考えを浮き彫りにする。こうした懲罰的措置は、前例のない移民の権利の剥奪であり、より多くの人びとが法的に宙ぶらりんで不安定な状況に陥るだろう。
司法・内務理事会は既に深刻な欠陥のある欧州委員会の提案に対し、すべての人の尊厳・安全・健康を促進する政策を進める代わりに、新たな懲罰的措置を導入し、保護措置を解体し、権利をさらに弱体化させる選択をした。これは移民と彼らを受け入れる地域社会に深刻な被害をもたらすだろう。
アムネスティは、本提案に対する最終的な立場をまだ採択していない欧州議会に対し、方針を転換し、今後の交渉では断固として人権を中心に据えるよう強く求める。
背景情報
欧州議会も欧州委員会案に関する立場を交渉中であり、今後数カ月で機関間交渉が行われる見通しだ。
EU加盟国は、非人道的で非現実的な「送還ハブ」(EU域外の国外送還センター)の設置計画も推進し続けている。送還ハブが現実のものとなれば、人びとは何のつながりも持たない国に強制移送され、国際法上の保護を受けられない長期拘禁にさらされるおそれがある。この手法は、米国における、家族を引き離し地域社会を破壊している非人道的で違法な大量逮捕・拘禁・送還を彷彿とさせる。
欧州委員会はまた、EU難民法における「安全な第三国」の概念の改正と、EUの「安全な出身国」リストに関しても提案しているが、司法・内務理事会ではこの2件でも合意に達した。アムネスティは、これら3つの提案が、欧州での庇護制度と人間の尊厳を著しく損なうと警鐘を鳴らしている。
アムネスティ国際ニュース
2025年12月8日
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