- 2025年12月25日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:EU
- トピック:難民と移民

欧州議会と欧州理事会が合意した難民保護に関する新たなルールは、難民保護の基盤そのものを損なうものであり、EUにおける庇護制度への前例のない攻撃である。この合意は、国際法上の義務を回避しようとするこの恥知らずな試みは、EUの難民保護責任を欧州外の国々にさらに転嫁するものであり、人びとの尊厳を守る人道的な移民政策とは程遠い。
12月18日、欧州議会と理事会は、EU難民手続規則での「安全な第三国」概念の改正案、およびEU全域における「安全な出身国」リストの導入に合意した。
「安全な第三国」概念の改正により、EU加盟国は庇護申請を実質審査なしに却下しやすくなる。さらに、安全を求める人びとを、何のつながりも持たず足を踏み入れたこともない国や、単に通過しただけの国に強制移送できるようになる。この合意は、EUが難民保護に対する誓約を放棄することを意味し、EU加盟国が庇護申請の域外処理に関する協定を第三国と結ぶ道を開くものである。新しいルールは、「移民・庇護に関する協定」の他の部分と共に、2026年6月から適用される。
また、EU全域で「安全」と見とみなされる出身国のリストが導入されれば、難民申請者が「安全ではない」と証明しなければならなくなる。保護申請の個別審査を損ない、法的障壁を高くするものであり、危険にさらされている人びとが必要な保護を拒否される結果を必ず招くだろう。
背景情報
新たなEU全域に適用される安全な出身国リストには、バングラデシュ、コロンビア、エジプト、コソボ、インド、モロッコ、チュニジアに加え、EU加盟候補国(例外あり)が含まれる。これらの国の国民は保護を必要としないと推定され、個々の申請内容に基づく個別審査が軽んじられ、迅速化された難民認定手続きを経ることになる。「安全な出身国」の指定拡大は即時適用される可能性がある。
「安全な第三国」の概念は、難民申請者が第三国で国際的な保護を求めることが可能であると判断された場合、難民申請を不受理とすることを可能にするものだ。これは、国際難民法における一般的な慣行である「国際的な庇護を申請した国が申請の審査に関する主要な責任を負う」という原則の例外措置だ。欧州諸国は義務を回避するために「安全な第三国」の概念を頻繁に利用してきており、アムネスティはこの概念を長年批判している。
今回の改正で、庇護希望者と第三国との間に「意味のあるつながり」があることが、必須要件ではなくなる。代わりに、第三国を経由することや、EU加盟国と第三国との間の合意があれば十分となる。また、難民不認定に対する不服申し立て中の送還停止措置も廃止される。この改正は現在、協議中の懲罰的な送還措置に関する新規則と連動している。
EU加盟国は、第三国がその人にとって安全であるかどうかを個別に評価し、すべての庇護希望者に公正な難民認定手続きを提供し、案件を審理する義務がある。
アムネスティ国際ニュース
2025年12月18日
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