バングラデシュ:メタ社の不適切投稿対応の遅れ 現実世界での暴力を助長するおそれ

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2026年3月26日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:バングラデシュ
トピック:企業の社会的責任

アムネスティは3月16日、メタ社がフェイスブック上の有害な投稿に対し迅速かつ効果的な措置を講じない限り、バングラデシュで深刻な人権侵害事件がさらに増えるおそれがあるあると警鐘を発した。

アムネスティなどの団体は、2月12日の議会選挙を前にオンライン上で有害な情報が増加していることを確認しており、一部はバングラデシュ国外からの発信だった。政党や少数派に関する誤解を招くような扇動的な内容が拡散され、宗教・コミュニティ間の対立を誇張する宗派主義的な主張や信条が増幅されていた。報道によれば、国外からの投稿の大部分はインドから発信されたものだった。こうした内容が積み重なることで、特に少数派の人びとに対する宗派間の対立、差別、暴力のリスクが高まるおそれがある。

選挙前の一連の出来事、とりわけ一部のメディアへの攻撃は、これまで多くの国で見られた危険な傾向を如実に映し出している。こうしたケースでは、オンライン上の扇動、誤報、偽情報、そして組織的な嫌がらせが、特にプラットフォームのアルゴリズムによって増幅されると、瞬く間に現実世界へと波及し、差別や暴力などの人権侵害へと発展しかねない。

バングラデシュは現時点では人権危機に陥っているわけではないが、その兆候はすでに現れている。国境を越えて流入する有害な情報、政治的緊張、宗派間の対立をあおるような言説、そしてアルゴリズムによる増幅が相まって、表現の自由や少数派の人びとの権利を脅かす可能性のある不安定な状況が生み出されている。

暴力とオンライン上の投稿

2025年12月18日、主要メディアである『ザ・デイリー・スター』と『プロトム・アロ』の事務所が、暴徒による襲撃を受けた。『ザ・デイリー・スター』と現地のファクトチェック団体ディスミスラボの調査によると、襲撃の数カ月前から、両メディアに対する脅迫がソーシャルメディアで拡散されていた。多くのユーザーが両メディアを「インドの工作員」や「反国家的勢力」と描写しており、インドの利益ために動いてバングラデシュを弱体化させているとする広範なオンライン上の主張を反映したものだった。さらに、両メディアの事務所を焼き討ちし、襲撃するよう呼びかけているものもあった。調査は、オンライン上の暴力扇動と暴徒による襲撃との間には直接的な関連性があるとしている。バングラデシュ当局は、暴力を呼びかける投稿への対応が遅れていることについてメタ社に警告し、公共の安全や少数派の人びとへの影響について懸念を表明したと言われている。

アムネスティは、こうした事例が単発のものではないことを懸念する。国際機関やメディアは以前から、インド発のものを含め、バングラデシュにおける宗派間暴力について誤解を招くような誇張されたオンライン上のデマが、社会の分断に加担していると指摘してきた。アルジャジーラによれば、こうしたオンライン上の投稿が、少数派の人びとの間に恐怖と緊張の高まりをもたらしているという。

オンライン上の有害な影響がデジタル空間にとどまらないことは明らかだ。人びとの見方・考え方を形成し、緊張をあおり、現実世界での暴力や混乱を助長する。今こそ予防策を講じ、デジタル空間での影響力をソーシャルメディア企業が責任を果たすべき時だ。オンラインでの有害な情報が現実世界の暴力へと転じるケースを、世界はこれまで何度も目にしてきた。バングラデシュではその流れを食い止める機会はまだ残されている。メタ社は今すぐ行動を起こすべきだ。

アムネスティはこれまで、ミャンマーでのロヒンギャへの暴力の扇動にいかにフェイスブックが利用されたか、またエチオピアのティグライ紛争における人権侵害をどう助長したかを明らかにしてきた。バングラデシュは今、重要な分岐点にあり、メタ社が時宜を得た予防措置を講じれば事態の悪化を食い止めることができるだろう。

被害を拡大させる監視ベースのビジネスモデル

メタ社の監視型ビジネスモデルは、ユーザーのエンゲージメント(いいね、コメント、シェアなどの反応)を最大化することで成り立っており、扇情的で対立を招くような有害な投稿が拡散されがちだ。すべての有害な投稿が違法というわけではないが、合法であっても拡散されれば人権上のリスクとなり得る。扇動的な内容が多くの反応を得ると「おすすめ」システムによってさらに拡散され、投稿を見る人が増え、現実世界への潜在的な悪影響も増大する可能性がある。

アムネスティなどは以前より、紛争地域や重大な人権侵害が発生しやすい状況において緊急の緩和措置を講じるよう求めてきた。メタ社自身も、こうした状況では強化された特別な安全対策が必要になる可能性があることを認めている。現在バングラデシュで見られる兆候は、こうした措置の緊急性を浮き彫りにする。

アムネスティは、選挙に先立つ2月10日にメタ社に書簡を送り、フェイスブックが人権リスクとならないためにどのような措置を講じるのか説明を求めた。質問には、少数派など社会的に弱い立場にある人びとへのリスクをどう評価するか、またバングラデシュのユーザーに影響を及ぼす国外からの投稿を特定しているかどうかも含まれる。メタ社は、提示された2週間の期限内には回答できないと返答した。

企業には、人権侵害に関与しないよう、国際基準に基づき人権を尊重する責任がある。これには、事業活動に関連する人権侵害を防止・軽減するための積極的な措置が含まれる。この責任は国家の規制とは別なものであり、継続的なリスク評価、透明性、効果的な対策が求められる。

また少数派を標的とした有害な投稿に関する報告、対応措置、ベンガル語の投稿をチェックする人員体制、選挙前の緊急対策の有無などについて、メタ社に情報提供を求めている。

背景情報

2024年7月、学生主導の大規模な抗議活動を受け、シェイク・ハシナ前首相は辞任を余儀なくされ、インドへ逃亡した。バングラデシュは少なくとも1,400人の死者を出した弾圧事件の責任を問うため身柄引き渡しを要求しているが、親インドのハシナ前首相は現在もインドに滞在している。その後、彼女は欠席裁判にかけられ、人道に対する罪で死刑判決を受けた。インドがハシナ氏の引き渡しを拒否していることで、両国間の関係は緊張している。

アムネスティ国際ニュース
2026年3月16日

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