ギリシャ:警察の危険な対応 平和的デモがまるで戦場に

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2026年6月18日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ギリシャ
トピック:表現の自由

アムネスティは6月3日発表した報告書で、ギリシャ警察が平和的なデモ参加者や報道関係者に対し、しばしば不当で過剰な武力を行使しており、その結果、深刻な身体的・精神的被害が生じていると訴えた。

極めて憂慮すべきこの人権侵害の背景には、国際的・地域的な人権基準を満たしていない抗議活動に関する法規制と、デモを取り締まる法執行官の人権侵害が罰せられないことがある。

ギリシャでは、平和的な集会の自由が法律上も実務上も露骨に踏みにじられ、平和的な抗議者たちが警察によって不当に拘束され、犯罪者扱いされ、違法な武力行使の標的となっている。アムネスティが収集した映像や証言からは、スタングレネード(閃光と大音量で感覚を奪う非致死性の手榴弾)の使用や警棒その他の低致死性の武器の乱用が繰り返し確認されており、さまざまな種類のけがを負わせている実態が浮き彫りになった。ジャーナリストもまた、危険にさらされている。こうした対応に警察の暴力が処罰されない状況が重なり、平和的な抗議を萎縮させている。

違法な武力行使と不処罰の風潮

この報告書は、2年間にわたる調査に基づいている。100人以上のデモ参加者、ジャーナリスト、弁護士らへの聞き取りや、さまざまなデモの映像の徹底的な検証・分析を通じて、デモの最中に警察が不必要または過剰な武力を行使しているという一貫した傾向が明らかになった。

デモの取り締まりにおける違法な武力行使に関連して話を聞いた67人のうち30人が、警察が平和的な抗議者やジャーナリストの頭上や足元、あるいは密集した群衆の中に、直接スタングレネードを投げ込んだ様子を語った。

フォトジャーナリストのマリオス・ロロスさんは、2025年1月26日、テンピでの列車衝突事故に関するデモを取材中に警察官が投げたスタングレネードが直撃して、頭部を負傷し聴力を失った。

「私はカメラを手に持っていたし、フォトジャーナリストであることは明らかだった。機動隊員は意図的に私にスタングレネードを投げつけたのだと思う。頭の左側に当たって、すぐそばで爆発した。もし頭の正面で、もう少し遅れて爆発していたら、今こうして話しをすることもなかっただろう」

アムネスティが検証した映像は、ロロスさんの証言を裏付けるものであり、彼が意図的に標的にされたことを示唆している。学生のギオルゴス・マブロスさんは2022年5月、テッサロニキで行われた平和的な学生デモの最中、警察からスタングレネードを投げつけられた。鼓膜に穴が開いて難聴になり、頭には外傷を、右手、腕、肩には傷や火傷を負った。

2025年10月にアテネで行われた抗議デモの解散後、人びとが屋外でくつろいでいたカフェのすぐそばで警察が違法にスタングレネードを使用し、傍観者も混乱に巻き込まれた様子を写した映像もあった。報告書は、平和的なデモ参加者を殴打したり、集団で警棒を振り回してデモ参加者を追跡したり、すでに警察に捕まった人を殴打したりするなど、警棒の違法な使用についても詳述している。さらに、化学刺激剤や放水銃の使用、逮捕・拘束時の違法な武力行使、警察のオートバイ部隊による違法な武力行使など、一連の事態も記している。

女優兼演劇監督のアナスタシア・ポリティさんは、2025年10月7日、パレスチナ人への連帯を示すデモに参加していた群衆の中を、警官2人がバイクで突っ込んでいったと話す。うち1人は警棒を手にしていたという。この件で彼女は、腕と肋骨を骨折し、頭や左膝、すねをけがした。

 「バイクに轢かれないよう、間一髪で歩道に飛び移ることができた。でも、バイクがすぐ後ろをすり抜けていくと同時に、背中に強烈な打撃を感じ、スイカのように地面に叩きつけられた」

警察による違法な武力行使の被害者は、適切な救済を受けることが難しい。不十分な懲戒調査、加害者の特定に至らない刑事捜査、違法な武力行使を正当化しかねない一部の司法判断、そして治安警察による識別番号の表示義務の不履行などが、責任追及の妨げとなっている。一方、ギリシャの警察監視機関(EMIDIPA)は、独自の調査をさらに進めるための人員や資源が不足している。

幅広い警察権限、強硬な対応、抑圧的な法律

警察がデモ参加者を制止し、身元確認のために警察署へ連行したりできるなど、その権限があまりに広範なため、違法行為に対する合理的な疑いがない場合でも、デモ参加が妨げられている。

アムネスティが聞き取りをした抗議参加者、ジャーナリスト、弁護士らは、不当に自由を奪われ、不必要な身体検査をときには屈辱的な形で受け、逮捕・身柄拘束時の違法な武力行使にさらされ、医療も拒否された経験を語った。外部と連絡を取る権利は保障されず、食事なども提供されなかったという。

平和的な抗議活動を行う人びとに法的支援を提供している弁護士のアニー・パパロウソウさんと、デモを取材していたジャーナリストのマリーナ・メンタニさんは、身分証の確認という名目で警察により身柄を拘束された。2人は拘束が違法であったと訴え、メンタニさんは服を一部脱がされて身体検査された屈辱についても語った。

また報告書は、デモへの参加や市民的不服従行為というだけで起訴されたなど、平和的な抗議参加者を犯罪者扱いする事態にも焦点を当てている。

抗議活動に関するギリシャの法律は、国際的・地域的な人権法、ならびにギリシャが加盟する条約の義務に準拠していない。それにもかかわらず、ギリシャ当局は平和的集会の自由の権利をさらに制限しようとする動きを見せており、2025年にはシンタグマ広場の一部における抗議活動を全面的に禁止する規定が導入された。

平和的な抗議活動への参加やその報道を行うにあたり、さまざまな圧力や妨害を受けたり、生命や身体の危険にさらされたりすべきではない。ギリシャ当局は、抗議活動に関する法律を早急に改正し、警察による暴力的な取り締まりを終わらせ、権利を行使する人びとを保護し、こうした人権侵害を許してきた不処罰の連鎖を断ち切らなければならない。また、抗議参加者やジャーナリストへの違法な武力行使といった不穏な慣行を終わらせ、集会での取り締まりにおけるスタングレネードの使用を禁止しなければならない。軍用レベルの装備は、ギリシャであれ世界のどこであれ、抗議活動対応において使用されるべきではない。

背景情報

NGO「ギリシャ・ヘルシンキ・モニター」によれば、2019年から2025年11月までの間に、法執行官による人権侵害やその他の重大な犯罪に関する181件の事件が検察当局によって捜査されたが、有罪判決が下されたのはわずか7件であった。同期間に法執行官による拷問の疑いで捜査された60件のうち、公判に付されたのは4件のみであり、有罪判決は1件のみであった。

アムネスティは長年にわたりギリシャにおける抗議活動への警察対応について記録し、懸念を表明しており、2012年、2021年にも報告書を発表している。

アムネスティ国際ニュース
2026年6月3日

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