- 2026年10月 8日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:米国
- トピック:難民と移民

アムネスティは新しい報告書で、トランプ政権下でシカゴ、ミネアポリス・セントポール、ニューオーリンズ、およびワシントンD.C.において米移民税関執行局(ICE)、米税関・国境警備局(CBP)、その他の連邦機関が実施した大規模かつ重武装の移民摘発作戦で、広範な人権侵害が行われてきた実態を明らかにした。
同報告書は、トランプ政権が人種差別的で外国人嫌悪的な虚偽の主張を根拠に、移民の大量逮捕と強制送還を行っていることを浮き彫りにする。政権の目的は、可能な限り多くの移民、庇護希望者、難民を拘束し、国外退去させ、移民全体に恐怖を広めることだ。
報告書は、移民、庇護申請者、難民に恐怖を植え付けることを狙った深刻な人権侵害が、全米各地で繰り返されている実態を詳述している。ICEによる人権侵害は今に始まったことではないが、同報告書はこうした侵害行為の多くが極めて危険なレベルに達していることを明らかにしている。
トランプ政権は、超法規的処刑に該当しうる不法な殺害をはじめ、強制失踪にも相当する恣意的で差別的な隔離拘禁(一部には、拷問の絶対禁止に違反するおそれのある状況下での拘禁もみられた)、平和的な抗議活動に対する暴力的な鎮圧など、多岐にわたる人権侵害を行ってきた。調査結果を踏まえ、アムネスティはICEの即刻廃止を求める地域社会の声に加わる。
ICEは廃止すべき
アムネスティの調査結果は、4つの作戦で見られた人権侵害が単発的なものでも例外的なものでもなく、繰り返し行われてきた事態の一端であることを示す。こうした行為は移民や地域住民全体に壊滅的な影響を及ぼしている。
覆面し武装した連邦捜査官が路上で人びとに暴力を振るっても処罰も受けずにいられる状況は、地域社会を安全にするどころかすべての人を危険にさらす。ICEは根本的に破綻しており、もはや立て直すことはできない。米国政府が国際人権法・基準に準拠した移民取締体制を構築するためには、ICEを廃止し、一からやり直す必要がある。
ICEは2001年9月11日の同時多発テロ事件を受けて創設され、その後、極めて問題の多い治安体制が築かれていった。アムネスティをはじめとする諸団体は、2003年の設立以来ICEによって行われてきた人権侵害と、監督や責任追及の著しい欠如を指摘してきた。しかし、2025年1月以降の実態は、巨額の追加資金と根深い不処罰に支えられ、惨状の深刻さと規模において新たな段階に達している。
人権侵害
4つの作戦では、移民、庇護希望者、難民、移民と決めつけられた人びと、黒人やラテン系の住民、そして彼らを支援しトランプ政権の行動に異議を唱えた人びとがさまざまな人権侵害を受けた。また、地域社会全体にも恐怖を植え付けている。報告書では4件の作戦全体に関して、以下が記されている。
- 人種差別的な移民摘発作戦および恣意的な拘禁
- 連邦捜査官による嫌がらせ、威嚇、侮辱的な扱い、不当な武力行使
- 連邦捜査官による致死的な武力の行使および不法殺害。これらは超法規的処刑として調査されるべき。
- 連邦捜査官による抗議運動の鎮圧、催涙ガスや唐辛子スプレーを含む「低致死性武器」の使用
- 違法な監視および顔認識技術の使用
- 非人道的な拘禁環境および適正な法的手続きの拒否。これらは拷問として調査されるべき。
- 違法な隔離拘禁および強制失踪に相当し得る行為
本報告書が詳述しているように、ICEの捜査官たちは、トランプ政権による公然たる支援を受けて拡大してきた組織環境のもとで活動してきた。そこでは、トランプ大統領をはじめとする政府高官らによって、暴力的で人種差別的な移民取り締まり手法が奨励されていた。捜査官はしばしば覆面を着用し、自らの身元を明らかにしないまま活動した。また、不正行為の防止や是正のための仕組みは弱体化あるいは撤廃され、人権侵害が発生しても、実効的な調査や責任追究が行われることはほとんどなかった。
報告書には、先住民族オジブウェとラテンアメリカ系の血を引くミネソタ州下院議員、リーシュ・コズロフスキさんの証言が詳しく記されている。「私のいとこは、夫と一緒に車で仕事に向かっているところでした。そこにICEが乗り込んできたのです。文字通り、黒人やラテン系の人を探していました。彼らは銃を突きつけて車の窓ガラスを割り、暴行を加えました。いとこは妊娠中でした。夫が『彼女はネイティブ・アメリカンだ、これが部族身分証だ!』と叫ぶと、ICEの捜査官はこう罵ったのです。『そんなもの関係ない、ここは今や俺たちの土地だ』と」
ICEの捜査官が露骨な人種プロファイリング(捜査機関が、人種や肌の色、国籍、民族的な出身をもとに職務質問や取り調べの対象者を選ぶこと)を行っていたとされるケースが、報告書内に数十例あり、これはほんの一例に過ぎない。
人種プロファイリングや路上で人びとを強引に連行すること、家族を引き離すこと、恣意的に拘禁することは、違法で残酷な行為であるだけでなく、人びとに深刻な影響を及ぼす。人権を侵害し、子どもや家族、そして地域住民全体に恐怖と精神的苦痛を与えるとともに、長期にわたる健康被害をもたらす。
本報告書はまた、地域住民が団結して抵抗し互いを守り合う姿にも焦点を当てている。こうした結束は、相互支援ネットワークや迅速対応ネットワーク、憲法上の権利を監視する市民の育成員、ウォーキング・スクール・バス(近隣住民やボランティア、教師などが集団で子どもたちを学校に送り届ける取り組み)などを通じて、移民摘発の影響を直接受ける住民に寄り添い守るとともに、人権侵害の実態を記録する上でも重要な役割を果たした。抗議活動も重要な抵抗手段の一つだったが、ICEや国境警備隊の隊員によるさらなる不法行為に直面することも少なくなかった。
例えばシカゴでは、ブロードビューにあるICEの収容施設周辺が、ICEや国境警備隊の行動に対する抗議活動の拠点となっていた。牧師としての務めを行うためにたびたび同施設へ足を運んでいたデヴィッド・ブラック牧師は、「私たちはただ祈り、スローガンを唱えていただけなのに、ブロードビューでICEやCBPの暴力が激しくなっていく様は恐ろしいものでした」と語る。あるとき牧師がこの施設で礼拝を執り行い、施設の屋上に立っていた3人の連邦捜査官に悔い改めるよう呼びかけたところ、彼らは聖職者の衣服を身に着けていたブラック牧師に向かって、突然顔や腕、胴体に唐辛子スプレー弾を投げつけ破裂させた。牧師の話は、本報告書に記録されている数多くの体験の一例にすぎない。
報告書は、こうした過酷な移民摘発作戦でみられた数々の人権侵害を明らかにしている。アムネスティの調査員は、4つの地域で計154人に聞き取り調査を行った。それを基に、移民摘発作戦が異なる政治的・法的・歴史的背景を持つ地域社会にどのような影響を及ぼすかを分析し、記録された人権侵害は一部地域に限られた孤立した事案ではなく、全米で見られるより広範な構造的な問題を反映したものだという結論に至った。
トランプ政権が移民を犯罪者扱いし、悪者として描くことで生み出している痛みと苦しみは、看過できるものではない。この恐怖による支配を推し進めてきた政府当局者の責任は追及されなければならない。そして私たちは、残酷さではなく人権と尊厳に基づいた移民制度の実現に向けて、闘い続けなければならない。
アムネスティ国際ニュース
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