コートジボワール:トラフィグラ社、有害廃棄物の投棄から10年を経ても反省の色なし

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2016年8月23日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:コートジボワール
トピック:企業の社会的責任

多国籍商社大手のトラフィグラ社は、10年前にコートジボワールの首都アビジャンで廃棄した有害廃棄物の内容を公表すべきだ。

トラフィグラ社は、2006年8月19日にアビジャンの18カ所に廃棄した54万リットルの有害廃棄物に一体何が入っていたのか、一度も公表していない。投棄された廃棄物の影響で、10万人以上が様々な症状を起こし病院で診察を受けた。

21世紀で最悪の環境汚染から10年の間、トラフィグラ社と政府はその毒物の影響に苦しむ人々を放置してきた。

トラフィグラ社は、有害物質投棄に関して一度も本来の責任を問われてこなかった。もし投棄場所がロンドンの真ん中であったなら、大騒ぎになり、当然厳しく責任を問われただろう。しかし、この事件では、ロンドンの同社経営陣は西アフリカ最大の都市に必要な処置もせず有害物質の投棄を認めたのである。

トラフィグラ社の情報隠しで、住民の不安が続く

2012年、アムネスティとグリーンピースは合同調査報告書の中で、トラフィグラ社が有害物の中身を公表しないことでいかに除去作業や被害者の治療に弊害が出たかを指摘した。

アムネスティが今年6月、10年を機に廃棄物の内容を明らかにしてはどうかとトラフィグラ社に文書で尋ねたところ、「(2012年8月にアムネスティに)答えたこと以外で話すことはないし、これ以上話し合う意味もない」と回答した。

トラフィグラ社は、イギリスの裁判の中で廃棄物の中身は公表したと主張し続けているが、公表されたのは投棄の6週間前にアムステルダムの政府機関が行った分析の結果である。

トラフィグラ社はまた、「廃棄物は最悪でも一時的に軽い風邪のような症状や不安感を起こすだけだった」と、有害廃棄物の影響を矮小化してきた。しかし、この主張の根拠は、2009年のイギリス法廷での和解成立後、非開示となっている。

アムネスティとグリーンピースは合同調査で、被害者は呼吸器系の障害、激しい腹痛、消化器系の障害などの、様々な深刻な症状に悩まされた事実を公表したが、このことから、廃棄物には他の化学物質が含まれていたことが疑われる。

今年6月、アムネスティは投棄物質の影響を受けたアビジャンの住人38人に聞き取りをした。彼らは、近所の投棄場所に残留する化学物質を吸い込むため、病気が治らないと話した。
35人は、いまだに健康に問題があると話した。

コートジボワール政府は、患者らが長期的健康被害を受けたかどうかの調査をしてこなかった。

トラフィグラ社は、有害廃棄物は風邪ぐらいの症状しか引き起こさなかったと言っているが、その根拠は開示していない。もし当社に隠すことがないのなら、被害者が普通の生活に戻るために必要としている情報をなぜ公開しないのか。

トラフィグラ社、会社イメージの改善を模索

一方、トラフィグラ社は、ブランドを再構築し、透明性があり責任を果たす企業になったと説明している。

トラフィグラ社は、物流業界で責任あるリーダーというブランドイメージも打ち出そうとしている。昨年には11億米ドルの利益を上げた。2014年には物流企業として初めて「工業透明性イニシアティブ」に加盟した。同社CEOはこれを、「透明性と説明責任を果たしていることを示すものだ」という。
もし本当にそうであるなら、アビジャンに廃棄した有害廃棄物の内容物と、起こりうる住民の健康への影響をすべて公開すべきだ。やましいことがないのなら、なぜ情報を隠し、医療行為を妨げ続けるのか。

政府は企業犯罪を放置

過去10年間、いずれの国の政府も、同社に有害廃棄物の具体的な中身の開示を命令しなかったし、政府が違法投棄での同社の関与についてまともな調査をしなかった。

昨年8月、アムネスティは、英国政府による調査の不作為があったという衝撃的事実を公表した。
政府の担当者は、巨大企業に挑むための、法的な力も、資源も、専門知識もないと語ったのである。
悪質な企業は、先進国の法の弱点と政情不安定な紛争国の統治の弱さを食い物にしている。各国がこの大企業のエゴを許している限り、アビジャンの悲劇はいずれまた繰り返されるだろう。

アムネスティ国際ニュース
2016年8月19日