トークイベント「人権のいま ~新たな段階へ向かうCSR」を、世界人権デーである12月10日、アムネスティ日本の東京事務所で開催しました!

企業の社会的責任(CSR)をテーマとしたこのイベント。当日は48名の方にご参加いただき、そのほとんどが、企業で日々人権や環境問題に取り組んでいる方たちでした。

お忙しい中、足をお運びいただき、ありがとうございました。
 

国際的にも大きく変わり始めているCSR

2011年、「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合『保護、尊重及び救済』枠組み実施のために」が国連の人権理事会で採択されました。

この枠組みは企業がマネジメントという観点から人権を尊重すること、そして企業の人権への取り組みに関する情報開示を規定しています。
またこの枠組みは、各国政府、企業、市民社会、労働団体などから広く支持され、多くの企業の行動指針にも取り入れられています。

いま、CSRは国際的にも大きく変わり始めています。
企業は人権を無視した経済活動を行うことは許されず、むしろ人権状況を改善するため前向きに取り組むことが求められています。企業は社会から求められている役割を理解し、それを果たすことが急務となっています。

トークイベントでは、EY総合研究所株式会社・主研究員の牛島慶一さん、国連広報センター所長の根本かおるさん、そして事務局長の若林秀樹がそれぞれの視点からCSRを取り巻く現状や問題についてお話しいただきました。
 

「人権」という世界共通言語/牛島慶一さん

hrc4.jpgEY総合研究所株式会社・主研究員 牛島慶一さん

長年、日本で企業のCSR戦略に携わってきた牛島さんは、人びとが世界に共通した人権の概念を培うことの重要性を指摘されました。

「なぜ企業が人権を意識しなければならないのか。」

企業でCSRに取り組むなか、よくこのような質問をされるという牛島さん。この問いを投げかけられる度に、日本と国際社会の人権への意識のギャップに危機感を募らせるといいます。

日本では、人権は「思いやり」に近い感覚で捉えられ、国によって解釈が違うと考えられがちです。しかし国際社会では、人権はすべての人がもっている「権利」であり、それは世界共通の認識であると考えられています。

「日本の企業はよく人権は自分たちの事業には関係ないと言うが、クリーンな企業は一つもない。移民労働者問題、紛争鉱物、人身売買、環境汚染、人権侵害の懸念がある国での事業活動。企業であればこの5つの問題の内、必ずどれかには関与している」と牛島さんは言います。

国際会議では、「ビジネスと人権に関する指導原則」を無視した先進国企業の振る舞いへの非難が飛び交います。日本の企業が国際社会の中で取り残された存在にならぬよう、「『人権』という世界共通言語を身に着け、指導原則に沿った経営体制を築いていかなければならない」と牛島さんは訴えます。
 

「弱者」のもつパワーとバイタリティ/根本かおるさん

csr2.jpg国連広報センター所長 根本かおるさん

以前はUNHCRにてアジア、アフリカ諸国で難民支援活動に従事していたという根本さん。社会的弱者を企業の人材として取り込もうとするCSRの今後の可能性についてお話しくださいました。

私たちは、どうしても難民や障がい者のような社会的弱者の人びとに対して暗く悲しいイメージをもってしまします。しかし、これは大きな間違いで、彼らのように権利を奪われてきた人たちは、多くの苦難を乗り越え、力強く生きる術をもっています。

「日本の企業には、この『弱者』がもつパワーとバイタリティをもっともっと活用してほしい」と根本さんは訴えます。日本でも最近、ユニクロが難民インターン制度を採用し、ヤフーやYOKOGAWAグループが障がい者 の雇用を積極的にすすめるなどして、社会的弱者のもつ潜在能力を取り込もうとする企業が増えています。

「さまざまな社会問題を解決するうえで企業は国連にとってよきパートナーであり、日本の企業で芽生えつつあるこのCSRの動きを一緒に広めていきたい」と根本さんは語ります。
 

リーダーシップのある日本の企業を目指して/ 若林秀樹(アムネスティ日本 事務局長

csr3.jpg会場の様子

2013年4月、バングラデシュの縫製工場ビルが崩壊。死者数1,200人以上、負傷者数2,400人以上をだした事件は人びとを驚かせました。
崩壊したビルの縫製工場では、大手多国籍企業の製品が製造されていました。

この事件を受け、バングラデシュに進出していたZaraやH&M、Primarkなどの大手アパレルメーカーが、同国の労働者の安全や衛生面の環境改善を図る協定に署名。
しかし同じくバングラデシュに進出していた日本の企業は、事件への対応が遅れ、国際的に批判を浴びました。

日本の企業は、世界や市民社会から求められているCSRの基準を十分に理解しているとは言えず、目まぐるしく変化するCSRに対応しきれずにいます。

「日本の企業は国際的なCSRの取り組みにおいてイニシアチブをとり、世界の企業をリードできるよう変わらなければいけない」と事務局長は言います。

そして、日本の企業がリーダーシップを発揮していくには、まず企業が「人権」という世界共通言語を身につけ、またCSRの新たな可能性を積極的に模索していく必要があります。

 

これらの議論を通して、参加してくださった皆さまと一緒に企業に求められている役割、そして国連や人権NGOとの協働の意義を考えることができました。

当日会場にご来場頂いたみなさま、トークイベントを後援してくださったグローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク及び国連広報センターの皆さま、そしてご出演いただきました根本かおるさん、牛島慶一さん、ありがとうございました。

 csr_bottom.jpgスピーカー:(左から)アムネスティ日本事務局長 若林秀樹、根本かおるさん、牛島慶一さん

開催日 2013年12月10日(火)
開催場所 アムネスティ日本 東京事務所
主催 アムネスティ・インターナショナル日本

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