アムネスティ・インターナショナルは、世界中でまん延する拷問をなくすため、2014年5月、4度目となる「Stop Torture 拷問なんて、いらない!」キャンペーンを開始しました。

日本を含む世界中の200万人が参加したこのキャンペーンは、2016年5月に終了し、皆さまのご協力により、一定の成果をもたらすことができました。

【キャンペーン概要:期間2014年5月~2016年5月】

■ゴール:各国が拷問を防止するための具体策を講じること

■主な具体的な活動:
 ・拷問の実態の調査と報告書の発表
 ・各国政府に拷問を防ぐ施策を要請
 ・拷問被害者を救うための署名活動やイベントの開催

■重点国:メキシコ、ナイジェリア、フィリピン、モロッコ、ウズベキスタン

このキャンペーンがもたらした成果

この2年間、アムネスティが取り組んだケースは16件、内8つのケースで、被害者が受けた拷問の調査開始、加害者の処罰、釈放、無罪判決を勝ち取りました。

このキャンペーンで救われた人たち

■クラウディア・メディーナ・タマリスさん(メキシコ)のケース

アムネスティとともに拷問被害者の釈放に声を上げるクラウディアさん(中央)アムネスティとともに拷問被害者の釈放に声を上げるクラウディアさん(中央)

「一人では決してやり遂げることはできませんでした。これまで闘ってこられたのは、みなさんが支えてくれたから」

クラウディアさんは2012年、メキシコ海軍に拷問され、嘘の自白を強要されました。クラウディアさんには身に覚えがなく、無実を主張しましたが、検察は彼女を武器の不法所持罪で起訴しました。

アムネスティはクラウディアさんを救うために、世界中で署名活動を実施し、30万筆を超える署名を当局に提出。そうした活動が実り、2015年2月、クラウディアさんの起訴が取り下げられました。クラウディアさんは現在、同じような被害者をこれ以上出さないようにと、アムネスティとともに活動しています。

■モーゼス・アカトゥグバさん(ナイジェリア)のケース

「モーゼスさんに正義を!」と声を上げるアムネスティ・トーゴ支部のメンバー「モーゼスさんに正義を!」と声を上げるアムネスティ・トーゴ支部のメンバー

「勝利を導いてくれたアムネスティやその活動家の支援に感謝したい。みなさんは、僕にとってヒーローです。みなさんの努力を無駄にはしない。これからは、人権活動家として、人のために生きていきます」

医者を目指して学問に励んでいた、モーゼスさんは、16歳の時に、突如逮捕され、手を銃で撃たれた上に、警棒で身体中を殴られ、足と手の爪をはがされるという拷問を加えられました。強いられた自白を基に死刑判決を受けた彼は、2015年5月に州知事の恩赦で釈放されました。

■ジェリメ・コーレさん(フィリピン)のケース

ジェリメさん(左から2番目)とアムネスティ・フィリピン支部のメンバージェリメさん(左から2番目)とアムネスティ・フィリピン支部のメンバー

「感謝の言葉を何度繰り返しても足りない。みなさんからの手紙は僕と僕の家族を支えてくれました。『僕たちのために世界中の人が闘ってくれている』、『一人じゃないんだ』と勇気づけてくれました」

人違いで逮捕された上に、拷問でやってもいない強盗と殺人の容疑を認めてしまったジェリメさん。今年3月、2009年にフィリピンで制定された拷問禁止法に基づき、加害者の一人に懲役と罰金が言い渡されました。この法律によって有罪判決がだされるのは、ジェリメさんのケースが同国史上初めてです。

■イェセニア・アルメンタさん(メキシコ)のケース

世界中から届いた励ましの手紙を見て、喜ぶイェセニアさん世界中から届いた励ましの手紙を見て、喜ぶイェセニアさん

「権利のために闘うことは、どれほど素晴らしいことでしょうか。正義は必ず、実現するのです。私と同じような目にあった女性たちが他にもいます。決して闘いを止めてはいけません。」

複数の警官から、15時間に及んで、殴る蹴るの暴行を受け、強かんされたイェセニアさんは、「子どもを殺すぞ」と脅迫され遂に殺人の罪を認めてしまいました。2016年6月、4年間の刑務所生活から釈放され、家族と再会することができました。

政府までも動かした大きな力

このキャンペーンがもたらしたのは、個人の救済だけではありません。具体的な制度改革に向けて、政府を動かす力にもなりました。

■メキシコでは

拷問を禁止する法律が今年9月にも成立する見込みです。また、検察が拷問事件の捜査に特化した手順書を導入し、被害者の医学検査が国際基準に沿うような内容に制度を改善しました。最高裁判所も判事や司法機関向けに拷問に関する特別指令を出しています。そこには、アムネスティが発表した報告書の内容が反映されています。

■ナイジェリアでは

拷問禁止法案が議会で通過しました。残念ながら大統領が署名を拒否したため、現在、法案の見直しが行われていますが、キャンペーンで高まった市民の声は、拷問撲滅に向けた法整備を確実に推し進めていくことでしょう。拷問に関する国内委員会が収容施設を訪問するようになり、警察では人権に関するマニュアルが導入され、被害申立て機関の設立も決定されました。

■フィリピンでは

アムネスティの報告書を受けて、フィリピン議会は拷問の調査に乗り出しました。モロッコとウズベキスタンでは、具体的な制度改革は見られませんでしたが、キャンペーンによって、国連などの国際機関や他国の政府がこの問題を取り上げ、改善を求めるようになりました。

世界各地で行われたさまざまなアクション

このキャンペーンでは、拷問の実態を世界中に伝え、多くの人に「拷問なんて、いらない!」と声を上げてもらうために、各国で工夫を凝らしたさまざまなアクションが行われました。

日本では、署名活動のほか、6月26日「拷問被害者を支援する国際デー」に合わせたフォトアクションや、拷問に関するクイズ、活動家や実際の被害者、ジャーナリスを招いての講演会を実施。11,200名を超える方が参加してくださいました。

皆さま一人ひとりの行動が、拷問に苦しむ被害者とその家族を支え、政府を動かす大きな力となりました。ご参加、ご協力を、ありがとうございました!

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キャンペーンが終了しても...いまだに世界ではびこる拷問

国際社会が「拷問をなくす」ことを約束し、拷問等禁止条約がつくられて、30年以上が経ちます。しかし、自白や情報を引き出すため、あるいは相手が嫌いだからという理由で、警察や軍に暴力を振るわれたり、精神的に苦痛を与えられたりするという事件は、今も世界中で数多く報告されています。

収容者と弁護士、医者、家族との面会、取調べ中の弁護士の立会、人を拘束する施設への独立した監視制度、拷問の被害者に対する十分な救済など、各国が拷問を防ぐための施策をきちんと整備すれば、拷問はなくすことができます。

キャンペーンは終了しましたが、アムネスティはこれからも拷問撲滅を粘り強く訴えていきます。

ご寄付のお願い

こうしたアムネスティの調査や政策提言は、皆さまのご支援によって可能となっています。世界の人権状況をよいほうに変えていきたいという一人ひとりの思いがつながって、大きな力となります。 さらなる成果につながるよう、経済的なご支援をどうかお願いいたします。

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