米国:グアンタナモを閉鎖し、他の拘禁施設も公表すべき

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2005年7月 4日
国・地域:米国
トピック:「テロとの闘い」における人権侵害
アムネスティ・インターナショナル、アイリーン・カーン事務総長の見解
 歴史上多くの人びとが虐待に直面しながら沈黙を保ってきました。このような沈黙が、さらに多くの虐待を引き起こし、その免責を放置する結果を招いています。アムネスティ・インターナショナルは、このような人びとの列に加わるつもりはありません。

 世界149カ国における人権侵害を年ごとに評価した2005年・年次報告書をアムネスティが発表した際に、私たちは米国の項目において、様々な批判の中でも特に「テロとの戦い」における米国の行動に焦点を当て、起訴も裁判もないままの無期限の拘禁や拷問を批判しました。

 このことが米国政府の主要閣僚による前例のない反駁を引き起こしました。ブッシュ大統領を始めとして、ディック・チェイニー副大統領、コンドリーザ・ライス国務長官、ドナルド・ラムズフェルド国防長官、米統合参謀本部長であるリチャード・マイヤーズ将軍が反撃の発言を連ねました。

 2005年・年次報告書で我々が用いた言葉の意味は明確です。一部で解釈されたように、旧ソ連の強制労働収容所とグアンタナモとが鏡に映したように同じ虐待だと言っているわけではありません。私たちが主張しているのは、双方が共に、それぞれの時代での超大国による人権侵害の象徴だということです。

 グアンタナモでの被拘禁者に対する虐待は、米国の最良の価値観のみならず国際人権基準にとっても恥辱に他なりません。起訴も裁判も何らの機会も剥奪されたまま被拘禁者が事実上隔離拘禁されるような拘禁施設は、米国民をはじめ真実や正義、自由を大切に思う人びと誰もが非難すべきものです。

 米国の行為は、残忍な暴力を行使する武装集団にとって恰好の宣伝材料でもあり、そのような人々を法のもとで正当に裁かなければならないという必要性から人びとの注意をそらす結果を招いています。

 しかしグアンタナモだけではありません。それは虐待という氷山の目に見える一角にすぎず、それはアフガニスタンのバグラム空軍基地を始め、イラクの刑務所や他の場所に張り巡らされた一連の拘禁施設の最も悪名高い一部にすぎません。

これら闇に隠れた拘禁施設のネットワークから、虐待、拷問、殺人の証拠や申し立てが次々と漏れ出しています。国内外の批判にもかかわらず米国政府は十分な独立した調査の実施を怠っています。

 実際に、「テロとの戦い」という文脈の中で、尋問と拘禁に関する米国の方針とその実施は、各種国際条約に明記された拷問や虐待の絶対的禁止を意図的かつ組織的に違反するものであり続けてきました。ストレスを加える姿勢の強制をはじめ、長時間に亘る隔離、衣服の剥奪、犬をけしかけることなど、グアンタナモ湾での違法な取り調べ手段を許可した2002年12月の覚書きをラムズフェルド国防長官は自ら承認しています。

 国際的に合意された正義と自由の原則に対してこのように尊大な態度を取ることは違法であり、人権の体制を、さらには人権の擁護者たる米国の倫理的威信を、大きく傷つけています。同時に、拷問や残虐で非人道的かつ屈辱的扱いを含む、ある種の虐待は容認されるというサインを圧政をしいている各国政府に対して送っているのです。

 アムネスティは過去数年間に亘って数多くの報告を慎重にまとめてきました。米国政府関係者が「テロとの戦い」において行ってきた深刻な人権侵害に関して何百ページにも及ぶ証拠や申し立てを発表してきました。2005年・年次報告書発表に対する大袈裟かつ防御的対応とは非常に対照的に、米国政府はいずれの報告にもなにも答えていません。

 米国政府が攻撃は最大の防御なりと信じているのは明らかです。そんなことは問題ではありません。アムネスティは40年余に亘って人権侵害がどこで起ころうと、それを非難してきており、どのような種類、形態の政府からも攻撃されることには慣れています。そのことは普通、私たちがきちんと的を得ていることを示唆しているのです。

 問題なのは、米国政府がアムネスティの懸念の内容やその詳細に関して何ら対応していないことです。チェイニー副大統領がアムネスティなど重要ではないと言おうが、そんなことは問題ではありません。しかし副大統領や他の閣僚が人権など重要ではないというなら、それは大問題です。

 今起きている論議は米国政府にとって、言葉と現実のギャップを埋め、アムネスティや他の人権擁護団体が過去数年に亘って繰り返し強調してきた問題の内容に対処する用意があることを証明する、またとない機会なのです。

 ブッシュ大統領、課題は明確です。グアンタナモ拘禁施設を閉鎖し、被拘禁者を米国の法に基づいて米国の法廷で裁くか、さもなければ解放することです。また、他の拘禁施設を公表し、拷問、虐待を含む拘禁と尋問に関する米国の政策とその実施に関して十全で独立した調査の実施を支援することです。

 米国民が大いに誇る正義や真実、自由という基本原則を再確認すべきです。米国をして分裂した危険な世界に善をもたらす真の力になすべきです。

アムネスティ国際発表ニュース
AI Index: AMR 51/101/2005
2005年6月22日

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