大韓民国:移住労働者の搾取と虐待

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2006年8月17日
国・地域:大韓民国
トピック:難民と移民
「移住労働者も人間です。私の労働に対してなぜお金を払ってくれないのですか。一文無しでは国に帰れません。自殺を選択したのは他に方法がなかったからです。」
――2004年4月、刺繍工場で12時間の夜間勤務をしていた34歳の中国人女性チョンさんの遺書から

アムネスティ・インターナショナルの新しい報告によると、韓国内で、何万人もの移住労働者が、差別や搾取、ひどい労働状況に直面している。雇用主が給料を支払わないので違法に働かざるを得ず、また現在の法律が合法的に仕事を替えるのを難しくしているため、多くが借金の悪循環に陥っている。

韓国は、移住労働者の権利を法律で守ろうとした、アジアで最初の国である。しかし、「外国人勤労者の雇用などに関する法律」(雇用許可制、EPS)が2004年8月17日に施行されて2年、外国人労働者は依然として様々な虐待と労働上の危険にさらされ、これらに対し補償を得る可能性はほとんどないことがアムネスティ・インターナショナルの調査で判明した。

「韓国は移住労働者の保護を他のアジア地域に先がけて立法化した。政府は、後を絶たない賃金の未払い、転職への障害、また危険な労働状況などの問題に取り組み、最終的には、移住労働者が人間として扱われ彼らの権利が尊重されるよう保証するべきだ」とラジーブ・ナラヤン、アムネスティ・インターナショナル東アジア調査員は語った。

政府報告によると、2005年5月の時点でおよそ35万人の移住労働者(労働人口の1.5%)が韓国で働いていたと考えられる。労働者は中国、ベトナム、バングラデシュ、ネパール、フィリピン、インドネシアその他の国ぐにから来ている。

移住労働者は韓国人労働者より低賃金で極端な長時間労働に従事している。彼らは、職場において身体的または言葉によるかなりの程度の虐待を経験し、またしばしば危険な状況下で労働に従事している。

33歳のネパール人男性「BS」は、南部の都市大邱(テグ)のプラスティック製造会社、ミソン社で働いていた。
「2005年10月7日、左手の手袋がはり付いてプラスティック製造機に巻き込まれました。手を引き出すことが出来ませんでした。左肩が機械に巻き込まれそうになってようやく機械が止められました。骨が機械ですり潰される音が聞こえたそうです。機械が取り外された時、腕には肉も骨もありませんでした・・・、応急手当も受けられず・・・」
ミソン社は、まず事故を隠し、友人たちが警察に通報すると脅すまでは、BSの所在を明らかにするのを拒んだ。5ヵ月後、会社はBSの医療費の支払いを中止した。BSは今でも腕にひどい痛みがあり働くことができない。BSは自分の蓄えから治療費を支払わねばならず、補償金を受け取るまではネパールへの帰国を望んでいない。

「ほとんどの移住労働者は自分たちの権利について知識がないし、虐待を受けている人びとが司法手続に訴えようとすると、多くの障害に直面する。しかも、こうした虐待や差別から自らを守るために労働組合を組織しようとすると、当局の脅迫を受ける」とナラヤン調査員は語った。

多くの外国人労働者は祖国で斡旋業者に多額の金を支払っていて、その返済をしなくてはならない。しかし給料が約束より少なく、雇用主が期日に支払ってくれない場合がある。結果として借金ができ、多くの人が定期的に給料を支払ってくれる新しい雇用主を求めざるを得ない。

しかし雇用許可制は雇用主を替えるのを容易にしなかったため、身動きできない借金から、あるいは過酷な労働条件から逃れたりしようとする人びとにはほとんど選択の余地がなく、正規の書類なしで新しい雇用主の下で働くことになる。正規の書類を持たない労働者は,定期的な警察の取り締まりによっていつ逮捕されるかわからない状況に置かれる。国外退去に先立ち、彼らはしばしば過密状態で悪臭を放つ房に入れられ、言葉による虐待や殴打を受ける危険にさらされる。彼らは一日中監視され、いくつかの拘禁施設では男性監視員が女性の拘禁されている部屋を監視している。

「韓国経済は外国人労働者から多くの利益を享受している。その一方で、彼らは多くの場合において搾取、虐待され、ひどい扱いを受けている」とナラヤン調査員は語った。

韓国についてのアムネスティ報告書「移住労働者も人間である」は、http://web.amnesty.org/library/index/engasa250072006
でご覧になれます。

アムネスティ発表国際ニュース
2006年8月17日
AI Index: ASA 25/009/2006

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