大韓民国:差別禁止法案 今度こそ可決を

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2021年8月13日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:大韓民国
トピック:性的指向と性自認

(C) ED JONES/AFP via Getty Image
(C) ED JONES/AFP via Getty Image

韓国では、差別禁止法案が国会に提出された。法案が成立すれば、性的指向や性自認を含むいかなる理由での差別も禁止され、違反すれば処罰の対象となる。

韓国のレスビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、インターセックス(LGBTI)の人たちは、兵役中、中傷や嫌がらせ、暴力、そして犯罪とみなされることに苦しんできた。犯罪とみなされ軍刑法では同性間の性的関係は犯罪である。同性婚などのパートナーシップ関係も、法的に認められていない。

近年、韓国は人権保護で大きく前進したが、LGBTIの人たちや社会的弱者は、依然として社会から捨て置かれている。韓国の国会は今度こそ、画期的なこの法案を可決しなければならない。

アムネスティは、韓国の国会議員にこの法律を成立させるよう強く求める。同法の施行は、全韓国市民を差別から保護する国際的な人権義務の履行につながる上、アジア地域における平等の推進の旗振り役を果たすことができる。

背景情報

韓国の与党「共に民主党」のパク・ジュミン議員は8月9日、国会に差別禁止法案を上程した。現在、差別に関わる複数の法案が議会で審議されている。合意されれば、これらの法案はLGBTIの人たちを含む全市民を対象とする「包括的差別禁止法」として一本化される。

アムネスティはこの法案を歓迎するとともに、韓国の国会議員に対し、法案の包括性、強制力、実効性を保証するよう求める。人種、民族、国籍、言語、階級、宗教、信条、性別、ジェンダー、性的指向、性自認、性的特徴、配偶者の有無や家柄、年齢、障がいなどに基づく差別を禁止する必要がある。さらに、関係当局は、差別の被害者の訴えに耳を傾け、被害者を救済する仕組みを構築しなければならない。

韓国国会では過去14年間、差別禁止に関して数多くの法案が上程されたが、採択されていない。政府や国家人権委員会の勧告についても同様だ。今回の法案は、2007年以来、10回目の提出となる。

昨年6月、正義党は、他政党の議員の賛同を得て差別禁止法案を国会に提出したが、過半数の賛成を得られなかった。同法案は、昨年以前も何度か審議にかけられたが、LGBTI差別を禁止する条項で特に紛糾した。

韓国が批准する国際人権条約と同様に、同国の憲法でも差別を禁止している。しかし、差別、特にLGBTIの人たちへの差別は、さまざまな形で存在し続け、その一部は日常的な問題となっている。

韓国軍内でも、LGBTIの人たちへの差別が根強い。一般社会では、合意の上での同性愛行為は違法ではないが、軍では、犯罪とみなされる。徴兵制度があるため、ほとんどの男性は、軍で少なくとも1年半、LGBTIの人たちへの嫌がらせが日常化する環境に身をおく。軍刑法では、同性間の性行為は「セクハラ」とみなされ、発覚すれば最大2年の実刑を言い渡される。

また韓国では、新型コロナウイルスの感染拡大で、LGBTIの人たちに対する偏見が、一層浮き彫りになっている。陽性であることを知られたLGBTIの人たちが、メディアや周囲から、性的指向や性自認を感染拡大と結びつけられるという根拠のない差別的扱いを受ける事例が発生している。

国際人権法や国際人権基準は、国はLGBTIの人たちを尊重し保護する義務を負うと定めている。その義務には、差別を排除する政策や法律の施行も含まれる。

アジアでは近年、差別禁止の法制化に向けた動きが起こっている。タイでは2015年、ジェンダー平等法が成立し、台湾では、2019年に同性婚が法的に認められた。フィリピンでは現在、包括的な差別禁止法案が検討され、日本ではLGBTI差別に関する法制化の動きがある。

韓国での差別禁止法案の提出には、このようなアジア各国の差別禁止への機運が背景にある。

アムネスティ国際ニュース
2021年8月9日

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