大韓民国:デジタル性犯罪被害をさらに苦しめるグーグルの対応

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2022年12月20日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:大韓民国
トピック:女性の権利

韓国でデジタル性犯罪の被害にあった未成年者を含む女性が、グーグルに動画や画像の削除を求めても、その手続きが複雑でグーグルの対応が遅く、被害女性の苦悩は深まるばかりだ。

グーグルは、オンライン上の性的虐待の拡散を防ぐ対策を強化すべきだ。対策の強化は韓国に限ったことではなく、同様の問題が起きる可能性がある他国でも求められる。

アムネスティは12月8日、グーグルに対しオンライン上の性的虐待の通報制度の改善を求める活動を世界で始めた。

「n番部屋事件」後も増えるデジタル性犯罪

韓国のジャーナリストグループが2020年3月、メッセージアプリTelegram(テレグラム)の8つの極秘チャットルームで、女性や少女のわいせつな動画・画像数千本が本人の同意なく売られていると告発した。決済には暗号通貨が使われていた。警察の発表では、6万人以上がこのチャットルームに入り犯罪行為に参加していた。チャットルームには「1番の部屋」「2番の部屋」などと番号がつけられていたことから、「n番部屋事件」と呼ばれている。

2021年10月、チャットルーム運営者の1人が懲役42年を言い渡された。しかし、その後もこの種のデジタル性犯罪が後を絶たない。他の性犯罪と異なる点は、画像の共有と拡散が繰り返されることで被害が後々まで続くことだ。

最近あった事件では、加害者はすでにある動画を示して脅し、より過激な動画を強要することが常習化していた。つまり、元の加害者が処罰されたとしても、画像や個人情報が削除されない限り、女性・少女はさらなる被害や犯罪にさらされてしまうのだ。

機能不全のグーグルの通報制度

グーグルは、合意のないわいせつなコンテンツは、求めに応じて削除すると説明しているが、被害女性は、グーグルの通報制度はそもそも複雑で難しいと言う。

アムネスティ韓国支部の聞き取りに応じた被害者ら25人のうち11人は、「グーグルに削除依頼を送ったが、実際に画像が削除されたかどうかを確認することは簡単ではなかった」と話した。これは、グーグル側の被害者への説明不足によるところが大きかった。

さらに同社の対応の遅さにも問題があった。通報制度を利用して何度も削除依頼をした一人は、「グーグルから通報受理通知を受けてから対応報告を受けるまでに1年以上もかかった」と語った。

また、グーグルには削除手続きを進める際、被害者が抱えるトラウマへの配慮が欠けるようなところがあった。「申請に虚偽があれば、処罰されることがあることを理解する」という項目に同意を求め、また「記入もれがあれば処理されない」とする事項があるからだ。

被害者の一人は、「グーグルの説明は、不安を煽るだけだった」と話す。「面倒な手続きをして提出した。だけど、削除への期待より、もし申し立てが認められないと自分に非があるとされてしまうことに悩んだ」と話す。

その後女性は、なぜそのコンテンツが違法なのかを詳しく説明した模範文書を作成し、削除を求める時の参考になればと他の被害者に提供した。

また、グーグルは、削除依頼時に写真付き身分証明書の添付を求めているが、自分の画像をオンラインで共有することが怖い被害者に、辛い体験を思い起こさせるだけだ。

「二次被害では最悪」のグーグル

また、アムネスティは、別の被害者4人と被害者を支援する5人にも聞き取りをした。被害者は、汚名や偏見から逃れたいために誰とも関わりたくないという思いに駆られるなど、身体的・精神的な傷を抱えていた。

性的虐待とその画像がネット上で拡散し計り知れない被害を受けた上に、問題の画像の削除に時間がかかると知り、被害者はさらに苦しい思いをしている。

4人のうちの1人は、こう話す。

「加害者が動画をネットに置くのは簡単だったのに、削除には何カ月もかかる。今回のような被害に遭うと途方に暮れてしまう。一日中、携帯電話で自分の名前をググり、1日1時間しか眠れなかった。自分の画像の削除に何百ものスクショを撮ってグーグルに送らないといけなかった。現実が悪夢よりも大きかった」と。

利用者被害を防ぐためのテクノロジー企業の責任

すべての企業に人権を尊重する責任があることは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に謳われている。同原則は、「すべての企業は、自社の活動で個人の人権に悪影響を与えたり、悪影響に関与したりすることを回避し、また発生した人権侵害に対処する義務がある」と定めている。

グーグル自身も、人権に取り組む方針として、「ビジネスと人権に関する国連指導原則で確立された基準を支持する」と表明している。

しかし、デジタル性犯罪をめぐる被害者への遅々とした対応は、同社の人権の尊重姿勢に問題があることを物語る。グーグルは、通報制度を被害者中心のものとし、届出、操作、確認が容易で、二次被害にさらされることなく通報できるような仕組みにすべきだ。

グーグルには、オンライン上でジェンダーに基づく暴力が起きないようにする責務がある。デジタル犯罪の被害者は、グーグルに通報したことで救済されるべきであり、苦悩を引きずるような対応があってはならない。

アムネスティは11月11日、グーグルに本件の調査報告書を送り、同社の見解を求めたが、回答は得られなかった。ただ、非公開の会合の場では、「この問題は重要であり、対応方法を改善したい」と語っている。

アムネスティ国際ニュース
2022年12月8日

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