中国:中華人民共和国全国人民代表大会への公開書簡

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2008年2月27日
国・地域:中国
トピック:死刑廃止
呉邦国 全国人民代表大会常務委員長 殿

拝啓 
私たちは死刑廃止世界連盟(WCADP)と死刑に反対するアジア・ネットワーク(ADPAN)の構成団体として、ここに、貴職および同僚である人民代表各位に対し、来る全国人民代表大会において、中国における死刑廃止への確かな一歩を踏み出すよう約束することを要請いたします。

中国の司法制度は、毎年、数千人に死刑判決を言い渡し続けています。私たちは、最高人民法院が2007年1月1日以降すべての死刑判決の再審査手続を再開したことを歓迎するとともに、これによって前年と比べて死刑執行数が大きく減少したという最近の政府関係者の発言に注目しています。しかし、死刑に関する完全な全国統計はいまだに国家機密として取り扱われています。貴国がこれらの統計を完全に公表しない限り、中国の研究者やその他の独立機関が、今回の改革の及ぼした影響について研究することは不可能でしょう。私たちは、全国人民代表大会においてこの問題が議論され、死刑関連の情報を国家機密の範囲から明確に除外する国家機密法の改正案を採択されるよう要請します。

このような透明性が必要とされることについては、統計情報との関連のみでなく、個別の死刑の手続き上の公開性にも関わるものとして、複数の国連人権機関が強調してきました。数々の報告書が、死刑執行が死刑囚の親族への事前連絡なしに行われ、ときには親族による遺体引き取りが拒否されることすらあると指摘しています。中国では、家族や被疑者の代理人となる弁護人に対し、拘禁中の被疑者やその裁判手続きに関する情報に対し、十分なアクセスができない状態が続いています。とりわけ、被疑者から「自白」を得るために警察が拷問を広範に行っていることが懸念されます。貴国で過去に何度も証明されてきたように、性急で不公正な裁判は冤罪を生み出しやすいものであり、罪のない人が、犯してもいない罪を着せられて処刑されています。死刑に直面している被疑者や被告人のために、迅速かつ定期的な弁護人や家族へのアクセスなど基本的な公正な裁判基準を忠実に遵守しなくてはならないと、国際法は規定しています。私たちは、公正な裁判を受ける権利の保障、死刑を求刑されている人びとを含むすべての被拘禁者への拷問の絶対的な禁止、そして拷問によって得られた自白を排除することを目的とした刑事訴訟法の改正を決議するよう全国人民代表大会に要請します。

中国では、暴力を伴わない犯罪を含む68の犯罪に死刑が適用され続けています。2006年の全国人民代表大会において、ある人民代表が適用犯罪を減らすよう求める動議を提出したことを、私たちは歓迎します。今年の大会においてさらなる議論がなされ、中国における死刑廃止への重要な一歩として、経済犯罪や薬物関連犯罪など、暴力をともなわない犯罪を、死刑適用犯罪から除外するような刑法の改正につながるよう希望しています。

上述した改革は、長らく期待されながら中国当局がまだ批准していない自由権規約(ICCPR)に合致しているものです。それらはまた、北京オリンピック前に人権状況を改善するという、複数の中国政府関係者による公約にも沿っています。これらの課題は、人権と、オリンピック憲章の核心となる「人間の尊厳の保持」などのオリンピックの価値を守るために重要な意味を持っていると、私たちは信じています。

それゆえに私たちは、貴政府が、「近代的」で「人道的」な処刑方法として薬物注射による死刑執行を増やす予定だと発言したことに失望しています。薬物注射による処刑がけいれんと長く苦しむ死をもたらすという証拠が示されており、また、医療関係者が死刑執行に関与することは国際的な医療倫理に反しています。薬物注射はまた、死刑の本来的な問題の解決にはなりません。すなわち、死刑が残虐であり取り返しがつかないこと、無実の人を処刑してしまう危険があること、差別的かつ恣意的に適用されること、犯罪抑止の効果と関連性がないことなどの問題です。死刑が他の刑罰に比べてより効果的に犯罪を抑止するという証拠はありません。生きる権利は奪うことのできないものであり、人を殺す司法制度は、どのような処刑方法をとろうとも認められるものではありません。

死刑の廃止は、いまや全世界的で後戻りすることのない潮流です。2007年12月18日、国連総会において、死刑執行停止を求める決議は国際社会の圧倒的多数の支持を得ました。私たちは、貴国がこの決議に反対した数少ない国の一つであることに落胆しています。私たちは、中国で最高人民法院が再審理手続きを再開した2007年以降、死刑の執行猶予の数が、直ちに処刑された人の数を上回っていることを示唆した最近の政府関係者の発言に注目しています。死刑執行猶予の判決は、通常2年後には終身刑に減刑されるため、この制度が死刑執行の一時停止を導入するための実効的な枠組みになり得ないかを検討するよう、私たちは要請します。

中国に統合されて10年が経過した香港特別行政区は、アジアにおける一例を示しています。香港では死刑は1993年に廃止され、最後の死刑執行は1966年にまで遡ります。しかし香港は、犯罪率、とりわけ故意の殺人の発生率において世界の中でも最も低い水準を誇っています。

オリンピックを前に世界が中国に注目している現在、貴職と全国人民代表大会の代表者たちが全世界的な潮流に沿って死刑を廃止するリーダーシップを示すには絶好の機会であると、私たちは考えます。北京オリンピックによい意味の遺産をのこすには、貴国の死刑執行最多国という記録に終止符を打つことが不可欠です。

この書簡が全国人民代表大会における協議に役立つことを期待し、貴国のあらゆる人びとに対して、生きる権利と公正な裁判を受ける権利が保障されるための新しい施策が導入されることを心待ちにしています。

敬具
2008年2月27日
死刑廃止世界連盟(WCADP)
反死刑アジア・ネットワーク(ADPAN)

*アムネスティ・インターナショナルは、WCADPおよびADPANの構成団体です。
*英語の書簡はこちらからご覧になれます。

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