日本:足利事件再審が浮き彫りにする司法制度改革の必要性

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2009年10月21日
国・地域:日本
トピック:取調べの可視化
東京高等裁判所は 6月23日、17年に渡って収監されていた菅家利和さんの再審を認めた。菅家さんは栃木県足利市において4歳の少女を殺害した罪で有罪となり、1993年に無期懲役の判決を受けた。有罪判決は、主としてDNA鑑定と自白に基づくものであった。DNA鑑定は、弁護団の要請で日本大学法医学教室が行った新たな鑑定により、誤りであることが明らかになった。また、自白は公判中2度に渡って菅家さんが撤回している。再審公判は本日開始される。

検察は、再審公判において菅家さんの無罪判決を求める予定であると述べている。最高検察庁は、1990年の殺人事件の捜査と裁判の過程についての検証チームを設立することを表明した。

菅家さんは警察の取調べを受け犯行を自白したが、のちに自白は強要されたものであるとして撤回した。彼は新たなDNA鑑定と自白の信用性、新たに出た証拠に基づき、宇都宮地方裁判所に再審を請求した。再審請求は2008年2月13日に棄却された。アムネスティ・インターナショナルは、日本政府に対し、拷問や虐待によって得られた供述は、いかなる司法手続きにおいても証拠として採用しないことを保証するよう求める。ただし、拷問の容疑で起訴された者に対して、自白を強要した証拠として出される場合は別である。

菅家さんのケースは、新たに裁判員制度を導入した日本の司法手続きについて深刻な問題を提示している。日本の代用監獄(起訴前勾留)制度のもとでは、被疑者を起訴もないまま最長23日間身柄拘束することができる。この間に行われる尋問の時間についての規定や規則はない。取調べの様子も完全に記録されない。慣例として、弁護人は接見の許可を申請してから依頼人に会う許可を得るだけで2~3日かかり、また接見の時間がわずか15~20分に制限されることも珍しくない。日本の刑法には、そのような制限規定はない。

日本の刑事司法制度は自白偏重であり、自白は多くの場合、代用監獄制度の下で被疑者が勾留されている間に得られるものである。代用監獄制度は拷問や虐待を通して自白を得るために日常的に利用されている。アムネスティは、殴打や脅迫、睡眠時間のはく奪、早朝から深夜に渡る取調べ、被疑者を不動の体勢で長時間立たせたり座らせたりするなどのさまざまな方法を記録している。アムネスティ・インターナショナルは、代用監獄制度を廃止し、取調べの全面録画を導入し、取調べ中の弁護人の立会いを認めるよう日本政府に要請する。

1999年9月29日、久間三千年さんは福岡地裁において、1992年2月20日に起きた小学校女児2人の殺害の罪で死刑判決を受けた。判決は、菅家さんの裁判と同じDNA鑑定の方法に依拠しており、その方法は現在では精度の低さが明らかになっている。久間さんはDNA鑑定という「証拠」を突きつけられても無実を主張していたが、2008年10月28日に処刑された。彼の弁護団は死後再審を求めることを決めている。

2007年5月、国連の拷問禁止委員会は日本政府に対して、取調べ中の弁護人の立会いと、すべての取調べの録音・録画と、刑事裁判におけるそういった記録の公開が確実に行われるように勧告した。国連自由権規約委員会は2008年10月、日本政府への最終見解で、この勧告を再び繰り返した。しかし、政府はその勧告をいまだ実行に移していない。

アムネスティ発表国際ニュース
AI Index: ASA 22/011/2009
2009年10月21日