中国:今こそ、死刑廃止に向けた一歩を

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 日本支部声明
  4. 中国:今こそ、死刑廃止に向けた一歩を
2010年4月 5日
[日本支部声明]
国・地域:中国
トピック:死刑廃止
胡錦涛 国家主席 閣下
駐日中華人民共和国大使館 特命全権大使 程永華 閣下

現在、貴国が、麻薬密輸罪で死刑判決が確定した赤野光信さんに対する死刑を4月6日に、また同じく死刑判決が確定している武田輝夫さん、鵜飼博徳さん、森勝男さんに対する死刑を8日に執行する予定であると報じられております。

私たちは、アムネスティ・インターナショナルの会員とその他の多くの市民を代表し、貴国でのあらゆる死刑について強く反対するとともに、直ちに死刑の執行を停止するよう、貴国に要請いたします。

アムネスティは、貴国において、脱税や横領などの経済的犯罪や薬物関連犯罪など一部の非暴力的犯罪を含む、約68の犯罪に死刑が適用され、2009年も数千人の人びとが処刑されたと推計しています。

一方で貴国は、すべての死刑判決を最高人民法院が再審査する手続きを導入した2007年以降、死刑の判決と執行数は減少していると繰り返し主張しています。もしそうであるならば、何人に死刑判決を下し、何人の死刑執行を行ったのか、その正確な情報を公表するべきです。

アムネスティは、貴国が、社会の安定を乱すとみなした活動に対する厳格な対応を誇示し、政府の権威を強化するという、政治的な目的で死刑を用いていることについて、強く懸念しております。アムネスティは、今回予定されている執行を含む、薬物関連犯罪に対する死刑の適用も、同様の目的に基づいたものと考えています。その他にも、2008年3月にチベット自治区での衝突で逮捕された、2人のチベット人が昨年10月に処刑されました。また、昨年7月の新疆ウイグル自治区で起きた衝突に関連して死刑判決を言い渡されたウイグル人8人について、最高人民法院が異例のスピードで死刑判決を承認し、昨年11月に処刑されました。

さらに、貴国では、国際人権基準に沿った公正な裁判が行われていないとの報告が相次いでいます。拷問によって引き出された自白が証拠として認められています。検察側が有罪を立証するというよりもむしろ、被告人が無実を証明しなければならないことが多く、被告人が家族や弁護人に接見することも厳しく制限されています。さらに、中国全土のあらゆる拘禁施設で、拷問や虐待が行われています。刑務所や警察留置場などの国家施設での拘禁中の死亡事件が報告されていますが、その多くが拷問によるものです。

アムネスティ・インターナショナルは本日、貴国の死刑制度に関するこれらの懸念を踏まえ、貴国に以下の通り要請いたします。

• 死刑に関する秘密主義を止め、死刑の判決数や執行数など、死刑の適用に関する統計を全面的に公開すること
• 経済犯罪や薬物関連犯罪などの暴力をともなわない犯罪を、死刑適用犯罪から除外すること
• 公正な裁判を受ける権利を保障するとともに、死刑を求刑されている人びとを含むすべての被拘禁者に対する拷問の絶対的な禁止と、拷問によって得られた自白の排除を保障すること
• 恩赦に関する法手続きを導入すること
• 死刑の廃止を視野に入れて、あらゆる死刑の執行を直ちに停止すること

これらの要請は、国連の自由権規約や貴国が批准している拷問等禁止条約などの国際人権基準に合致したものであり、2007年および2008年に、国連で100カ国以上の圧倒的多数で採択された、全世界的な死刑の執行停止を求める総会決議に基づくものです。

アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対します。死刑は、生きる権利の侵害であり、究極的な意味において残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰です。死刑は、しばしば極めて不公正な裁判の結果として行われ、貧困層や少数派の人びと、人種的、民族的、あるいは宗教的集団に対して差別的に適用されています。

いまや、世界の7割の国ぐにが、この死刑という刑罰を拒否し、法律上あるいは事実上の廃止に踏み切っています。アムネスティは、貴国がこうした世界の声に耳を傾け、死刑の執行を停止することにより、死刑廃止に向けた一歩を踏み出すよう、強く要請いたします。

2010年4月5日

社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
理事長  藤田 真利子

101-0054 東京都千代田区神田錦町2-2 共同ビル(新錦町)4F
TEL. 03-3518-6777 FAX. 03-3518-6778

関連ニュースリリース