中国:新たな証言で必要性高まる新疆騒乱の調査

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2010年7月 8日
国・地域:中国
トピック:先住民族/少数民族
昨年、新彊ウイグル自治区で起きた騒動について、アムスティ・インターナショナルは中国政府に独立した調査を開始するよう要請している。アムネスティが入手した新たな証言は当局の事件に関する発表を疑問視させるものであるからだ。

2009年の中国の新疆ウイグル自治区における抗議に関する報告書「正義、正義を」(Justice, justice)を7月2日、アムネスティは発表した。報告書には新疆の首府ウルムチ周辺での騒乱の後に中国を逃れたウイグル人たちの新たに集められた証言が記載されている。

2009年7月5日およびそれ以後の政府の弾圧で、不必要な、あるいは過剰な武力の行使、大量逮捕、強制失踪、そして拘禁中での拷問や虐待が行われたと聞き取りを受けた人びとは証言した。

「政府の公式発表にはあまりに多くの疑問が残っている。実際には何人が死に、誰が殺したのか、どのようにして、またなぜそのようなことが起こったのか不明なままだ」とアムネスティのアジア太平洋副部長キャサリン・バーバーは語った。

7月5日の一周年を迎えるにあたり、移動と表現の自由への制限やウイグルの地域組織への規制など、新疆の治安は強化されている。

「調査活動を抑圧したり、外部からの扇動者を非難したり、恐怖を振り撒くよりも、中国政府はこの一周年を機に、騒動の原因となったウイグル社会において長年鬱積した不満についてのものをはじめとする適切な調査を開始すべきである」とバーバー副部長は述べた。

中国南部の工場で働くウイグル人が殺されたことに対して、政府が何もしなかったことへの抗議は平和的に始まったにも関わらず、治安部隊により暴力を受けたことを、7月5日の事件の目撃者は確認している。ウルムチから来た29歳の女性は次のように語った。

「・・・20台くらいの軍用車が到着しました。治安部隊は自動小銃を構えて抗議に参加している人びとを押し始めました。女性が治安部隊の方へ歩み寄りました。すると警官が女性を撃ったのです。女性は亡くなりました。それはとてもショックなことで、私はひどく脅えました。それからはすべてが大混乱に陥りました。」

その後、夜になって特に同都市南部のウイグル地区において、騒乱が起き、多数の死傷者を出した。中国の政府筋によれば、7月5日に197人が死亡したと伝えた。死者のうち156人が「無実の人びと」であり、その内の134人が漢人、11人が回族、10人がウイグル人で1人が満州人だったと伝えた。

ウルムチでの混乱と暴力事件の目撃者である22歳の男性は次のように語った。

「(7月5日)夜の8時頃にウイグル人のグループが私たちの家の前をとおり、南の方へ行き、道すがら車や建物を壊していました。そして、30分位した後、他のウイグル人グループがやってきました。彼らは走って逃げていて、その後ろを軍が追いかけていました。逃げる彼らの背中に向けて軍は発砲しました。多分3人のウイグル人が死んだと思いますが、三人とも背中を撃たれていました。」

「市民を保護するために当局に適切な準備がなされていたのか、また武力行使に頼ることなく状況を管理下に置くための適切な訓練と装備が当局に施されていたのか不明だ」とバーバー副部長は語った。

7月7日に漢族中国人に襲われたウイグル人を警察が保護しなかったいくつかの事例を目撃者がアムネスティに報告するなど、ウルムチでの暴力行為は一週間にわたって報告された。

中国は最近、社会の安定を図ろうと、新疆における開発計画案を承認したが、アムネスティは、新疆で公平と正義の双方を実現し、全ての将来計画とその実施において広く地域社会との協議を保証するよう中国政府に要請している。

「中国政府はこの問題の解決にお金をかけることで新疆を安定化しようと考えているが、ウルムチ暴動事件やその根本にある不満に対する信頼に足る独立した調査なくしては、憤りや不信感は払拭できないだろう」とバーバー副部長は語った。

暴動事件後に千人以上の人びとが拘禁され、おそらく何百人もの人びとが強制失踪させられた。当局の統計によれば、少なくとも198人が実刑判決を受けたが、その裁判の内容は公正な裁判の国際基準を満たしていないとアムネスティは考えている。9人の人びとが処刑され、他にも少なくとも26人が死刑判決を受けていることが知られている。

ウルムチの騒動に関与したすべての者が引き起こした人権侵害について、独立した公平な調査を開始し、この騒動に関する罪に問われているすべての者に対して、国際基準に沿った公正な裁判をはじめとする、透明性の高い司法手続きを保証するよう、アムネスティは中国政府に要請している。

背景情報

中国南部の広東省でウイグル人の移住工場労働者が殺害された事件に関して、警察が何ら行動を起こさなかったことに抗議する平和的なデモを警察が弾圧したことを発端として、2009年7月5日、中国北西部の新彊ウイグル自治区(XUAR)の首府ウルムチで暴動事件が起きた。当局の抑圧や差別によって長年にわたって蓄積されたウイグル人の不満を背景にして、この抗議活動は起こった。

拷問に関する特別報告官とマイノリティの権利に関する独立専門家をはじめとする数名の国連特別報告官が新疆ウイグル自治区を訪問させるよう要請しているが、これまでのところ中国当局はその要請を受け入れていない。

アムネスティ発表国際ニュース
2010年7月2日

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