- 2012年2月 6日
- 国・地域:大韓民国
- トピック:危機にある個人
朴ジョングン(24歳の社会党活動家)は、北朝鮮の公式Twitterアカウントから発信された、「キム・ジョンイル万歳」というメッセージをRTしたことが、韓国の国家保安法に違反したとして、1月31日に韓国の警察当局に起訴された。
朴ジョングンによると、このRTは北朝鮮のリーダーたちを支持するのではなく、嘲笑するものであったとのことだが、朴氏は1月11日からソウル拘置所に拘禁されており、最長7年の刑の可能性もある。
アムネスティのサム・ザリフィ太平洋部長は、「本件は、国家安全保障に関わる事例ではなく、韓国当局が皮肉というものを全く理解しない、嘆かわしい事例です」と述べた。
「平和的な意見表明を行なう者を拘禁することは、国際法違反ですが、本件のような朴ジョングン氏に対する罪状は、まさに滑稽で、即刻取り下げるべきものです」
朴氏が属する韓国社会党は、労働者搾取・労働組合禁止・非道極まりない労働条件での強制労働に対して、北朝鮮を頻繁に非難してきた。
「朴氏は、北朝鮮を公然と非難している政党に属する党員ですが、同氏に対する今回のばかげた事例は、長期に亘って韓国当局が国家保安法(NSL)の名の下に基本的な自由を制限し、市民社会の言論の自由を抑圧してきたことと無関係ではありません」とザリフィ部長は付け加えた。
警察は、朴ジョングンが北朝鮮のプロパガンダを流布したとして起訴した。朴ジョングンは「私が意図したことは、冗談で北朝鮮のリーダーたちをからかうことで、面白半分にやっただけです」とアムネスティに語っている。
「私は、ツイッターの北朝鮮のプロパガンダポスターを転送し、北朝鮮兵の笑顔を自分の暗い表情の顔に差し替えたうえに、その兵の武器をウィスキー瓶に差し替えたりもしました」
「私は北朝鮮の共産主義体制には反対ですが、北朝鮮の文化には興味がありますし、これを知る権利があります」とも、彼は述べている。
「国家保安法は、韓国における表現の自由に対して萎縮効果を及ぼします。国家保安法は、国の安全への脅威に対処するために活用されるのではなく、国民を威嚇して発言の自由に対する権利を制約するために利用されています。これは、人権法に沿って改定すべきで、もし政府がこれをできないのであれば、廃止する必要があります」とザリフィ部長は述べた。
1970年代から1980年代にかけて韓国が軍事政権下にあったとき、国家保安法によって、人びとは日常的に監禁されていた。拷問・自白強要・不当な裁判が、刑事司法制度内で当たり前のように行われていた。
韓国においては、軍事政権が終焉したにも拘らず、2008年以来、当局は、同国政府の北朝鮮の政策に対する批判者を攻撃するために国家保安法をますます利用するようになった。
韓国当局(とくに警察、検察と国家情報院)は、反対意見(とくに同国政府の北朝鮮に対する政策批判)を抑圧する道具として国家保安法を利用し続けている。
多数の人びとが「国に対する反逆を宣伝あるいは煽動した」として国家保安法により逮捕され、「反政府組織」活動を称賛、奨励または宣伝したとして有罪になり、最長7年間の刑の可能性に直面している。
「称賛」「奨励」「宣伝」という言葉の定義の基準は、解釈の仕方次第である。当局が「敵に利する」材料とみなす北朝鮮関連の材料を投稿した人びとに対する多数の調査が、現在進行中である。
アムネスティ発表国際ニュース
2012年2月1日
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