- 2012年4月26日
- 国・地域:ナイジェリア
- トピック:企業の社会的責任
2008年のパイプラインの故障により、6万9000人が住むナイジャーデルタのボド地域周辺の土地や入り江に、数万バレルの石油が流れ込んだ。
米国の調査会社、アキュファクツ社(Accufacts Inc.)による未発表の過去の調査によると、流出開始以来、ボド地域には、一日あたり1440から4320バレルの石油が流出した。当局の複数の取締官に確認したところ、流出は72日間続いた。
シェル社の公式な調査報告書によると、石油流出量は合計でわずか1640バレルだった。しかし、アキュファクツ社の調査を基にすると、72日間で流出合計は10万3000〜31万1000バレルにのぼる。
「この違いには、非常に驚きました。アキュファクツ社の数値の、たとえ小さい値を取っても、シェル社が繰り返し発表した流出量の60倍にのぼるのです」と、アムネスティのグローバル・イシュー担当ディレクターであるオードリー・ゴーグランは述べた。
シェル社による調査は、流出が「2008年の10月5日に始まった」と主張するが、当局取締官は「同年8月28日だ」としている。
まだ議論されていないのは、シェル社は流出がはじまったと主張する日から4週間、ナイジェリア規制当局が流出を確認してから10週間にあたる11月7日までの間、流出を止めなかったことだ。
「たとえシェル社のいう流出開始日を採用したとしても、シェル社が記録する流出量よりもはるかに多いのです」と、オードリー・ゴーグランはいう。
単位をリットルで換算すると、シェル社が集計する流出量は26万リットルを少し上回る。しかしアキュファクツ社の調査では、シェル社が主張する流出開始日から計算すると、最も少ない算定でも780万リットルになる。
他方、地域住民が主張する流出開始日と、算定の多い方の数字を見ると、ボドに流れた石油は、4900万リットルとみなすことができる。
アムネスティは、シェル社に対して、ナイジャーデルタの住民の生活や環境が石油流出で壊滅的な打撃を受けた事実の隠ぺいをやめるよう、世界中の人びとともに訴える活動をしてきた。この活動とアキュファクツ社の調査報告の時期が、偶然ではあるが符合した。
問題は、シェル社が被害をいかに低く見積もったか、ということだけに留まらない。シェル社は投資家、消費者、メディアに対して、石油流出の主な原因は、外部からの妨害があったからだと繰り返し訴えている。
シェル社は、石油流出の調査過程を主張の拠り所としているが、これは問題が多く、信頼性に欠ける。流出の原因、流出量、流出開始日をはじめとする重要な点の報告に信ぴょう性が乏しい。
ボドは一つの事例にすぎない。アムネスティと環境・人権・開発センターの調査は、世界で起きた他の流出でも深刻な問題点を明らかにした。
両団体は、石油流出に際しては、独自の調査を行うことを繰り返し要求している。また、石油会社が絶大な影響力を有する現状の調査過程の見直しを求めている。
シェル社は当初、2008年のナイジャーデルタ石油流出量の85パーセントは、何者かの妨害によるものだとメディアに発表してきた。後日、同社はこの数字には、操業ミスによる大部分の流出が含まれていないことを認めた。
アムネスティと環境・人権・開発センターが入手した新たな証拠によると、2008年にナイジャーデルタで起った流出の半分以上、ひいては80パーセントは操業ミスに原因がある。他方、流出調査過程に重大な問題があることを考慮すると、すべての流出を正確に把握するためには、別の機関が調査が行うべきである。
「ナイジャーデルタにおける妨害は重大な問題です。しかし、シェル社がこのことを正確な公表の隠れ蓑とするのはおかしい。正確な調査を、妨害しているにすぎません」とオードリー・ゴーグランはいう。
ボドの石油流出からすでに3年以上が経過しているが、シェル社は適切な汚染除去を行っておらず、影響を受けた地域への補償もしていない。ナイジェリアの司法に何年も訴え続けたのちに、ボド地域の人びとはイギリスで訴訟を起こした。
「シェル社のナイジャーデルタでの不法行為を示す証拠は、どんどん増えています」と環境・人権・開発センターのコーディネーターであるパトリック・ナーグバントンは述べた。「シェル社は汚染除去よりも、自社擁護の広報に力を注いでいます。これでは、汚染問題も、ボドの人びとの悲劇もなくなりません」
4月末、世界の何千人もの活動家が、14ヵ国以上で声をあげる。日本からスウェーデンまで、セネガルからアメリカまで、ひいてはシェル社の本国であるオランダや、イギリスまで、シェル社に汚染除去を行うことを求め、シェル社やガソリンスタンドで、イベントや抗議を行う。被害地域の住民が、ナイジャーデルタのシェル社事務所前で平和的なデモをする。これで最高潮に達する。
アムネスティは、シェル社に対してアキュファクツ社の調査報告へのコメントを求めた。シェル社は、現在法廷闘争中出るためにコメントできないと回答した。シェル社の回答の全文は、以下のリンク先から閲覧できる。
▼報告書『True tragedy』(英文)
http://www.amnesty.org/en/library/asset/AFR44/018/2011/en/ee69139f-5e19-4760-af62-b3cf0b0a8595/afr440182011en.pdf
アムネスティ国際配信ニュース
2012年4月23日
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