ナイジェリア:シェル石油汚染 今も苦しむ住民

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2020年6月30日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ナイジェリア
トピック:企業の社会的責任

(C)Michael Uwemedimo/cmapping.net
(C)Michael Uwemedimo/cmapping.net

ナイジェリアのギニア湾に面したナイジャーデルタ地帯で操業するシェル石油などが引き起こした大規模な石油汚染に対し、国連は2011年、調査結果を報告し除染勧告を出した。それからほぼ10年が経ったにもかかわらず、除染作業は一向に進まず、除染が始まったのは全体の11パーセントに過ぎないことが、4つのNGO団体の調べでわかった。

国連環境計画(UNEP)は、オゴニランド地区の石油会社が引き起こした環境汚染は壊滅的だとして、早急に除染作業をするよう提言した。しかし、NGOの調査で、国連が緊急を要するとして求めた措置は実行されず、2016年にナイジェリア政府が立ち上げた10億ドルの除染プロジェクトは、計画倒れであることがわかった。

オゴニランドでは、50年以上にわたり、石油・ガス採取による水や大地の大規模汚染が続いてきた。石油企業と国が除染に本腰を入れないために、住民数十万人は、深刻な健康被害にさらされ、飲料水を安心して飲めず、生業である漁業や農業も大きな打撃を受けた。

環境回復対策は本来、国の設立した機関の炭化水素汚染修復プロジェクト(HYPREP)が主導するが、その運営にシェル社が関わっているため、数々の利益相反が発生してきた。

シェル社は今後、この石油汚染問題で複数の訴訟の被告人として欧州の法廷に立つ。

6月23日には、英国最高裁で、ナイジャーデルタの2つの村が起こした訴訟の審理が始まる。ロイヤル・ダッチ・シェル社(英国とオランダに本拠)は数年にわたり、故意に油汚染を引き起こしたとして訴えられている。裁判所は、同社がナイジェリアの子会社、シェル・ナイジェリア社(SPDC)の操業に対する責任を負うのかという基本的問題の審理を進めるかを判断する。

4団体からのコメント

●Environmental Rights Action(環境権アクション)とFriends of the Earth Nigeria(FoEナイジェリア)

数十年に及ぶ油や水、魚、毒ガスなどの環境汚染に具体的な手を打たれなかったため、オゴニランドの住民は「もう真平!」と怒りを隠さない。さらに、国が汚染企業になんの法的措置もとってこなかったことにもうんざりしている。国はこれまでの失策を認め、HYPREPを再構築すべきだ。

●Friends of the Earth Europe(FoE欧州)

9年間、除染も健康衛生や水などへの対策も取られず、責任も明らかにされてこなかった。迅速な行動こそが正義だ。シェル社などは、環境汚染で悲鳴をあげる数万人を放置する一方で、見せかけの環境保護活動や寄付に熱心で、何百万ドルもの支払もいとわない。欧州各国は、ナイジャーデルタの環境汚染の責任を企業が取るよう行動を起こすべきだ。

●アムネスティ・インターナショナルナイジェリア支部

オゴニランドでの石油採掘は、地元住民に多大な苦悩を与え続けてきた。環境汚染は、住民の健康、食糧、水を得る権利を奪った。シェル社はもう逃げてはならない。私たちは、オゴニランドの土壌から石油一滴がなくなるまで闘う。

4団体の調査で明らかになった点

  • 汚染対応作業が始まったのは、汚染地域の11パーセントのみで、現在進行中の除染作業はその5パーセントでしかない。また、除染が終わった地域はない。
  • UNEPが特に緊急性を要するとした飲料水と健康問題についても、対応は不十分だった。清潔な水を得られない村がいまだにある。健康・環境のモニタリングも行われていない。
  • 2018年以降、3,100万米ドルの拠出金の使途が公表されていない。
  • 除染契約を結んだ16社のうち11社は、油汚染除去やその関連分野の専門技術を持っていない。
  • シェル社がHYPREPの除染運営委員会に関わったり、HYPREPに自社社員を出向させたりしているため、数多くの利益相反が起こっている。

ナイジェリア政府への要請

  • オゴニランドの住民が、水を安心して飲めるようにするなど、基本的な権利が保障されること。地域住民の参加を得ながら、油汚染の根本的原因を洗い出し、方策を立て、実行すること。
  • HYPREPの管理・運営からシェル社を排除し、独立した透明性のある機関にすること。
  • 除染プロジェクトに関わる組織と施策に関するすべての情報開示。

シェル社への要請

  • 油除染への対応の遅れや無策により住民が受けた被害に対する十分な補償。
  • 老朽化あるいは破損したパイプラインをすべて廃止。
  • オゴニランドを含むナイジャーデルタの除染が完了するまで拠出を継続。

石油会社の拠を置く欧州各国政府への要望

  • 企業の利益ではなく、ナイジャーデルタの除染を優先する姿勢への抜本的転換。
  • ナイジェリア政府への支援強化、UNEP勧告の実施、石油業界の監視、被災者への救済保障。
  • 海外で活動する企業の責任を明確にした国際的規定の作成。(義務として人権デュ-・ディリジェンスを求めるEU法や、法的拘束力のあるビジネスと人権に関する国連条約のような規定)

アムネスティ国際ニュース
2020年6月18日

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