- 2013年10月29日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:エジプト
- トピック:
抗議行動を取り締まるエジプトの新しい法案は、新たな流血を招く。もしマンスール暫定大統領がこの法案に署名すると、治安部隊による過剰な力の行使が認められ、追放されたモルシ前大統領の支持者を含めた平和的な集会の権利が恣意的に制限されることになるだろう。
この法案は、治安部隊が放水、催涙ガス、警棒を使用して無許可のデモを解散させることを認めている。具体的な説明のない「経済的利害」を守るため致死的な武力を行使することも可能となる。
7月3日以降、1300名以上が抗議活動中に死亡している。そのうち、治安部隊が力ずくで親モルシ派デモ隊を追い散らした8月14日には、カイロで483名が亡くなり、治安部隊側も9名の死者を出した。
治安部隊が抗議デモの有効な取り締まりができないために、モルシ支持、反支持勢力が路上で血なまぐさい衝突を起こしている事例を、アムネスティはいくつも把握している。
国際法では、エジプトは集会の自由を権利として擁護しなければならない。人命を守る、あるいは重傷者の発生を防止するために他の手段がない場合を除いて、治安部隊の致死的な武力行使はできないと国際法は定めている。
エジプトの法律は既に「公の治安」を脅かすデモ隊を解散させ、あるいは人命、財産、インフラを保護するためとして治安部隊の実弾発射を認めている。
また新法により、デモの呼びかけ人たちはさらなるお役所的な障害に直面することになる。当局が、「治安あるいは公共の秩序」、「市民の利益の阻害」、「交通の妨げ」といった曖昧な理由でデモ計画を恣意的に認めない圧倒的な力を手にするからだ。
実際に運用されれば、当局はこの法律を盾にモルシ支持者、あるいはムスリム同胞団のあらゆるデモを禁止するであろう。
集会の自由に関して、国連の専門家は「国は、抗議者が最良の方法として平和的な集会を意図していることを前提とする」よう勧告している。平和的な集会と結社の自由の権利についての特別報告者も「基本的な諸権利は当局による事前許可制を前提とせず保障されるべきで、必要ならば事前届け出程度の手続きにとどめるべき」と述べている。
1日以上の座り込みや礼拝の場でのデモを禁じるなど、この法案は集会の自由を厳しく制限している。モルシ支持者たちは、元大統領が7月に追放されて以降しばしば礼拝の場に集まっていた。
モルシ政権下でも当局は、デモ組織者にお役所的な制約を課すデモ関連法案を討議するとともに、デモを延期させ、公の集会を一律に禁じる権限を知事達に与えている。
国際法と国際基準に十分に則っていない法案に、マンスール大統領は署名してはならない。この法案を破棄するか、立案する委員会に差し戻すべきである。
当法案は10月10日に内閣で承認され、マンスール大統領の署名を待っている。
アムネスティ・インターナショナル声明
2013年10月18日
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