エジプト:過密で感染対策もずさんな刑務所

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2021年2月 2日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:エジプト
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(C) AFP via Getty Images
(C) AFP via Getty Images

エジプトの刑務所では、良心の囚人(※)や政治的な理由で収監されている人びとが、残虐で非人道的な扱いを受け、体調を崩しても治療が受けられない過酷な状況に置かれている。刑務所側による非情でずさんな扱いが、どれほど囚人の健康悪化や死につながっているか、アムネスティの調査で明らかになった。

アムネスティは、7行政区の16の刑務所に拘束されている、または拘束されていた67人について調べた。2019年と20年の2年で、67人のうち10人が拘禁中に亡くなり、2人は釈放直後に死亡している。

大規模な反政府デモで長期独裁政権に終止符を打ったエジプト革命から10年、調査で浮かび上がったのは、各地の刑務所は、社会的、政治的正義を求めて闘ってきた人びとであふれ、彼らが危機的な人権状況に置かれている状況だ。また、新型コロナウイルスの感染大流行にありながら、囚人の感染防止策を取らないという当局の許し難い職務怠慢だ。

いずれの刑務所も過密状態にあり、囚人が体調を崩しても放置される。食料品、医薬品、身の回り品は、囚人の家族が面倒をみるものとされている。

残虐で非人道的な拘禁

調査した16の刑務所の囚人は、残虐で非人道的な状況に置かれ、健康に対する権利を脅かされている。囚人は、過密で換気がなく不衛生な監房に入れられ、寝具や衣類、食料、衛生用品なども十分に提供されていない。多くが、家族との面会を禁止されている。

刑務所当局は、時に国家安全保障局の命令だとして、政府の批判者とみなした特定の被拘束者を対象に、懲罰的措置を取っている。その事例には事欠かない。1日丸24時間近くも独房に監禁する、4年もの間、家族との面会を認めない、家族からの食料などの差し入れを渡さない、などだ。

医療を受けられない

職務怠慢にせよ意図的にせよ、囚人に対し適切な医療を提供していないことが、常態化している。

刑務所内の診療所はおしなべて不衛生で、設備や医療従事者は不足し、症状に関わらず処方されるのは、鎮痛剤だけだ。医者から罵倒された者もいる。調査した2人の女性は、医療従事者に性的嫌がらせを受けたと語った。

医療処置がすぐに必要な場合でも、反政府派とみなされれば、外部の病院に搬送されないことがしばしば起きる。当局には、人権擁護活動家らへの医療処置を拒否し、激しい痛みや苦しみを引き起こす狙いがある。意図的な処罰であるとき、その行為は拷問に相当する。

2011年の抗議デモの指導者だった元議員も、基礎疾患の定期治療を受けられなかった。2018年2月から収監されている元大統領候補者は、糖尿病などの基礎疾患を抱えるが、度重なる要求にもかかわらず、外部の病院での治療を受けられなかった。刑務所内の医師の診察も著しく制限されていた。検察に対応の改善を訴えたが退けられた。

被拘束者の死

アムネスティは、拘禁中または釈放後に亡くなった12人の死について調べた。その他、2020年に37人の死亡を確認したが、当局の報復を恐れる家族の同意を得られなかったため調査は控えた。過密で不衛生に長期間置かれ、医療放棄という極めて劣悪な環境が、死につながったのではないかと思われる。

また、当局は被拘禁者の死亡について公表や調査を拒否しているが、現地の人権団体は、2013年から数百人が亡くなっていると推定している。

大量拘束と過密な刑務所

エジプト当局は囚人数を公表していないが、昨年12月にアッ=シーシー大統領が示した刑務所の収容能力は5万5,000人で、その約2倍の11万4,000人が収容されていると推測される。2013年7月に故モルシ元大統領の失脚で、被収容者数は急増し、過密状態に陥った。16の刑務所では、数百人が過密な監房に詰め込まれ、1人あたりのスペースが平均で1.1平方メートルと推定される。望ましいとされる最低3.4平方メートルをはるかに下回る。

新型コロナウイルス感染拡大の中、収容者を減らすよう求める声が上がったが、無視され、被拘禁者の健康リスクはさらに高まっている。一方で、大統領恩赦などでの昨年の釈放者数は、一昨年より4,000人も減っている。

お粗末な感染対策

刑務所当局は、石鹸や消毒液、タオルなどの定期配布、新規入所者の追跡と検査、感染と疑われる場合の検査と隔離などの対策を取っていない。過密な監房では、他人との物理的距離を確保することもできない。

また、感染症状があっても、検査を受けられない。一部の刑務所では、暗く小さい独房に隔離されるだけで、満足な治療は受けられない。他の刑務所では、感染が疑われても雑居房に入れられたままで、いつ感染者集団が発生してもおかしくない状態だ。

刑務所の監督不在

刑務所当局は、第三者による監督を受けていない。検察官は、予告なく刑務所を視察する権限を持つが、実施はまれで、囚人の申し立てがあっても耳を貸すことはない。

抗議のハンストに入った囚人は、脅迫や暴行を受ける。抗議の声を上げる家族は拘束される。人権擁護活動家や弁護士は、脅迫されたり、拘束されたりしている。

当局は、即時に監房の過密を解消する対応を取るべきだ。恣意的に拘束されている囚人、また、感染すると重症化が懸念される高齢や基礎疾患を持つ人たちを釈放すべきだ。さらに全員が、ワクチン接種を含む必要な医療を受けられるようにしなければならない。

当局は、より多くの命が失われる前に、第三者の専門家に刑務所内の無制限の視察を認め、彼らとともに過酷な拘禁状況の改善に取り組まなければならない。

※良心の囚人:アムネスティは、良心に基づく信念、信仰や人種、性的指向などを理由に、不当に拘束されている人たちを「良心の囚人」と呼ぶ。

アムネスティ国際ニュース
2021年1月25日

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