- 2014年10月 2日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:カンボジア
- トピック:難民と移民
カンボジアでは強制立ち退きによって何千人もが苦しんでいる。オーストラリアは、こうした人権侵害を強く非難していた。(C) Omar Havana/Getty Images
オーストラリアで庇護を求める人びとは過酷で非人道的扱いを受けてきたが、それを悪化させる協定がオーストラリアとカンボジア両国で結ばれた。オーストラリアにいる難民を、人権が保障されていないカンボジアに移送するというものだ。
協定は9月26日に、プノンペンでカンボジアの内務相とオーストラリアの移民・国境保護相との間で調印された。オーストラリア政府は、最も弱い立場の難民の保護よりも目先の政治的利益を優先させたということだ。
またカンボジアは、人権侵害と国外での難民審査で深刻な問題を抱えるオーストラリアに加担することになる。
協定の文面に透明性が欠けていることに対して、両国内には多大な憂慮がある。市民社会には、国際的人権基準の視点から議論に参画する機会も、反対意見を述べる機会も与えられなかった。
アムネスティなどの国際的人権団体は、オーストラリアの難民移送先としてカンボジアが妥当なのか、大きな疑念を抱いている。カンボジアの人権状況には問題がある。表現・結社・集会の自由が著しくないがしろにされている現実がある。例えば、治安部隊がこの1月、ストライキ中の労働者と活動家を暴力的に弾圧した事件や、土地に関わる強制立ち退きや係争、強奪などで何千人もの住民が被害者となっている。
オーストラリア政府はこの1月、人権に関する国連の聴聞会の場でカンボジアのこれまでの人権侵害を厳しく非難していたにもかかわらず、同じ政府が弱者である難民をカンボジアに移送しようとしている。子どもも対象になるかもしれない。難民が新しい土地できちんと定住するには、受入国側の十分な支援を必要とする。支援には高度な知識を持つ専門家と連携の上でのさまざまなサポートが求められる。とくに子どもについてはそうである。そのようなサポートがカンボジアで可能だとは思えない。
背景
両国間の合意で移送されることになる難民の多くが、すでにオーストラリアの国外収容施設で劣悪で屈辱的な状況におかれてきた。アムネスティはこの政策が人権侵害と虐待の温床になっていることを明らかにしてきた。国際的な難民保護基準は、オーストラリア政府に庇護希望者が同国で国際基準を満たした保護を提供することを義務付けている。
アムネスティ国際ニュース
2014年9月25日
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