カンボジア:世界遺産委員会はアンコールワット周辺の強制退去問題に対応を

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2023年9月19日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:カンボジア
トピック:強制立ち退き

9月にサウジアラビアのリヤドで開催される世界遺産委員会で、世界遺産のアンコール遺跡周辺での強制立ち退きの問題についての議論が欠かせない。同委員会の開催を前に、アムネスティはこの立ち退き問題を調査した報告書を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出した。

世界遺産委員会は、カンボジア政府がアンコールワット寺院周辺の約1万世帯を立ち退かせてきた問題を看過してはならない。これは、遺跡保護に名を借りた強制立ち退きにあたる。

カンボジア政府は、立ち退きの対象は「不法居住者」であり、「伝統的な村落」ではないと主張する。しかし、アムネスティの調べで、国は合法的居住基準を明確に示していなかったことが明らかになった。強制退去を受けた住民の多くは、「家族代々アンコールに住み、自分たちの居住地は伝統的な村だ」と訴えていた。

また、これらの家族の再定住先の環境が極めて劣悪なことも明らかになっている。家屋や水道、トイレが整わず、自分たちで家を建てざるを得ない。これでは、再定住地には飲料水、住居、衛生施設などの設備が不可欠だとする国際人権基準に違反する。

アムネスティはこの3月、アンコール地域の住民が当局から立ち退きを迫られ、指定地域へ転居する事例を報告した。それ以来、立ち退きを受けたか受けそうな住民100人以上に聞き取りをした。そして、聞き取り調査結果をユネスコと世界遺産センターに提出した。アンコールワットの位置づけの議論が予想される世界遺産委員会(リヤド)が控えているからだ。

強制立ち退きは、何世代にもわたりアンコールワットで暮らしてきた家族を引き裂き、その生活と生計を奪ってきた。また、借金を抱えた住民に借金地獄と困窮に追い込んできた。

政府は住民の強制立ち退きを停止し、適正な転居手続きを取る必要がある。また、再定住地は国際人権基準で定められた要件を満たさなければならない。

世界遺産委員会がアンコール遺跡を議論する際、遺跡保全のために人権が蔑ろにされるようなことがあってはならない。同委員会はカンボジア政府に対し、国際人権法と基準が定める義務を守るよう強く求める必要がある。

背景情報

世界遺産委員会は、歴史的遺産を世界遺産リストに登録するかどうかの最終決定権を持つ。世界遺産の候補の保全状況に関わる記録文書を精査し、管理が不十分な場合には候補国に対応を求める。

アンコール遺跡は1992年に世界遺産に登録された。

アムネスティ国際ニュース
2023年9月10日

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