カンボジア:森林パトロール禁止から1年 増え続ける違法伐採

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2021年3月 3日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:カンボジア
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(C) Amnesty International
(C) Amnesty International

多くの野生生物の貴重な生息地である広大なプレイロング森林地帯が今、重大な危機に直面している。1年前に野生生物保護区内のパトロールなどの環境保護活動が禁止され、大規模な違法伐採が横行しているからだ。森を守る環境活動家の抑圧が続いていることも、森林保全の足枷になっている。

アムネスティが画像や観測データを分析したところ、保護区内での違法伐採と森林開拓が加速化し、新たな道路も建設されていることが明らかになった。違法伐採は、プレイロング森林破壊の最大の要因だ。当局は、これ以上の森林破壊を食い止めるためにも、環境保護活動家に森林内パトロールの再開を認めるべきだ。

先住民族らで構成されるプレイロング・コミュニティ・ネットワーク(PLCN)は、毎年、森林の恵みを祝う恒例行事を実施してきたが、昨年と今年は環境省から実施の許可が下りなかった。この1年は、野生生物保護区のパトロールも禁じられた。森林パトロールや恒例行事の禁止は、プレイロング森林の保全や先住民族の権利保護の否定につながる。

およそ50万ヘクタールのプレイロング森林は、インドシナ半島最大規模の熱帯低地常緑樹林だ。2016年、森林の多くが野生生物保護区に指定された。プレイロング森林とその周辺には、25万人以上の人びとが生活を営み、そのほとんどが先住民族クイの人びとだ。プレイロングの森は、クイの人びとにとって欠かせない存在なのだ。

続く違法伐採

森林の衛星画像は、違法伐採の横行という憂慮される問題を投げかけている。2月5日に撮影された映像では、1年前にはなかった開拓地や道路が見られ、それらの開拓地や道路には、丸太が山積みされているのが確認できる。

メリーランド大学が開発した森林破壊アラート(警報)でも、この1年で大規模な森林開拓が行われたことがわかる。プレイロングは2019年、7,511ヘクタールの森林を失ったが、消失面積は前年より73パーセントも増えている。

法律上では、保護区の伐採は禁止され、絶滅危惧や需要の高い木の伐採には高額の罰金が科されることになっている。

環境保護活動家への圧力

この1年、環境保護活動をする人びとは、活動への報復として当局の摘発を受けてきた。今月初め、環境省の職員が、違法伐採の状況を調査していた活動家5人を拘束した。5人は、3日後釈放されたが、その際、環境省の許可を得てから森林に立ち入ることを誓約する書類に署名させられた。

複数の草の根グループは、「結社と非政府組織に関する法」の規定通りに団体名を登録していなかったとして、違法団体とみなされた。2015年に施行された同法は、市民団体の活動を制限し、団体を処罰するために適用されており、同法を問題視する意見は多い。この数カ月は、若い環境活動家が摘発の対象となっている。昨年9月、活動家3人が逮捕されて扇動罪で起訴され、今も拘束されている。

地域社会と先住民族は、国内法と国際人権法で保護地域の持続可能な管理と保全に参加する権利を保障されている。また、国際人権法により、伝統的な土地利用、地域の慣行、信条、信仰の行使の権利も保護されている。

カンボジア当局は、環境活動家、先住民族の権利活動家、また彼らが関わる団体への嫌がらせや圧力を直ちにやめるべきだ。また、プレイロング野生生物保護区のパトロールを認め、地元の人びとが持続的に活動できるよう支援すべきだ。先住民族と森林保護活動家の権利の尊重は、プレイロングの森林保護に欠かせない。

新エネルギー事業

昨年12月、カンボジア鉱山・エネルギー省は、首都プノンペンからラオスとの国境まで、長さ299キロの架空送電線を建設する契約を結んだ。計画では、送電線はプレイロング森林を2分する形で架けられるため、鉄塔の建設による森林破壊は避けらないと懸念される。

当局は、現行の建設計画を一旦白紙にし、森林を破壊しない代替ルートを再検討する必要がある。プレイロング森林とそこに住む人びとの人権を守る代替案は、必ず見つかるはずだ。大切な森林と住民の権利に配慮した建設でなければ、広大な自然もそこで暮らす人びとも取り返しがつかない打撃を受けることになるだろう。

アムネスティ国際ニュース
2021年2月25日

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