スペイン:法改正は市民そして移住者・難民の権利と自由を広く弾圧

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2015年4月 2日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:スペイン
トピック:

スペインでは2つの法令に対する改正案が下院を通過したが、この極端な改正内容は、市民の権利への攻撃であり、移住者と難民に対する虐待行為を正当化するものだ。

刑法と治安法の改正によるダブルパンチで、平和的な集会、結社、表現の自由の権利は制限されることになる。また改正により新しいテロ対策が導入され、モロッコにあるスペイン飛地領、セウタとメリリャからの移住者と難民をモロッコに送還するという不法行為が、合法化される。

移住者と難民の不法な送還を合法化

治安法の改正は入管法の修正で、即日施行される。新しい管理制度を導入することで、セウタとメリリャへ国境を越えて入国しようとする移住者や難民を、自動的にまとめて排除することが合法的にできるようになる。新制度の俗称は「国境拒否」だ。

正規の手続きもなく、即時にモロッコに追い返すことは、移住者と難民がスペインで庇護手続きを行う権利を否定することであり、国で待ち受ける人権侵害という危険にさらすことになる。

改正案では、国境拒否は「国際的な人権と国際的な保護の規定に従って運用される」と確約しているが、空々しく聞こえる。そこには、国境を越えようとする人びとが入国を拒否されたとき、さまざまな権利がどのようにして守られるかが、抜けている。

テロ対策法

刑法の改正案では、テロとみなされる犯罪の範囲が拡大されている。その定義はあいまいで、犯罪の種類は多岐にわたっている。

武装グループと行動をともにするため、あるいは一緒に訓練を受けるために、出国やその計画の疑いがあれば、実際に訓練や犯罪行為を行わなくても、非合法とみなされる。

インターネット上に暴力的な攻撃を行うよう他人を扇動したとみなされる投稿をした場合は、投稿が暴力行為に直接結びつかなくても非合法となる。

こうした規制は、表現・結社の自由の権利、無罪推定、移動の自由、プライバシーの権利、自国への入出国の権利を脅かす。

ここ数年、暴力的な攻撃を受け政府が過剰な規制をかけ、法と実務の乱用を招いている例が散見される。

スペインはこの教訓に留意し、新しい施策が絶対に必要かつ適切であり、人びとの安全を守るという明確な目的があり、人権を尊重するものにしなければならない。今回の改定案はこうした条件を満たしていない。

抗議行動、表現と平和的な集会の自由の制限

治安法の改正はまた、平和的な集会と表現の自由の権利を過度に制限するものでもある。いくつかの合法的抗議手段を犯罪とし、犯罪でなくても罰金を増額している。

新たに加わった条項は、デモの場所と時間を規制し、特定の場所での自然発生的な集会を禁止し、集会を組織した人たちに罰金を科す。

警官には、「無礼」を働いたものに対し、手続き上の保護措置なしに罰金を科すことのできる広い裁量が与えられる。同様に、警察の行動をビデオ録画することは制限され、映像を拡散した者には最高3万ユーロの罰金が科せられる。近年、公共のデモを記録した映像は、警察が過剰な武力行使などで人権を侵害したことを立証するには欠かせないものとなっている。

新しく犯罪となったものも、犯罪の定義に変更があったものも、定義があいまいであるため、国際人権法が保護する行為にも適用される可能性がある。この意味で今回の改正は、一貫性、明確性、正確性を求める法的安定性の原則を満たしていない。

アムネスティ国際ニュース
2015年3月26日

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