- 2016年1月25日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:コンゴ民主共和国
- トピック:企業の社会的責任
アップル、サムソン、ソニーなど著名なエレクトロニクス企業は、児童労働など不当に採掘されたコバルトが自社の製品に使われていないかどうかを認識していない。アムネスティ・インターナショナルとアフリウォッチは1月19日、調査報告書の中で明らかにした。
This is what we die for: Child labour in the DRC cobalt mines
リチウムイオン電池に使われる部品、その部品に欠かせないコバルトがどの国の鉱山で採掘されているのか、そのルートを追った。その鉱山では、7才の子どもから成人までが、苛酷な労働環境で酷使されている現実があった。
仲介業者は、児童労働が日常化する鉱山からコバルトを買い取り、それを中国の鉱業大手、浙江華友コバルト社の子会社、コンゴ国際鉱業(CDM)に売りさばく。そのサプライチェーンの実情をこの報告書で明らかにした。
サプライチェーン情報は、各社の投資家向け資料に当たった。華友コバルトとCDMは、精製などの処理後のコバルト原料を、中国と韓国にあるバッテリー部材メーカー3社に供給し、3社は原料から電極などの部材を制作し、バッテリーメーカーに卸す。そして、バッテリーは、アップル、マイクロソフト、サムソン、ソニー、ダイムラー、フォルクスワーゲンなどのエレクトロニクスや自動車メーカーに提供される。
いずれのメーカーも、そのマーケティングは最先端を走り、店舗はおしゃれだ。それらのイメージからは、鉱石袋運びを強いられる子どもたちや、有害の粉塵が舞う窮屈な坑道で長時間の採掘作業を強いられる人たちの姿は、想像できない。
アムネスティは、そのバッテリーメーカーの顧客である多国籍企業16社に、華友コバルトとの取引の有無を問い合わせた。「取引がある」としたのは1社、「取引がない」は5社、「調査中」は6社、「わからない」が4社、「コンゴ民主共和国原産のコバルトは使用していない」が2社だった。ただ「取引がない」とした5社の名前は、華友コバルトが発行する資料の顧客リストには掲載されていた。また、製品に使われているコバルトの原産地をどう調べるのか、明確に答えられた企業は一社もなかった。
犠牲者が絶えない鉱山事故と児童労働
世界で全コバルトの少なくとも50%はコンゴ民主共和国で採れる。同国の鉱物精錬大手がCDMだ。華友コバルトは、コンゴで生産されるコバルトの40%以上を買い取っている。
CDMがコバルトを調達する地域の鉱山労働者は、長期にわたる健康被害と鉱山事故の危険にさらされている。2014年9月から2015年12月までの16カ月で、少なくとも労働者80人がコンゴ南部の鉱山で死亡した。事故の多くは公表されず、遺体はがれきの下に埋もれたままであるため、正確な死者数は調べようもない。
また鉱山労働者の大多数は、手袋、作業着、フェイスマスクなど肺や皮膚を守るのに欠かせない装備もないまま、長時間の採掘労働を毎日強いられている。
子どもたちは重い荷物を担ぎ、1日12時間も働かされて、一日わずか1、2ドルしかもらえない。ユニセフの調べでは、南部の鉱山での児童労働の人数は、2014年で約4万人だった。その多くの鉱山が、コバルトを採掘していた。
サプライチェーンと会社の汚点
華友コバルトは、リチウムイオン電池部材メーカー3社にコバルトを供給している。2013年の3社の仕入額は、9,000万米ドル相当だった。
その後、アムネスティは3社が直接・間接の顧客だとしている多国籍企業16社に問い合わせを実施した。コバルトの原産地を調べるために、これまでに華友コバルトに照会するなどの対応をした企業は1社もなかった。
現在、世界のコバルトの取引を規制する法律や規定は皆無だ。米国の紛争鉱物規則は、コンゴ民主共和国で産出される金、タンタル、錫、タングステンに関する規則は定めているが、コバルトは規制外だ。
アムネスティとアフロウォッチは、製品にリチウムイオン電池を使用している多国籍企業に対し、人権の視点で必要な調査を実施し、児童労働や労働環境に問題ある状況でコバルトが採掘されていないかどうかを明らかにし、取引サプライヤーを公表するよう求めている。
また、中国政府に対して、海外で展開する中国系採取企業が自社のサプライチェーンを調べ、操業中に発生する人権侵害に対処することを義務付けるよう求めている。華友コバルトは、誰がコバルトを採掘し、どの業者が取引に関わっているのかを確認し、児童労働や危険な環境で採掘されたコバルトの取引を止めるようにしなければならない。
レポートを読む(英語/92ページ/PDF)
アムネスティ国際ニュース
2016年1月19日
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