イエメン:フーシ派による大々的な拘束・強制失踪・拷問

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. イエメン:フーシ派による大々的な拘束・強制失踪・拷問
2016年5月29日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イエメン
トピック:地域紛争

アムネスティ・インターナショナルは5月18日に公開した報告書で、イエメンの治安部隊の支援を受ける武装組織「フーシ派」が、同国の一部地域の対抗勢力を制圧する中で、反対派を多数逮捕したり、銃で脅して恣意的に拘束し、その一部を強制失踪させてきた事実を明らかにした。

報告書は、2014年12月から今年3月までに発生した恣意的拘束による拘禁や強制失踪など60件を詳細に検証している。標的にされたのは、反フーシ派、人権擁護活動家、ジャーナリスト、学者などだった。その多くは長期に外部との接触を絶たれて拘禁され、拷問などの虐待を受け、弁護士や家族との面会も許されなかった。

フーシ派の部隊は2014年以来、反フーシ派など批判者を過激なやり方で標的にしてきた。何百人もが一斉に捕えられ、起訴も裁判もないまま拘禁され、一部の者は行方が分からなくなっている。これは国際法に甚だしく違反する。

ほとんどの場合、捕えられた人たちはその理由を告げられなかった。一部の人は検事や裁判官の面前に出るまで17カ月も拘禁された。報告書が取り上げた人たちはいずれも審理がなく、拘禁の合法性について抗議する機会も与えられなかった。フーシ派の関係者が5月にアムネスティに語ったところによると、拘禁理由は「サウジアラビア連合軍にGPSの座標を教えたからだ」という。

アムネスティは、検察当局がこれらの根拠もない拘禁が発生していることを知り、釈放を命じていたという事実を掴んだ。しかし、事態は変わらなかった。

また、拘禁中に拷問を受けていたことが、拘禁されていた人たちや拘禁中の人の家族の証言であきらかになっている。

広汎な人びとが標的に

標的にされた人たちの大部分は、フーシ派の権力掌握に反対し、昨年4月、サウジアラビア主導連合への支持を表明した、スンニ派イスラム政党アル・イスラー党寄りの活動家、ジャーナリストなどの人たちである。しかし、被害者の中には政治的に中立で過去にも活動歴がなく、なぜ標的にされたのか分からない人たちもいる。そうした人たちの中にはジャーナリストが少なくとも11人いる。

ホデイダの教師のアデル・ハジルさんは、2014年12月からずっと拘禁されている。金曜日の晩の祈りの最中に友人たちとともに理由も告げられずに一斉に捕えられ、外部との接触を絶たれてきた。

妻のアルマさんは、「夫は幼い女の子と男の子の父親であり、ただの数学教師。時間があると孤児院でボランティアをするような人です。なぜ逮捕されたのでしょう」とアムネスティに話した。

人権省は、5月16日付けのアムネスティ宛て文書で、「恣意的逮捕、強制失踪および拷問についての非難は根も葉もないものであり、当局を批判して弾圧を受けた人はいない。なぜならイエメンと当局は表現の自由を固い信条としているからだ」と説明していた。

クウェートで行われているイエメンの和平交渉で、囚人と被拘禁者のための特別委員会が結成された。アムネスティは、交渉当事者や交渉を援助、支援している国際組織に、フーシ派の支配地域で恣意的に拘禁されている人やその家族の権利が優先されるよう要望している。

アムネスティ国際ニュース
2016年5月18日

関連ニュースリリース