イエメン:不当に長期拘禁され郷里や国を追われる市民

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2021年6月 7日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イエメン
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(C) Amnesty International
(C) Amnesty International

イエメンを事実上支配する反政府武装勢力フーシ派は、恣意的に拘束した囚人を政治的交渉の道具として使ってはならない。

イエメンでは長年、フーシ派が国際社会の支持する暫定政権との紛争を続けてきた。この間、フーシ派は、政権側の兵士だけでなく、フーシ派に批判的な非戦闘員も拘束してきた。

昨年10月、フーシ派は、国連と赤十字国際委員会の仲介による政権との囚人交換交渉で、1,056人の囚人を釈放した。そのほとんどが兵士だが、24人は正当な理由もなく囚われていた非戦闘員だ。その3カ月前には、宗教的少数者バハーイー教徒6人も釈放している。

これらの非戦闘員は、そもそも拘束されるべきではなかった人たちにもかかわらず、長期間拘禁され、暴力や虐待にさらされた上、政治的取引の道具として釈放され、バハーイー教徒は国外に、他の人たちは国内の政権派の地域に追放された。何年も違法に拘禁され、暴力を受け、ようやく釈放されても家族の元に帰ることすらできない。

アムネスティは、釈放された非戦闘員のうち12人(ジャーナリスト7人、公務員1人、バハーイー教徒4人)に話を聞いた。そのうち10人は、容疑を告げられるまで2、3年も拘束され、12人中9人は、裁判所の命令で半年前には釈放されるはずがされず、10月の政治的取引でようやく釈放されたという。

強制追放と強制移住

昨年7月に釈放された6人のバハーイー教徒は、法的根拠もなく長期間、人によっては7年間も投獄されていた。ようやく自由の身になったはずが、家族の元に帰ることは許されなかった。

バハーイー教徒たちは、サナア国際空港に連れて行かれ、エチオピアの首都アジスアベバ行きの便に無理矢理、搭乗させられた。強制追放だった。航空機は、国連が用意したことからすると、国連はこの強制追放を知っていたことになる。6人は今も、帰国することができない。

一方、昨年10月に釈放された非戦闘員のうち、アムネスティが接触した8人は、拘束施設から空港に直行し、政権が掌握するアデンとサユーン行きの便に乗せられた。

裁判所が釈放を命じた後も5カ月以上収監されていたジャーナリストは、アムネスティにこう語った。

「家族がいるサナアに留まりたかったが、それでは釈放されなかったため、当局の条件を受け入れざるを得なかった」

信仰や政治的立場による国外追放は、国際人権法違反も甚だしい。バハーイー教徒の追放は、強制退去を禁止する国際人道法に違反し、戦争犯罪にあたる可能性がある。

フーシ派当局は強制追放を停止しなければならない。すでに追放された人たちの帰宅を認めるべきだ。

拷問と非人道的な拘禁状況

聞き取りをした12人全員が、尋問中や拘禁中に拷問や虐待を受けたという。

フーシ派の民兵に鉄棒などで殴られたり、窮屈な体勢にさせられたり、「殺すぞ」「独房に入れるぞ」などと繰り返し脅されたりした。ジャーナリストの一人は、「フーシ派に批判的なジャーナリストや学生の名前を教えろ」と脅されて暴行を受け、2度失神したという。

別のジャーナリストは、死刑執行の疑似体験をさせられた。夜中に手錠と目隠しをされ、地面に掘った穴らしきところへ連れていかれると背後で銃声がなり、穴に蹴落とされた。「ここがお前の墓穴だ」と言われたという。

12人全員が、「食べ物や飲み物を求めると暴行を受けるのが常だった」と話した。

アムネスティの調査は、無実で囚われの身だった人たちが、強制失踪、非人道的な環境での拘束、拷問、医療措置の拒否、でっち上げの容疑に基づく不公正な裁判など、数々の人権侵害を受けていた実態を浮き彫りにしている。

フーシ派は、こうした卑劣で非人道的対応を直ちに停止し、平和的に人権を行使しただけで収監されている人たちを、即時無条件で釈放すべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2021年5月27日

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