ナイジェリア:不当な死刑関与疑惑で遺族がシェル社を告訴

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. ナイジェリア:不当な死刑関与疑惑で遺族がシェル社を告訴
2017年7月 6日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ナイジェリア
トピック:企業の社会的責任

ナイジェリアで1990年代に軍事政権下で死刑を執行された4人の遺族が、同国で操業する石油大手シェル社を告訴する。同社による環境汚染に抗議していた男性たちに対する逮捕、拘禁、そして死刑執行という一連の対応を巡り、シェル社が当局と共謀していたという疑いがある。

原告は、エスター・キオベルさんなど遺族4人だ。キオベルさんは、夫が処刑されて以降20年間、夫の死を巡りシェル社を追求してきた。環境汚染に抗議していた夫や、作家のケン・サロ=ウィワさんら男性9人(みな先住民族オゴニの人びとでオゴニ・ナインと呼ばれる)が、逮捕・拘禁され、1995年に絞首刑に処された。死刑執行時には、世界中で抗議の声が上がった。

キオベルさんがシェルを訴えるのは、夫が受けた違法な逮捕、拘禁、公正な裁判を受ける権利などの諸権利の侵害、また彼女自身の家庭生活に関する権利の侵害などにおける共犯だ。アムネスティは、キオベルさんの弁護団がオランダで告訴するにあたり、支援を提供した。さらに、今回、死刑執行に至る上で、シェル社がどんな役割を果たしたのか、調査し分析した報告書を発表した。

残虐な弾圧

サロ=ウィワさんは、オゴニ民族生存運動(MOSOP)を率いていた。MOSOPは、「自分たちの土地からくみ出された石油が、企業など一部の者に富をもたらした。一方で、石油流出と燃え続けるガスが、オゴニの環境をことごとく破壊し、この土地の生態系に壊滅的な被害をもたらした」と訴えていた。MOSOPの抗議活動を封じ込めるために、軍は拷問や強かんなど容赦ない行動に出た。その極め付けが、処刑であった。

シェル社にとっての最大の関心は、ビジネス・パートナーであるナイジェリア政府とともに、抗議行動を終息させることだった。一方、石油輸出が外貨収入のおよそ96パーセントを占める同国政府にとっては、シェル社は何ものにも代えがたい大事な企業だった。同社は1日におよそ100万バレルの原油を産出していた。これは、同国の日産石油量のほぼ半分にあたる。

目に余る不正行為

キオベルさんは、同じ境遇の3人遺族とともに、シェル社を相手取り民事訴訟を起こす。同社の不当な対応が引き起こした損害に対する賠償と公の謝罪を求める。

1994年5月、MOSOPの反対派として知られていた4人のオゴニ族首長が殺害された。当局は何の証拠も示さず、MOSOPによる犯行と断定し、サロ=ウィワさんら多数を逮捕した。裁判では、検察側から証人2人が立ったが、その2人は後に、被告に不利な証言をするよう当局から依頼され、金銭を受け取っていたことを認めた。

1995年10月、オゴニ・ナインの9人は、死刑判決を宣告された。翌月、絞首刑が執行され、遺体は墓標なき墓に埋葬された。

「エスター・キオベルさんは、20年以上、国からどんな仕打ちを受けるかもしれない中で暮らしてきた。しかし、その圧力に屈することはなかった。今回、彼女があげる声は、石油産業で暮らしを破壊されてきた多くの人びとの総意だ」と、彼女の弁護士は語った。

危険な関係

アムネスティが入手したシェルの内部資料によると、同社は、オゴニ・ナインの裁判が不公正であることを承知していた。さらに、ケン・サロ=ウィワさんがほぼ有罪になることも、前もって知らされていたことがわかった。

それほど、シェル社は政府と緊密な関係にあった。その上で、ケン・サロ=ウィワさんが同社への態度を軟化させることを条件に、支援を申し出た。

同社は1995年8月、ケン・サロ=ウィワさんの弟に、兄の釈放に向けて手助けすると申し出た。これに対してシェル社は、「人道的あるいは、医療的な支援を申し出ただけだ」と主張した。獄中の本人は、シェルの申し出を断った。

シェル側の言い分はありえない。本当にそんなことを言っているならば、企業の利己主義でしかない。

エスター・キオベルさんは、夫の死後、身の危険を覚えてベナン共和国に逃がれ、1998年に米国に難民として認められ、それ以来、米国で暮らしてきた。

シェルとナイジェリア政府の危ない関係に対し、今まで一度も調査のメスが入ったことはない。絞首刑にまで発展したオゴニ・ナインに対する国の苛烈な対応から20年近く経た今も、シェル社を巡るさまざまな問題は未解明のままである。

今こそ、隠された側面を明るみに出す時だ。失われた命を取り戻すことはできない。しかし、いかなる企業も、その規模と影響力を笠に着て、法の正義から逃げ通すことはできない。今こそ、声を上げる好機である。

アムネスティは、疑惑について直接シェルを質した。シェルのグローバル本部からは、極めてお粗末な、次の回答が届いた。
「貴殿が書簡で引き合いに出している(シェルに対する)疑惑は、間違っており、検討に値しない。(シェル・ナイジェリアは)、軍当局との共謀も地域の混乱の抑制にも関わっていないし、軍の暴力行為を促したり、支援したりしたことは、絶対にない。当社は、これらの疑惑をこれまでも最大限に強い言葉で否定してきた」

アムネスティ国際ニュース
2017年6月29日

関連ニュースリリース