モロッコ/西サハラ:難民らの強制的僻地移動は不当

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2018年9月20日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:モロッコ/西サハラ
トピック:難民と移民

モロッコ当局は7月末以降、サハラ以南からの移民、庇護希望者、難民ら数千人に対し、大規模な取り締まりを展開してきた。本来取るべき手続きも取らない、常軌を逸した対応である。国際基準に沿った難民・移住民政策を取るという2013年の約束を反故にするのではないかと懸念される。

モロッコ人権協会によると、7月以降、この摘発でおよそ5,000人が拘束され、バスに押し込まれ、遥か遠くの、アルジェリア国境に近い地域や南部の地域に連れて行かれて降ろされ、放置された。

当局は、このような難民らの権利を無視する行為を直ちに停止し、過去5年間、取り組んできた難民らの人権を尊重する政策を維持しなければならない。今後、国際法に沿った難民らの適切な手続と保護を定めた法律の制定が必要だ。

遠隔地への強引な移動

8月31日、警察や軍は、ジブラルタル海峡に面したタンジールにいた難民ら150人ほどを一斉に拘束し、南部の町までバスで運び、降ろして放置した。人権協会によると、スペイン領事館の前で、難民たちが、自由を求めて小さな抗議行動を始めたが、これがきっかけで拘束されたということだった。

当局は、彼らが、法的な身分をろくに確認もせず、移民、庇護希望者、難民を拘束し、指紋を取り、手錠をかけ、バスに押し込んだという。 彼らは、その後、アルジェリアの国境付近や南部の町で降ろされ、放置された。置き去りにされた人たちの多くは、数キロ歩いて最寄りの市街に行き、そこからバスなどを使って自宅に戻った模様だ。

国連難民高等弁務官事務所によると、最近、庇護希望者14人以上と難民4人が、モロッコ南部の土地に無理やり移動させられた。 特に目に余る例としては、1人の難民(女性)とその息子(1才)が拘束され、バスに乗せられ、200キロ先の土地まで連れて行かれて、放置されるということがあった。

幼い子どもや国連が認めた庇護希望者や難民、在留資格を持った移民が、このような過酷な扱いを受けているのは、看過できるものではない。

国には、外国人の出入国や滞在を管理する権利があるが、権利の行使は、国際人権法や難民条約など国際基準に沿っていることが、大前提である。

警察や軍は、モロッコの北端にあるスペインの飛び地領、セウタに通じる都市、タンジールやナドール周辺の非正規移民らが居住する地域で、家屋や所持品への放火や窃盗など、常軌を逸した行動に出た。

スペインとの共謀か

8月22日、モロッコにいた難民ら116人が、国境のフェンスを乗り越えてスペインの飛び地領であるセウタに入った。スペインは翌日、彼らをモロッコに送り返した。

入国した難民が、24時間にもならない短時間で、わずか12人の弁護士を相手に、難民申請などをする上で、十分な相談をし、必要な情報を得ることができたのか、甚だ疑わしい。さらに、弁護士は、難民らが24時間以内にモロッコに送り返されるということを知らされていなかった。当然ながら、その具体的な対抗策を考えることもできなかった。

当局は、「難民らが国境で係員に暴行するなど違法行為をしたため、措置は妥当だ」と主張した。しかし、いかなる場合でも、移民や難民の拙速な国外退去は許されず、スペインが、国際的な保護を求める人びとに十分な機会を提供する義務を蔑ろにしたことは、正当化できるものではない。

モロッコに追放された後、難民ら116人のうち17人は、非正規滞在・出国、武器の所持などで訴追された。 モロッコ当局は、カメルーンやギニアの難民らを強制送還させようと、関係国の領事関係者と協議を進めている。

彼らが、スペインやモロッコから強制送還されると、母国で深刻な人権侵害を受けるおそれがある。

スペインはよく、移民や難民の入国を阻止しているとして、モロッコを評価しているが、彼らの人権に配慮して共同行動を取ることはない。スペインとEUは、モロッコとの協力関係を見直し、国際法が求める人権の保護と難民受け入れ制度づくりを優先する取り組みをすべきだ。

背景情報

モロッコは、非正規移民の入国や人身売買を阻止する一環だとして、摘発を正当化している。政府の報道官は8月末の記者会見で、「強制送還ではなく、非正規移民をなくす取り組みと国内法に沿った、移民を一つの地域から別の地域に移す政策の一環だ」と説明した。また、「116人のスペインからの再入国を認めたのは、人身売買業者に対する強い警告だ」とした。

アムネスティ国際ニュース
2018年9月7日

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