日本:国連人権理事会 普遍的定期審査(UPR) 中国審査に向けての要請

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 公開書簡
  4. 日本:国連人権理事会 普遍的定期審査(UPR) 中国審査に向けての要請
2018年10月17日
[公開書簡]
国・地域:日本
トピック:

2018年10月17日

外務省 人権担当大使 岡村 善文 様
総合外交政策局人権人道課課長 杉浦 正俊 様

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 中川英明

国連人権理事会 普遍的定期審査(UPR) 中国審査に向けての要請

拝啓

時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

2018年11月に予定されている国連人権理事会による普遍的定期的審査(UPR)の中国審査に際し、アムネスティ・インターナショナルは中国政府に対し、以下の諸点を要請いたしております。

アムネスティ・インターナショナルから中国政府に対する要請

【「国家安全」法体系】

  • 反間諜法(反スパイ法)、国家安全法、反テロリズム法、外国NGO管理法、サイバーセキュリティ法、国家情報法、宗教事務条例を廃止、あるいは修正し、国家の安全を守るためのいかなる法制度も明確に厳格に定義され、国際人権法とその基準に準拠させること。
  • 表現や集会、宗教、信条、文化的生活の自由に関する権利を平和裏に行使する個人や集団の刑事訴追や迫害をやめること。

【人権擁護活動家】

  • 人権を擁護し、推進する人びとに対するいやがらせや恣意的拘禁、拷問や虐待、刑事訴追、投獄、強制的失踪を直ちにやめること。

【恣意的拘禁、拷問や虐待、不公正な裁判】

  • 刑事訴訟法の第33、34、37、73、83、91、117条を修正し、国際法とその基準に準拠し、公認の拘禁施設に収容される、逮捕後迅速に家族へ通知される、時機を得た弁護士への接見を許されるなどをはじめとする、被拘禁者の公正な裁判を受ける権利を保障すること。
  • 拷問や虐待を絶対的に禁止している国際法に中国の法律を準拠させること。

【ノン・ルフールマン(追放・送還禁止)】

  • ノン・ルフールマンの原則を遵守し、直接あるいは間接を問わず、いかなる個々人も迫害、拷問や虐待、殺害、その他の深刻な人権侵害の危険がある国へ強制的に送致することを止めること。
  • ノン・ルフールマンの原則に違反して個々人を中国に送還するよう他国に要請することをやめること。

【少数民族】

  • 少数民族の宗教や信条、意見、表現、平和裏の集会、結社、移動、文化的生活の自由を尊重し、保障し、チベット人、ウイグル人、その他の少数民族が平和裏に自らの人権を行使するのを迫害したり、訴追したりすることをやめること。

【死刑】

  • 国内法から死刑を完全廃止する観点から、直ちに処刑の停止を確立し、すべての現在ある死刑判決を減刑すること。
  • 死刑判決や死刑執行について、地域、性、民族、収入、その他の区分について十分に分類した、完全な国内統計を公表すること。

【ビジネスと人権】

  • 国際的義務基準に準拠したビジネスと人権に関する専門の国家行動計画を直ちに立案し、施行すること。
  • すべての中国企業が、活動場所のいかんに関わらず、すべての企業活動において人権を尊重することを必須要件とするよう、また、危険性が高い、あるいは紛争で被害の出ている地域で活動している企業が、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した、健全で透明性ある人権に関する適切な配慮を行使するよう、該当の法令を修正すること。
  • 国際的金融機関が出資しているものをはじめ、すべての外国開発援助プロジェクトの方針とその管理の中に強固な人権保護手段を確実に組み込むこと。

 

私たちは、日本政府とも協力して、中国の人権状況の改善に資するためのはたらきを続けていきたいと考えています。つきましては、日本政府に対し、以下の点を要請いたします。

  1. 日本政府におかれましては、私たちから中国政府に対して行っている上述勧告もご考慮の上で、UPR審査の場において、中国政府に対して適切な勧告を行ってください。
  2. 日本政府がこれまで、少数民族の人権に関して中国政府にはたらきかけてこられたことに対し、敬意を表します。今回のUPRでも引き続き少数民族の人権について、適切な勧告を行ってください。
  3. とりわけ新疆ウイグル自治区では、大規模・深刻な人権侵害があることが伝えられています。100万人にも上るウイグル人などが、自らの文化や宗教を守ろうとしたために「脱過激化(中文:去極端化)」の名目で再教育施設に強制収容されていると言われています。このようなことをやめるよう、中国政府に勧告してください。
  4. ウイグル人を含めイスラム系少数民族の再教育施設をめぐる状況は、在日ウイグル人などにも影響を及ぼしていると伝えられています。中には、中国大使館から旅券の有効期間更新が認められず、中国に帰国するよう促される人もいるとのことです。このような人の中には、帰国すると上述のような施設に収容されるおそれがあるなど、人権侵害を受ける可能性がある人がいるものと考えられます。そのような人を強制的に送還しないよう、ノン・ルフールマン原則に基づく適切な対応を、日本政府は取ってください。
  5. 日中人権対話は、2011年11月に行われた第7回以降これまでに実施されていないようですが、是非とも復活し、今後も継続させてください。

敬具

添付資料

▽ アムネスティ・インターナショナルがUPRに提出したレポート
「CHINA:HUMAN RIGHTS VIOLATIONS IN THE NAME OF "NATIONAL SECURITY"」