- 2019年8月 7日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:南アフリカ
- トピック:
南アフリカの教育には、アパルトヘイト(人種隔離政策)廃止から25年を経た今も、その負の遺産が立ちはだかる。貧困地域の学校の何万人もの生徒は、過密な教室やお粗末な設備・教材などの劣悪な環境下に置かれ、学習成果も得られない。そんな現実を変えようと、アムネスティ・インターナショナルは、#SignTheSmileキャンペーンを立ち上げた。
現政府がすべての子どもに良質の教育を保障すると公約しているにもかかわらず、現実には、多くの生徒が慢性的で深刻な不平等な扱いを受けている。
キャンペーンは、アパルトヘイトを築いたヘンドリック・フルウールト首相(当時)の笑みを浮かべる顔を掲げて、「署名をして真顔にしよう(sign the smile off Verwoerd’s face)」と人びとに呼びかける。そして、万人の生来の権利であり、憲法にも謳われた質の高い基礎教育を、すべての子どもたちに保障するよう政府に求める。
アパルトヘイト撤廃から四半世紀が経つが、貧困地域の学校には、当時の差別が色濃く残る。校舎は老朽化し、教師、設備、教材などの教育資源は不足し、学校が子どもたちの学びの場としての本来の機能を果たしていないのだ。フルウールトが残したアパルトヘイトの遺物との闘いは、まだ終わっていないのだ。
字が読め、簡単な算数ができさえすれば、貧困から抜け出し、未来を拓くチャンスとなる。
だが現状は、南アフリカでは10才の生徒の78パーセントは字が読めず、11才の61パーセントは初歩の算数ができない。18パーセントの生徒が、地面に穴を掘っただけの危険で不衛生な学校のトイレをいまだに使用しており、落ちて死亡する事故が後をたたない。毎年1年生に入学する約120万人の半数は、12年生になるまでに脱落する。大学の入学資格を得るのは、全体のわずか14パーセントにすぎない。
問題の根は、深く多岐に渡ることは承知しているが、アムネスティは、政府に意欲と政治的決意があれば、問題への対応は可能であることを強調したい。目標を定め、事実を直視し、難題を先延ばしせずに対策を取っていくのである。
政府は、子どもたちが適正な教育を受ける権利を享受できるよう、すべての公立学校に十分な教育資源を備える義務がある。また、2020年末までに、すべての学校の落とし便所を安全で清潔なトイレに変えるべきである。
昨年8月にアムネスティの新事務総長に就任したクミ・ナイドゥは南アフリカ出身で、ダーバンの学校に通っていた15才のときに、教育など諸権利の平等を求める運動を始めた。
ナイドゥは語る。「アムネスティのキャンペーンは、アパルトヘイトを生み出した男が、今を見れば笑みを浮かべるだろうということをまさしく指摘しています」と。しかし、私たちが力を合わせれば、フルウールトの遺物も彼の笑みも永久に消し去ることができる。
現在を理解するには、過去から学ぶことが大事だが、このキャンペーンの最終目標は、確実に未来に向けられている。
背景情報
7月28日から数週間、ヨハネスブルグ周辺で、ヘンドリック・フルウールトが微笑むポスターをあちこちで見ることができる。このキャンペーンでは、子どもたちにまっとうな教育を受けさせたいと願う市民に署名を呼びかけ、2021年までに教育環境の改善を国に求めている。
アムネスティ国際ニュース
2019年7月29日
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