南アフリカ:襲撃に怯えるジンバブエ移民ら

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2022年4月22日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:南アフリカ
トピック:難民と移民

4月上旬、南アフリカのヨハネスブルグ北部、ディープスルートで自警団による移民襲撃が繰り返され、ジンバブエ人1人が死亡した。当局は、自警団の暴力から移民を保護する対策を強化しなければならない。

数人の移民がアムネスティに語ったところでは、今、多発する犯罪や増加する失業が移民のせいにされており、移民を敵視する自警団にいつ襲われるかもしれない恐怖の中で生活しているという。

自警団は、「移民の排除は地域社会から犯罪をなくすため」と主張する。当局によれば、3つの自警団によって少なくとも7人が殺された。

シリル・ラマポーザ南アフリカ大統領は、移民、特にジンバブエ人が、自警団の襲撃対象になっているという認識を示している。実際、自警団による移民襲撃は、ディープスルートだけでなく、南アフリカ全体に広がりつつある。ここ数カ月、ヨハネスブルグのソウェトやヒルブロウでも移民を狙った極めて組織的な襲撃事件が起こっている。

襲撃が続いていることは、警察当局の無策と、襲撃に対する政府内の問題意識の欠如を浮き彫りにしている。いずれの事件も、未然に防止することはできたはずだ。

殺害

ヨハネスブルグで7人が殺害された複数の襲撃がきっかけに、反移民の自警団に対する抗議が始まった。

社会不安が広がる最中、ジンバブエの男性が、自警団から要求された身分証明書を見せることができなかったため、焼き殺された。この殺害をめぐり、犯人が逮捕されたかは明らかになっていない。

その後、ラマポーザ大統領は、相次ぐ襲撃事件の対応に警察力を増強すると約束し、また、外国籍の人たちへの暴力や脅しをやめるよう市民に呼びかけた。

「もはや安心して暮らせない」

ジンバブエやモザンビークから来た人たちは、アムネスティに「大変な恐怖の中で暮らしている」と話す。警察や自警団に、理由や権限もなく身分証明書の提示を要求され、日常的に身の危険を感じているという。

2人の子を持つ女性が、最近あった出来事をアムネスティに語った。女性は、10年ほど前にジンバブエを出てディープスルートに移住し、路上で野菜を売って生計を立ててきた。最近、子どもと一緒にいるときに襲撃を受け、自分の掘っ立て小屋にかろうじて逃げ込み、難を逃れた。「いつも恐怖と背中合わせで、どうしたらいいのかわからない。ここで暮らすのが怖い」と話す。

襲撃の被害者を含む移民の人たちは、昨年末に特別在留許可の期限が切れた後、大統領に「身の安全を保障し、ちゃんとした身分証明書を出してほしい」と訴えてきた。

またモザンビークからの移民は、「自警団に犯罪者扱いされるのが辛い。家族のために働いているだけ。祖国を出たのは、国内の状況が厳しかったから」と話す。

移民への襲撃が始まったのは2008年だが、その年だけで60人以上の移民が犠牲になった。以来、移民襲撃は毎年発生してきた。アムネスティは、南アフリカ政府に対し移民への暴力追放に向けた政策を立て、加害者が罪を問われない状況に終止符を打つことを繰り返し求めてきた。

今回、ラマポーザ大統領が、昨今の襲撃殺害事件を強く非難したことは評価したい。今こそ大統領は、自警団の暴力から移民を保護する具体的な対策を実行し、この憎むべき犯罪を起こした者が必ず法の裁きを受けるようにしなければならない。

背景情報

ジンバブエからの移民は、特別在留許可を発給された上で南アフリカに長年暮らし、働いてきた。だが、反移民感情の圧力に屈した政府は昨年末、在留許可の更新を突然取りやめたため、移民は不法滞在の状況に陥った。

移民排除で組織化する自警団は、#PutSouthAfricaFirst(南アフリカ人第一)などのハッシュタグを使い、ジンバブエや他の国から来た人たちで昨年末に特別在留許可の期限が切れた人たちを標的に襲撃してきた。その後、政府は方針を転換し、ビザ申請により在留資格を取得できるようにするため、今年末までの在留を認めた。とはいえ、正規の身分がないことに変わりなく、移民は襲撃を受けやすくなっている。

今年2月、ヨハネスブルグの南の町ソウェトと、ビジネスの中心地ヒルブローでも襲撃事件があったが、警察はその場にいたにもかかわらず、取るべき対応を取らなかった。

アムネスティ国際ニュース
2022年4月13日

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