- 2019年8月 8日
- [日本支部声明]
- 国・地域:日本
- トピック:国際人権法
国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2019』の企画として8月1日より開催されていた「表現の不自由展・その後」が、数々の政治的な圧力や匿名の脅迫行為などの攻撃によって中止に追い込まれた。アムネスティ・インターナショナル日本は、公人による発言や匿名の脅迫者による圧力によって市民の表現の自由が侵害されたことに深刻な懸念を表明する。
この企画展における展示に「慰安婦」問題や天皇制などを題材とした作品が含まれていることが明らかになると、それらの展示を問題視する発言がインターネット上に現れた。8月2日には、菅官房長官と柴山文科大臣が同展を問題視して、芸術祭に対する補助金支出の見直しに言及した。河村たかし名古屋市長は同展を視察した上で、展示中止を求める「抗議文」を愛知県知事に提出した。自民党の国会議員らも展示は政治的プロパガンダであるとの意見を表明した。あいちトリエンナーレ実行委員会事務局には、メールや電話で多数の抗議が寄せられ、中にはテロ予告や脅迫もあったとされる。こうした状況下で、実行委員長の大村秀章知事と津田大介芸術監督は、8月3日に同展の中止を発表した。
自由権規約(国際連合 市民的及び政治的権利に関する国際規約:日本は1979年に批准)第19条は、締約国に対して、表現の自由の権利を保障すべき法的義務を課しており、特に公人は、表現の自由を保障し尊重する法的義務を負っている。しかし、官房長官、大臣、国会議員、市長らの今回の言動は、この法的義務に違反して同展中止に政治的圧力をかけるものであり、同展企画者および出展者の表現の自由を侵害するものである。
国連自由権規約委員会の一般的意見34(2011年)は、「締約国は、表現の自由についての権利を行使する人々を封じることを目的とした攻撃に対し有効な措置を講じなければならない」と述べており、日本政府には、同展への攻撃に対して、関係者の安全を保障し、脅迫行為については捜査を行うなど、表現の自由を守るための具体的かつ有効な措置を取る責任がある。日本政府は、「表現の不自由展・その後」に向けられた脅迫や攻撃に対して、同展関係者および『あいちトリエンナーレ』全体の安全を保障し、表現の自由を守るために具体的な措置を講じるべきである。
「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれて以来、実行委員会メンバーや、同展参加者を含む『あいちトリエンナーレ』参加アーティストらから、同展の再開や安全の確保を求める声が上がっている。アムネスティ日本は、「表現の不自由展・その後」における表現の自由の侵害を助長した複数の公人の言動に強く抗議するとともに、日本政府に対して、同展が再開できる環境を早期に整えるために必要な具体的措置をただちに取り、表現の自由を守るための有効な措置を取る責任を果たすよう強く求める。
以上
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