レバノン:「不法滞在」で子どもたちも拘束 強制送還と家族分離の危機

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2019年9月 5日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:レバノン
トピック:難民と移民

レバノン公安総局は、スーダン·スリランカ人の1家族7人を拘束し、在留許可証不所持により、両親それぞれの母国に追放すると圧力をかけている。7人には子ども5人が含まれ、そのうち長男を除く4人が18才以下の未成年だ。

反人種差別運動(ARM)、アムネスティ·インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、レバノン人権センター(CLDH)は8月29日、共同で明らかにした。

公安総局は、送還が決定するまでは、家族を拘束してはならない。何らかの対応がやむを得ない場合でも、拘束以外の措置でなければならない。

家族は、スーダン出身の父(57才)、スリランカ出身の母(47才)、子ども5人のいずれも、在留資格を持っていない。子どもたちは、長男(18)、次男(16)、三男(13)、四男(11)、長女(5)で、レバノンで生まれ育ち、地元の役所が発行した出生証明書があるだけだ。

父親は、身内が内戦で死亡した後、兵役を免れるためにスーダンからレバノンに逃れた。一度、強制送還されスーダンで逮捕されたが、家族が賄賂を払って釈放され、1999年にレバノンに戻ってきたと話す。

元移住家事労働者だった母親は20年近く前、搾取的な雇用主から逃れてからレバノンでの在留資格を失ったという。

長男は2月に、両親と残る子ども4人は7月に、それぞれ拘束された。

「拘束されることで、子どもは、心身に重大な支障をきたすおそれがある。子どもを含め家族全員を即時解放すべきだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのラマ·ファキ中東支部事務局長代理は語った。

アムネスティは、四男、長女とともにカリタスレバノンが運営する施設に収容されている母親と面会した際、夫と息子3人は、公安総局の施設で拘束されていると聞かされた。当局はこれまでも、拘束した女性とその子どもをカリタスの施設に送りこんできた。

移民労働者を支援するARMは、公安総局が長年、移民労働の女性たちをカリタスの施設に送り込んできた実態を調査し公表してきた。

「当局は、これまでも人権を無視してきた。子どもの拘束は、トラウマになり、その後の成長を阻害するおそれがある。家族を引き離さないことが、すべてに優先されなければならない」とアムネスティのリン・マールフ中東地区調査部長は言う。

一方で、母親は、イスラム教に改宗し、イスラム教徒と結婚したため、スリランカに帰国すると、親族から報復を受けるおそれがあると話した。

両親はそれぞれ以前、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に難民申請をしたが、認められなかった。

父親は、当局から、家族全員が強制送還されるだろうと言われ、スーダンへの帰国に同意する旨の書類への署名を強要されたという。また、母親は、当局から、自身はスリランカへ、夫と子どもたちはスーダンへ、それぞれ送還されると通告された。

入国管理上の目的で子どもを拘束することは、単独でも家族一緒でも許されない。UNHCRは、「家族と一緒でも、短期間の拘束でさえ、深刻な負の影響を及ぼす」という見解を出している。また、国連の委員会は、子どもの健康や発達に及ぼす悪影響は看過できないとして、在留資格を理由にした自由の奪取を法律で禁止し、社会から全面的に排除することを求めている。

したがって、親との不和などで分離が子どもにとって最良であることが明らかでない限り、子どもを親から引き離してはならない。入国管理上、親の自由や移動の自由に制限する場合は、家族全員の拘束に代わる選択肢を提示し、親から引き離されず、同時に拘束もされないという子どもの権利を尊重する必要がある。

これらの人権義務を遵守するために、公安総局は、両親を拘束する具体的で切迫した理由がなければ、家族を解放すべきである。拘束の代替案としては、家族に、定期的に当局に報告する義務を課すなどがある。親を他国に送還して、子どもを分離するなどということもあってはならない。

「公安総局は、家族を解放すべきだ。家族が生涯、生き別れになりかねない国外送還という手段を決してとってはならない」とARMのファラ·サルカ事務局長は語った。

アムネスティ国際ニュース
2019年8月29日

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