日本:死刑執行に対する抗議声明

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2019年12月26日
[日本支部声明]
国・地域:日本
トピック:死刑廃止

アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、福岡拘置所の魏巍(ウェイウェイ)さんに死刑が執行されたことに対して強く抗議する。

森雅子法務大臣は、臨時記者会見で「死刑は人の生命を断つ極めて重大な刑罰で、その執行に際しては慎重な態度で臨む必要があるものと考えた」と述べた。また、10月31日の大臣就任会見では、死刑制度の存廃について「我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題でございまして、国民世論に十分に配慮しつつ、社会における正義の実現等の種々の観点から慎重に検討すべき問題であると考えております」と述べた。

しかし、国内法の内容が国際人権基準に反するものである場合に、その法制度を改正すべく努力することは、政府、法務大臣および法務省に課せられた義務である。成立の時点で国際人権基準に合致する国内法であっても、国際人権基準の進化に合わせた改正を行っていく必要がある。日本政府は、国連の総会決議や人権理事会の普遍的定期審査、そして複数の国連人権機関から、死刑の執行停止と死刑廃止に向けた取り組みを行うよう、繰り返し強く勧告されていることを忘れてはならない。特に、国連の自由権規約委員会は2008年、「世論の動向にかかわりなく、締約国は死刑の廃止を考慮すべき」とし、世論を口実として死刑廃止に向けた措置を一切とろうとしない日本の態度を強く批判している。

今年日本は国連人権理事会の理事国に再選された。しかし、今回の死刑執行は、日本が人権理事会の理事国として遵守すべき国際人権基準を無視したものであり、世界の7割以上の国が法律上あるいは事実上死刑を廃止しているという潮流に背を向け、日本をますます孤立させることになるものといわざるをえない。
日本政府は、国際人権諸条約の締約国として、死刑にたよらない刑事司法制度を構築する国際的な義務を負っていることをあらためて確認しなければならない。そして、日本政府は、生きる権利をはじめとする人権保障の大原則に立ち戻り、死刑の執行を停止し、死刑廃止に向けた全社会的な議論を速やかに開始すべきである。

再審請求中であった魏巍さんに対する今回の死刑執行は、自由権規約第6条に違反するものである。再審請求は、刑事訴訟法に定められた手続きであり、本来は再審請求中は刑の執行停止手続きをとるべきところ、それをしない実務は国際人権法にもとる。また、刑事訴訟法に定められた手続きを完了しないうちに、死刑を執行してしまうことは、公正な裁判原則に違反する行為である。国連自由権規約委員会の勧告に基づき、日本政府は再審あるいは恩赦の申請に執行停止効果を持たせたうえで、死刑事件における義務的かつ効果的な再審査の制度を確立すべきである。

人為的に生命を奪う制度は、どのような理由によっても正当化することはできない。アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対する。死刑は生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰である。アムネスティは日本政府に対し、死刑廃止に向けた第一歩を踏み出すために、死刑の執行停止措置の導入を速やかに法制化するよう要請する。

2019年12月26日
アムネスティ・インターナショナル日本

 

<「敬称」について>
死刑執行抗議声明における「敬称」について アムネスティ日本は、現在、ニュースリリースや公式声明などで使用する敬称を、原則として「さん」に統一しています。また、人権擁護団体として、人間はす べて平等であるという原則に基づいて活動しており、死刑確定者とその他の人々を差別しない、差別してはならない、という立場に立っています。そのため、死刑確定者や執行された人の敬称も原則として「さん」を使用しています。

なぜ、アムネスティは死刑に反対するのか?

死刑に関しては、さまざまな意見があります。その中でもとくに多いのが、「被害者の人権はどうなる」「死刑が廃止されては、『被害者や遺族の感情が納得いかない』」という意見です。そして、この問題が、死刑をめぐる一番難しい問題なのだと思います。

死刑に関するQ&A

死刑について、よくある質問をまとめました。

死刑をめぐる世界の状況(2019年4月10日更新)

アムネスティ・インターナショナルは2018年も、各国の死刑状況について世界規模の調査を行った。2018年の世界の死刑状況は、少数の国で後退する動きがあったが、総じて着実に前進している。