レバノン:新政権は治安部隊の手綱を締めよ

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2020年2月 4日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:レバノン
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(C) GettyImages
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レバノンで抗議デモが始まっておよそ100日たった1月18日と19日、治安部隊とデモ隊の間にかつてない激しい衝突があった。この2日間の衝突で、治安部隊はデモ隊に対し、放水砲、催涙ガス、警棒などに加え、ゴム弾を至近距離から違法に使用し、デモ参加者に多数の負傷を出した。また、多くの参加者が拘束され、少なくとも女性2人が、警官から強かんの脅しを受けた。

アムネスティは、医師や目撃者らに聞き取りをし、多数の画像や動画、国の声明文などを分析した。

治安部隊はこの2日間、これまで以上に過激な手段でデモ隊の排除に乗り出した。至近距離からのゴム弾の発射や上半身を狙った催涙弾の使用は、負傷を負わせる意図を伺わせた。

目撃者の証言とインターネット上の画像などから、デモ参加者の一部に暴力行為があったのは否定できない。しかし、当局が排除すべきは、その一部の暴力行為であり、デモ全体の強制排除を正当化することはできない。

今後、数週間にわたり抗議活動が続くと予想される中、21日に発足した新政権は、治安部隊の行動を厳しく監視し、抗議行動への違法かつ過剰な武力行使、性暴力を含む暴力・脅迫・不当な拘束などの申し立てを早急に捜査すべきである。

また、内務大臣は、治安部隊に対し、国際法に則った秩序ある治安維持活動を行うよう命じるとともに、集会の権利を尊重するべきである。

治安当局は、「デモ隊が治安部隊員に暴行し、公共施設などを破壊したため、デモ隊に対して武力を使った」として、暴力的な強制排除を正当化した。治安当局によると、18日にはデモ隊の暴力で142人の隊員が負傷した。

一方、レバノン赤十字社の発表では、18日に現場で手当てしたデモ参加者数は140人で、他に169人が病院に搬送された。翌日には、100人が負傷したという。

ゴム弾の違法な使用

アムネスティが検証した写真、映像、証言、医療記録によると、デモ参加者の多くは、胸部にゴム弾を受け、上半身、特に目、首、胸、上腕、腹部に負傷を負った。至近距離から狙い撃ちされたケースもあり、負傷させる狙いがあったとみられている。

武力行使に関する国際基準と指針によると、ゴム弾は、人への暴行を阻止するときにのみ使用できる。ゴム弾で重傷を負うおそれがあるためだ。さらに、被害を最小限にするため、原則として下半身を狙うこととされ、決して群衆の排除用に用いてはならないとされている。

至近距離からゴム弾を受けた男性が、アムネスティに語った。「4、5メートルの距離だった。当たった時は、何か巨大なものをぶつけられた感じで、息ができなかった。その後、殴り倒されて動けず、15分ほどずっと殴られていた」。アムネスティはその後、この男性の腹部から取り出されたゴム弾の写真を入手したが、弾の表面が傷んでいなかったことから、至近距離で当たったことがわかる。

負傷した別の男性は、ただ一列に並んで立っていただけで、ゴム弾を顔に打ち込まれた。口から顎にかけて大きな裂傷を負い、50針も縫ったという。

負傷者の治療にあたった外科医の話では、ゴム弾で頭部を負傷した患者が4人いたが、うち1人は失明した。

逮捕・殴打・罵り

デモ参加者を弁護する弁護士委員会によると、1月18日に少なくとも43人のデモ参加者が拘束されたが、翌朝までに全員が釈放された。デモ参加者は連行中、暴行、罵り、性的暴行などを受けた。

デモに参加した1人は、友人を連行する警官に拘束の理由を質すと、「お前も捕まえて、犯すぞ」と罵声を浴びた。

治安部隊幹部は、隊員による暴力を直ちに禁止するとともに、暴力を加えた本人と責任者を処罰し、被害者に補償しなければならない。速やかな捜査と処罰、補償がなければ、同様の暴力が今後も繰り返され、社会的混乱に拍車がかかるだけである。

国連人権高等弁務官事務所のマルタ・ウルタド報道官は1月21日、レバノンで頻発する衝突に懸念を表し、治安部隊が行なったとされる暴力行為について、公正で透明性ある捜査を早急に行うようレバノン当局に求めた。

アムネスティ国際ニュース
2020年1月23日

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