- 2020年5月 1日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ベトナム
- トピック:
(C) Getty Images
4月21日、ロイターは、ベトナム当局から圧力をかけられていたフェイスブックが、政府に批判的な投稿の検閲レベルを強化する方針を決めたと報じた。同社の現地サーバーに対し国営通信企業が使用制限などを科していたようで、しばらくフェイスブックが使えない状態が続いていた。
当局による表現の自由の抑圧はこれまでもあったことだが、今回のフェイスブックの決断で、同国の表現の自由が、さらに強力に制限されるきっかけになるおそれがある。
フェイスブックは、コンテンツの規制にあたっては、国際人権基準に基づかなければならず、法律を乱用し、恣意的に権利を制限する政府に従ってはならない。
同社は、検閲強化の決定をただちに取り消し、不当な投稿削除の要求を拒否しなければならない。
圧力に屈したフェイスブック
ベトナム当局は長年、オンライン上の表現の自由を奪うさまざまな規制措置を取ってきた。テクノロジー企業に対して個人情報の提供やユーザー投稿の検閲を義務付けるサイバーセキュリティ法も導入している。
フェイスブックの今回の決定は、政府批判の摘発を強化したい国の意向に足並みをそろえるものであり、フェイスブックは検閲に協力する企業だと考える国も出てくるだろう。
またこの決定は、極めて危険な先例でもある。他のハイテク企業が、抑圧的な政府の圧力に抵抗しづらくなる事態に追い込まれるだろう。
ソーシャルメディアは、ベトナムでの表現の自由に関して良い変化をもたらしてきた。この変化は、インターネットの利用者が積極的にソーシャルメディアを使って批判的な意見を書き込み、人権侵害の実態を暴いてきたからこそ、もたらされたものである。
ソーシャルメディアの投稿は、表現の自由に対する基本的権利であり、利益や市場参入のためではない。いかなる場合でも保護されなければならない。
アムネスティの調べでは、昨年、人権を平和的に行使しただけで投獄された人のうち、約1割が、フェイスブックの利用がらみだった。
取り締まりの強化
ベトナム当局は1月、死者まで出した土地騒動を封じ込めるために、ソーシャルメディアの書き込みにかつてないほど厳しい取り締まりを始めた。
新型コロナウイルス危機の感染拡大以来、取り締まりは強化されている。1月から3月半ばの間に、フェイスブックの投稿がもとで市民654人が警察から出頭を求められ「研修」を受けさせられた。その上、罰金を科されたり、投稿の削除を命じられたりした。
4月には、メディアコンテンツを恣意的に制限し、テクノロジー企業に検閲や監視措置を強制する新法が施行された。
また、フェイスブック上での国家批判、ウイルス対策での当局の悪口、パンデミック情報の拡散など、さまざまな書き込みで、各地で市民が逮捕・勾留が続いている。
アムネスティ国際ニュース
2020年4月22日
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